<壱>
僕は彼女の手に乗っていたタオルを受け取った。
「まさかこの後死のうとか思ってないよね?」
「あっ大丈夫です」
彼女はちょっと戸惑いながら答えた。
「実を言うと、今思えば私死にたくなかったと思います。
その前にちょっと嫌なことがあって、勢いで死んじゃおうって……
だからほんと助かってよかったと思っているんです」
彼女は少しはにかみながら僕に言った。
僕は今改めて彼女を助けてよかったと思う。
彼女を助けなかったら、今ここで笑えてなかった。
何も事情はわからないけど、彼女にもっと笑っててほしい。
「じゃあもう二度と死のうなんて考えちゃダメだよ」
「はい」
彼女はにっこり笑って答えた。
「じゃあまた機会があったら」
そろそろ時間がまずい……
「またすぐ会えますよ。二宮徹君」
「えっ……」
なんでこの子は僕の名前を……
しかもみんな「にのみや」って言うのに……
そんな疑問を抱きながら彼女と別れた。
ふぅ……学校には間に合った。
今まで遅れたことが無い記録を壊すわけにはいかない。
窓側の席に座り、窓の外を見る。
毎朝の日課だ。
チャイムが鳴り、先生が入ってきた。
学級委員が号令をかけ、先生が話し始めた。
「えー今日は転校生を紹介する」
先生の一言にクラスがざわめく。
「静かに!」
先生の太い声がクラスに響く。
それと同時にクラスが静かになる。
「じゃあ入ってきて」
と先生がドアに向かって声をかけた。
ガラガラッ
扉が開いた。
その瞬間、僕は目を疑った。
なるほど……そういうことか。
そこにいたのは彼女。
今朝タオルを渡された彼女だ。
これで僕の名前の事実と言った意味が繋がった。
そういえば……彼女名前なんなんだろう。
彼女は黒板にチョークで文字を書き始めた。
良くある光景だ。
「白石暁です。これからよろしくお願いします」
彼女は軽い挨拶を終わらせた。
そして先生に空いてる席に座るよう言われ、一番後ろの席に座った。
「では、これで終わる」
学級委員が号令をかけ、先生が去った。
すると彼女が僕の席に歩いてきた。
「ね?会えたでしょ?」
彼女はいたずら顔で僕を見た。
「まさか同い年だったとは……」
「年上に見えた?」
「今思えばどっちだろ……」
正直年下に見えたとは言えなかった。
「そっか。これからもよろしくね、二宮君」
「よろしく、白石さん」




