<参>
家に帰って僕は疲れ果てていた。
今日は新しいことがありすぎた……
僕の許容範囲をもろ越していた。
人と話しながら帰るなんて自分にはあり得なかった。
ベットに横たわると白石さんを思い出した。
「これが友達ってものなのかな……」
案外いると楽しいな。
そう思っているといつの間にか夢の中にいた。
白石さんが川で溺れている。
僕は必死に手を伸ばそうとするが届かない。
そして白石さんがどんどんと沈んで行く。
だめ……ダメ……沈まないで!
そう叫ぶとはっと目をさました。
外はもう暗くなり始めていた。
居間では母さんが料理を作っているようだ。
「……昼寝なんて久しぶりだな。しかも悪夢って……」
少し不安を抱えながら僕は部屋を出た。
夕食を食べ終わり、部屋に戻った。
宿題を終わらせ、ちょうどいすの上で背伸びをした時、
「ブー、ブー、ブー」
と携帯のバイブレーションがなった。
僕にとって携帯がなるということはとても珍しい。
あり得るのはクラスの連絡網ぐらいだ。
携帯を開くとやはり連絡網だ。
クラスの連絡網は、会社を通して一斉送信できるようになってる。
世の中便利になったよね…
メールを見ると『白石さん転校記念メール」と書かれてる。
そこにはこう書かれていた。
白石さん、ようこそ私たちのクラスに!
とは言っても白石さんはこのメール見てないんですけどね。
せっかくなので白石さんの歓迎会を内緒で企画します!
することはまだ決まってないです。
白石さんさんが好きなことをできればと思ってます。
それで、今回参加してくれるかどうかメールしてください。お願いします。
メールはとりあえず今じゃなくても大丈夫です。
みんなで歓迎会盛り上げよう!
と言われてもね。
何をするか書いてくれるとまだ決めやすいんだけど……
まぁ、どちらにしても僕は行かないだろうけど。
友達もいないからそういうことに関わったことが無い。
それで平気だったし。
携帯を閉じ、やることも無くなりどうしようか悩んでいた。
「仕方ない。あれやるか」
僕はトランプを出した。
「あれ」とはいわゆる「トランプピラミッド」だ。
小2ぐらいから始め、この年になってもまだ飽きない。
要は暇つぶしだ。
こういうことをするのは好きだ。
自分の世界に入り込める。
さて……前回やったときは9段で失敗したから今回はそのリベンジ。
トランプを2枚バランスよく立たせ、それを2個作り、間にトランプを置く。
単純な作業だがこれが案外はまってしまう。
何にはまっているのだろうかとたまに思ったりするが……
今まで完成させた8段までの写真は携帯に収まっている。
今日こそ9段完成させてみせる。
そう考えていると1段目が完成した。
ここまでは簡単。
次からは慎重に置かないと橋が崩れることもある。
それに気を配りながらバランスよく立たせる。
2つ置いたら橋をかける。
これの繰り返し。
2段目が完成した。
よし、土台がキッチリしている。
作業を続け30分。
何度か崩れたりしたが、なんとか5段目までいった。
ここでもう一組のトランプを取り出す。
1組ではとても足りない。
もちろん同じ柄のトランプ。
そこは妥協しない。
そしてまた慎重に6段目にかかる。
かかること1時間。
最後のてっぺんのトランプをたてる。
「……よし」
9段完成
携帯に手をかける。
写真を撮らなきゃ。
と思ったそのとき
「ブー、ブー、ブー」
携帯がなった。
バイブレーションにびっくりした僕は後ろにのけぞった。
そして……
カシャクシャカシャッ
「あっ……」
思わず声が出てしまった。
そこにあったはずのピラミッドが、一瞬にして崩壊した。
「……また作り直せば良いか」
とはいっても今作り直したいとは思えない。
黙ってトランプを片付けて行く。
そういえば……
携帯を見てみると『Eメール一件』とある。
開くと、ファーストフード店のクーポンのお知らせ。
うわ……負けた。
僕は最後の最後にクーポンメールに負けた……
何たる失態。
「まぁ過ぎたことだし」
少し投げやりだがもう考えないようにした。
片付け終わり時間は10時。
ちょっと早いけど寝ようか。
そう思い風呂に入って早めに寝た。
こうしていろいろとありすぎた1日は終わった。




