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祈り  作者: 谷川陣
9/18

<八>

白石さんは僕の隣で嬉しそうにに歩いていた。

まるで弾むように、踊るように。

僕の隣で歩いていた。


電車に乗り、彼女がこの近くに住んでいたという駅に着いた。

「ひさしぶりだなー」

白石さんは懐かしそうに言った。

彼女がどんなことをしたのかはわかるわけがないけど、

楽しかったんだろうな。


「二宮君? どうしたの?」

白石さんの一言で僕は我に帰った。

「あ、いや、何でもないよ」

彼女は不思議そうな顔で僕を見ていた。

「もうすぐだよ! 早く早く!」

彼女は走って言った。

「え? なんで走るの?」

「わくわくするでしょ!」

僕もつられて走った。


遊園地に着いたとき、僕は唖然とした。

華やかな入り口。

ものすごい行列。

大きい乗り物の数々。

全てスケールが大きすぎた。

この巨大パノラマの真ん中に僕はいた。

「……すごい」

思わず口にした。

隣を見れば白石さんの目が輝いていた。

「早く行こ!」

彼女はそう言って人ごみに混ざった。

僕は彼女を追いかけた。


僕にとって遊園地とは何もかもが新しかった。

いや……新しすぎた。

入り口で並んでいる時に彼女から説明があったが、

1時間ぐらい並ぶのが当たり前?

そんなバカなことが……あるのか。

強引ではあるがそう思い込んだ。

正直ジェットコースターとか楽しみだった。

そのために1時間は少し長いとは思ったけど。


開演の時間5秒前。

4、3、2、1。

「ようこそ! 上丘遊園地へ!」

アナウンスの台詞と同時に列が動き出した。

「良い? 二宮君。入ったら私についてきてね」

「うん」

さっきの説明で入ったら走って目的地に行く。

目的地(ターゲット)は一番大きいジェットコースター。

いつもは2時間並ぶ人気な乗り物だ。

僕には2時間も並びたい気持ちがわからないが……


彼女は40分ぐらい並ぶという計算がある。

個人的にその計算をいい面で覆したい。

僕たちは入り口をくぐると同時に走り出した。


中の景色はよく見られなかったが、

とにかく広いと思った。

地図では入り口のすぐそばに見えても、

この距離は地図には載ってなかった。

全速力でお互い走っていた。

この風……気持ちいい。

気づくと目的地が見えていた。

僕たちは最後尾に着くと、「待ち時間30分」の看板が見えた。

「あっ、思ったより早い!」

彼女は驚いていた。

その一方、僕は計算を覆せて嬉しかった。


待っている間は白石さんといろんなことを話していた。

僕が家で何をしているか、白石さんが家で何をしているか。

僕がトランプでピラミッドを作るのが好きなこと。

彼女が家でマリモを飼っていること。

笑ったり、冗談を言ったり。

30分なんてあっという間だった。

なるほど、30分なんて長くないな。


僕の人生初のジェットコースターはとても楽しかった。

あれほど楽しいものを何故今まで乗らなかったのだろう。

スピードの速さ、落ちる感覚。

全て楽しかった。

それに、

僕の隣では手を挙げて叫んでいる白石さんがいた。

叫び声はうるさかったが、どことなく可愛かった。

彼女も楽しめてるんだな。

そんなことを思いながら、笑っていた。

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