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祈り  作者: 谷川陣
2/18

<壱>

僕は彼女の手に乗っていたタオルを受け取った。

「まさかこの後死のうとか思ってないよね?」

「あっ大丈夫です」

彼女はちょっと戸惑いながら答えた。

「実を言うと、今思えば私死にたくなかったと思います。

 その前にちょっと嫌なことがあって、勢いで死んじゃおうって……

 だからほんと助かってよかったと思っているんです」

彼女は少しはにかみながら僕に言った。

僕は今改めて彼女を助けてよかったと思う。

彼女を助けなかったら、今ここで笑えてなかった。

何も事情はわからないけど、彼女にもっと笑っててほしい。

「じゃあもう二度と死のうなんて考えちゃダメだよ」

「はい」

彼女はにっこり笑って答えた。

「じゃあまた機会があったら」

そろそろ時間がまずい……

「またすぐ会えますよ。二宮徹(にみやとおる)君」

「えっ……」

なんでこの子は僕の名前を……

しかもみんな「にのみや」って言うのに……

そんな疑問を抱きながら彼女と別れた。



ふぅ……学校には間に合った。

今まで遅れたことが無い記録を壊すわけにはいかない。

窓側の席に座り、窓の外を見る。

毎朝の日課だ。

チャイムが鳴り、先生が入ってきた。

学級委員が号令をかけ、先生が話し始めた。

「えー今日は転校生を紹介する」

先生の一言にクラスがざわめく。

「静かに!」

先生の太い声がクラスに響く。

それと同時にクラスが静かになる。

「じゃあ入ってきて」

と先生がドアに向かって声をかけた。


ガラガラッ


扉が開いた。

その瞬間、僕は目を疑った。


なるほど……そういうことか。


そこにいたのは彼女。

今朝タオルを渡された彼女だ。

これで僕の名前の事実と言った意味が繋がった。

そういえば……彼女名前なんなんだろう。

彼女は黒板にチョークで文字を書き始めた。

良くある光景だ。

白石暁(しろいしあき)です。これからよろしくお願いします」

彼女は軽い挨拶を終わらせた。

そして先生に空いてる席に座るよう言われ、一番後ろの席に座った。

「では、これで終わる」

学級委員が号令をかけ、先生が去った。

すると彼女が僕の席に歩いてきた。

「ね?会えたでしょ?」

彼女はいたずら顔で僕を見た。

「まさか同い年だったとは……」

「年上に見えた?」

「今思えばどっちだろ……」

正直年下に見えたとは言えなかった。

「そっか。これからもよろしくね、二宮君」

「よろしく、白石さん」

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