<弐>
白石さんは僕が思っていたよりしっかりしていた。
いや…しっかりしていないとは言わないけど。
彼女は勉強もでき、クラスとも早くも打ち解けていた。
こうして白石さんは1日で有名人になった。
ようやく学校が終わり、帰る用意をしていると白石さんに、
「一緒に帰らない?」
と言われた。
僕はとてつもなく動揺した。
実を言うと誰かと帰るということは初めてなのだ。
「あっ、うん」
女子の誘いを断るわけにもいかないので頷いた。
帰り道。
いつもと変わらないはずなのに……
僕の隣には一緒に帰ってる白石さんが……
握っている手には汗がたまっていた。
なんて情けない……
隣を見れば彼女は自然そのものだった。
少し声をかけてみるべきなのか……
そう悩んでいると彼女が話かけた。
「二宮君は家どこなの?」
「あっ……そんなに遠くないよ。白石さんは?」
「私もそんなに遠くないかな」
僕が住んでいる場所はとても質素なマンションだ。
親が安いし会社に近いからと決めたのだ。
なんて適当な……
「私、別の学校に行く予定だったんだけど、親の都合で転校しなきゃいけなくて…
それが嫌だったから、自殺しようとしたの」
「そうだったんだ……」
「それまで仲良かった友達もいて、
『一緒に同じ学校に上がろうね』って話たのに……
だから転校がつらかったの」
そうか……
それが彼女の死のうと思った理由か……
「けど今はもう大丈夫。
二宮君とも仲良くなったし」
「あ……うん。僕も嬉しい。友達がいなかったから」
「そうなの?」
そう……生まれてこの方そういうものがいない。
強いて言えば先生ぐらいだろうか…
「うん、だから誰かと帰るってことも初めてで……」
「嘘っ!そんなのいけないよ、二宮君!」
「いや、必要ないと思って」
「そんなことないって。よくそれで学校行ってたね」
「まぁ…義務教育だったし」
「それ子供が考える理由?」
白石さんは声を上げて笑った。
それは果たして褒め言葉だろうか……
「こういう時って『褒め言葉として受け取る』って言うのかな……」
「うはっ!ちょっと堅いよ、そんなまじめに受け取らなくて良いよ」
そんな無茶振りを……
「うーん、じゃあどうしたら良いのかな……」
「まぁ一緒にいればなんとかなるよ」
何を思ってそんなこと言ってるのかな。
まぁ案外楽しいから良いかな。
そう思っている間に、自分の家についた。
「あっ、ここだから」
「へー、ほんとに近いね」
「だから遅刻をしていないのが誇りなんだ」
「なんか微妙な誇りだね……」
「これでもちゃんと守ってるんだよ」
「まぁ遅刻しないことはいいことだし、良いんじゃない?」
「なんか誇りを馬鹿にされたような気がする……」
「そんな気はないよー」
得意のいたずら顔…
この人には敵わない……
「じゃあまた明日ね」
彼女は別れを告げた。
「うん。また明日」
そう言って家に入って行った。




