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祈り  作者: 谷川陣
3/18

<弐>

白石さんは僕が思っていたよりしっかりしていた。

いや…しっかりしていないとは言わないけど。

彼女は勉強もでき、クラスとも早くも打ち解けていた。

こうして白石さんは1日で有名人になった。



ようやく学校が終わり、帰る用意をしていると白石さんに、

「一緒に帰らない?」

と言われた。

僕はとてつもなく動揺した。

実を言うと誰かと帰るということは初めてなのだ。

「あっ、うん」

女子の誘いを断るわけにもいかないので頷いた。



帰り道。

いつもと変わらないはずなのに……

僕の隣には一緒に帰ってる白石さんが……

握っている手には汗がたまっていた。

なんて情けない……

隣を見れば彼女は自然そのものだった。

少し声をかけてみるべきなのか……

そう悩んでいると彼女が話かけた。

「二宮君は家どこなの?」

「あっ……そんなに遠くないよ。白石さんは?」

「私もそんなに遠くないかな」

僕が住んでいる場所はとても質素なマンションだ。

親が安いし会社に近いからと決めたのだ。

なんて適当な……

「私、別の学校に行く予定だったんだけど、親の都合で転校しなきゃいけなくて…

 それが嫌だったから、自殺しようとしたの」

「そうだったんだ……」

「それまで仲良かった友達もいて、

 『一緒に同じ学校に上がろうね』って話たのに……

 だから転校がつらかったの」

そうか……

それが彼女の死のうと思った理由か……

「けど今はもう大丈夫。

 二宮君とも仲良くなったし」

「あ……うん。僕も嬉しい。友達がいなかったから」

「そうなの?」

そう……生まれてこの方そういうものがいない。

強いて言えば先生ぐらいだろうか…

「うん、だから誰かと帰るってことも初めてで……」

「嘘っ!そんなのいけないよ、二宮君!」

「いや、必要ないと思って」

「そんなことないって。よくそれで学校行ってたね」

「まぁ…義務教育だったし」

「それ子供が考える理由?」

白石さんは声を上げて笑った。

それは果たして褒め言葉だろうか……

「こういう時って『褒め言葉として受け取る』って言うのかな……」

「うはっ!ちょっと堅いよ、そんなまじめに受け取らなくて良いよ」

そんな無茶振りを……

「うーん、じゃあどうしたら良いのかな……」

「まぁ一緒にいればなんとかなるよ」

何を思ってそんなこと言ってるのかな。

まぁ案外楽しいから良いかな。


そう思っている間に、自分の家についた。

「あっ、ここだから」

「へー、ほんとに近いね」

「だから遅刻をしていないのが誇りなんだ」

「なんか微妙な誇りだね……」

「これでもちゃんと守ってるんだよ」

「まぁ遅刻しないことはいいことだし、良いんじゃない?」

「なんか誇りを馬鹿にされたような気がする……」

「そんな気はないよー」

得意のいたずら顔…

この人には敵わない……

「じゃあまた明日ね」

彼女は別れを告げた。

「うん。また明日」

そう言って家に入って行った。

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