<拾六>
放課後。
いつも通りの帰り道。
隣には白石さんがいる。
春はあけぼの、と言われているが夕方も悪くないな
夕焼けが僕たちを赤と橙に染める。
「白石さん」
いつもなら白石さんが話かけるのだが、今日は僕から口を開いた。
「ん?」
「ちょっと公園よらない?」
「いいよ」
僕たちは近くの公園に入った。
公園で遊ぶ子供達の姿は無く、僕たちしかいなかった。
僕たちはベンチに腰掛けた。
遊具一つ一つが寂しそうに見えた。
「あ!ちゃんと宿題出せた?」
「あぁ、なんとか終わらしたよ。そこまで量も無かったし」
「嘘!結構時間かかるでしょ」
「そうでもなかったよ」
「えー頑張ったのに……」
少しすねた白石さんの顔を可愛いと思ってしまう。
「そういえば今日で1年なんだね」
「そうなの。意外でしょ?時間ってほんと早いよね〜」
「そうだね」
あの日から、一瞬だった。
光陰矢の如し……この言葉がぴったりだった。
「あの時とすごく変わったよね、二宮君」
「え?そう?」
「そうよ。最初会った……というか助けられた時は無表情でちょっと怖かったもん」
「あぁ、なるほど。でも白石さんも最初あった感じとは違うな」
「どういうこと?」
「今はすごく元気でしょ」
「それはあの時に元気が無かっただけだよ」
「あっ、そっか」
「いつもこんな感じだよ、私は」
彼女はこちらを向いて微笑んだ。
僕は目をそらしてしまった。
なんだか目を合わせるのが恥ずかしかった。
「僕は……白石さんと会ったからこうなったのかも」
「え?」
「白石さんと会うまで友達もいなかったし、笑うこともほとんど無かった」
「そうなの?」
「その上世界がほんとつまらなかった。何があるわけでもなく、ただ過ぎるこの世界が」
「……」
「いっそこの世界からいなくなった方が楽なのじゃないかって思うこともあった」
「二宮君……」
「僕もあの橋に飛び降りに行った。けど怖くてできなかった。
世界に退屈して、かといって死ぬこともできなかった。
そんなことを思ってた時に白石さんに会った」
「……」
「助けに行かなきゃとそのことしか考えてなかったら、いつの間にか飛び降りてた。
そこから僕はこんな人になったんだな」
話し終わって白石さんの方を向くと彼女は泣いていた。
「え?なんで泣いてるの?」
「だって……二宮く……んにそんな……ことがあったなんて……知らなかったから」
「もう昔の話だからさ、気にしなくても」
「でも……」
「それに、僕はこうして生きてるじゃん」
「……うん」
泣いている白石さんの顔を今度はちゃんと見た。
恥ずかしいなんて感情はもう無かった。
「僕は、世界がこんなに楽しいことを教えてくれた白石さんのことが好きです」
「え?」
白石さんは驚きを隠せなかった。
静かな公園。
そよ風が僕たちの横を通り過ぎる。
全神経が集中しきっていた。
少し戸惑って彼女は言った。
「……私も……二宮君のことが好きだよ」
そして、
僕にキスをした。




