<八>
白石さんは僕の隣で嬉しそうにに歩いていた。
まるで弾むように、踊るように。
僕の隣で歩いていた。
電車に乗り、彼女がこの近くに住んでいたという駅に着いた。
「ひさしぶりだなー」
白石さんは懐かしそうに言った。
彼女がどんなことをしたのかはわかるわけがないけど、
楽しかったんだろうな。
「二宮君? どうしたの?」
白石さんの一言で僕は我に帰った。
「あ、いや、何でもないよ」
彼女は不思議そうな顔で僕を見ていた。
「もうすぐだよ! 早く早く!」
彼女は走って言った。
「え? なんで走るの?」
「わくわくするでしょ!」
僕もつられて走った。
遊園地に着いたとき、僕は唖然とした。
華やかな入り口。
ものすごい行列。
大きい乗り物の数々。
全てスケールが大きすぎた。
この巨大パノラマの真ん中に僕はいた。
「……すごい」
思わず口にした。
隣を見れば白石さんの目が輝いていた。
「早く行こ!」
彼女はそう言って人ごみに混ざった。
僕は彼女を追いかけた。
僕にとって遊園地とは何もかもが新しかった。
いや……新しすぎた。
入り口で並んでいる時に彼女から説明があったが、
1時間ぐらい並ぶのが当たり前?
そんなバカなことが……あるのか。
強引ではあるがそう思い込んだ。
正直ジェットコースターとか楽しみだった。
そのために1時間は少し長いとは思ったけど。
開演の時間5秒前。
4、3、2、1。
「ようこそ! 上丘遊園地へ!」
アナウンスの台詞と同時に列が動き出した。
「良い? 二宮君。入ったら私についてきてね」
「うん」
さっきの説明で入ったら走って目的地に行く。
目的地は一番大きいジェットコースター。
いつもは2時間並ぶ人気な乗り物だ。
僕には2時間も並びたい気持ちがわからないが……
彼女は40分ぐらい並ぶという計算がある。
個人的にその計算をいい面で覆したい。
僕たちは入り口をくぐると同時に走り出した。
中の景色はよく見られなかったが、
とにかく広いと思った。
地図では入り口のすぐそばに見えても、
この距離は地図には載ってなかった。
全速力でお互い走っていた。
この風……気持ちいい。
気づくと目的地が見えていた。
僕たちは最後尾に着くと、「待ち時間30分」の看板が見えた。
「あっ、思ったより早い!」
彼女は驚いていた。
その一方、僕は計算を覆せて嬉しかった。
待っている間は白石さんといろんなことを話していた。
僕が家で何をしているか、白石さんが家で何をしているか。
僕がトランプでピラミッドを作るのが好きなこと。
彼女が家でマリモを飼っていること。
笑ったり、冗談を言ったり。
30分なんてあっという間だった。
なるほど、30分なんて長くないな。
僕の人生初のジェットコースターはとても楽しかった。
あれほど楽しいものを何故今まで乗らなかったのだろう。
スピードの速さ、落ちる感覚。
全て楽しかった。
それに、
僕の隣では手を挙げて叫んでいる白石さんがいた。
叫び声はうるさかったが、どことなく可愛かった。
彼女も楽しめてるんだな。
そんなことを思いながら、笑っていた。




