<伍>
初めて知り合ってから1ヶ月。
僕と白石さんは学校でも道路でも話していた。
笑ったり、怒ったり、教わったり、教えたり。
向こうには他にも話す人がいたけど、僕にはいなかった。
だから彼女と話しているときは宝のように思えた。
こんな日がいつまでも続くのか。
いや、いつまでも続いてほしい。
僕はそう願っていた。
今思えば、良く孤独に耐えられたと思う。
人と話すのがこんなにも楽しいなんて思ってなかった。
僕はこの幸せをいつまで得られるのだろうか……
そういえば、歓迎会もうしちゃったんだよな……
あのときは欠席しか考えてなかったけど、
今思えば、行ってもよかったな。
楽しそうだったし。
とは言っても、友達と遊んだこと無いからな……
「…くん。…宮君!…二宮君!」
自分の名前を聞いてはっと我に返る。
そこは教室、窓から夕焼けが指していた。
教室はオレンジ色に染まっていた。
よく見ると僕の正面には白石さんがいた。
「二宮君。大丈夫?」
「う、うん。大丈夫」
「もー、急にぼーっとするんだからー」
「ごめんね」
「帰ろ?」
「うん」
帰り道。
いつも通り寂しい通り。
いつの間にか隣に白石さんがいることが当たり前になっていた。
僕は少し迷っていた。
今まで考えてなかったけど……ちょっと聞いてみようかな。
「あのさ」
「何?」
「この前歓迎会あったでしょ」
「あー、あったね」
「楽しかった?」
「うん。それがどうしたの?」
「あっ……いや…その……」
あーもう何やってるんだ。僕は。
「その……よかったら一緒に遊びに行かない?」
「えっ?」
「この前の歓迎会に行けなくてちょっと後悔してるんだ。
だからその代わりって言うか……なんというか……」
白石さんは驚いていた。
それはまぁそうだろうな。
いきなりだし、それに僕から切り出したから……
「まさか二宮君から言われるとは思ってなかったなー」
「え?」
今度は僕が驚く番。
それってどういう意味だ……?
「実を言うと私も二宮君と遊びに行きたいなって思ってたの。
二宮君、歓迎会の時にいなかったでしょ?」
予想外の展開だ。
「えっと……とても対応に困ってるんだけど。」
「とりあえず『はい!』と言えば問題ないと思うよ」
「あっそうなの?じゃあ……はい。」
交渉成立。
というよりも一方的。
まぁ良いか。
「えっと……じゃあ誰と行く?まさか二人な訳じゃ……」
「え?そういうつもりじゃなかったの?」
「え?」
あれ……なんでこんなに疑問が多いのだろうか……この会話……
「いや……歓迎会みたいに何人かと一緒に……」
「せっかくだから二人で行かない?」
唐突すぎた……
「私ちょうど遊園地のチケット2枚あって、それで二宮君に聞こうと思ってたの」
「えっと…そんな理由で良いの?」
「良いに決まってるじゃない」
彼女はいつものいたずら顔で笑った。
「…この場合も『はい。』で良いのかな?」
「良いと思うよ!」
彼女は親指をグッ立てた。
「じゃあ…いつにする?」
「いつなら暇?」
「特に忙しい日は無いよ」
そもそも忙しくなれない。
「じゃあ…来週の土曜日はどう?」
「空いてると思う」
「よし。じゃあその日にしよう!」
彼女はやけにテンションが高かった。
「二宮君って携帯持ってる?」
「あっ、うん」
「じゃあメアドとか教えてくれる?」
「あー、いいよ」
僕は携帯のメールアドレスを教えた。
「じゃあ時間とか場所とか送っておくね」
「うん」
気づくともう家の近くだ。
「じゃあ、また明日ね」
「うん。また明日!」
そういって別れた。
少し見送っていると彼女は楽しそうに帰って行くのが見えた。
友達と遊ぶ。
また新しい経験が待ってるな……




