<拾四>
僕は何もできなかった。
することが怖かった。
この気持ちがなんなのか、考えるのが辛かった。
これが恋と言うものなのだろうか……
彼女の無邪気な笑顔が僕は大好きだ。
ずっとその笑顔のままでいてほしい。
たとえ僕が辛くても、構わない。
「他人のため」なんて台詞は僕には似合わないけど……
白石さんと話すことが日常になってきた。
毎日のように話し、いつも一緒に帰った。
その時何を話したかなんて良く憶えてない。
けど、たくさん笑った。
僕も、彼女も。
日常ってこんなに楽しいんだな。
一度は失いたいと思ってたものが、こんなに心地いいものだったなんて……
「白石さん」
「何?」
帰り道。僕は思いきって聞いてみることにした。
「人を好きになることってどう言う感じ?」
「えっ、なんで?」
「あっいや、そのなんて言うか、皆わかるのかなーって」
「うーん、そうだね」
彼女は腕を組んだ。
「まぁ一言で言えば一言では言い表せない感覚ねー」
「また曖昧で絶妙な返答」
「だってそうとしか言いようが無いんだもん」
「一言では言い表せない感覚か……」
どんな感覚だろう。
「そんな考え込むことじゃないよ、自分に正直になるとすぐ見える」
「そうなのか……って白石さんは好きになったことがあるの?」
「えっ!?」
彼女は目を見開いた。
「ま……まぁあるよ」
「へー」
彼女は動揺を隠しきれずもぞもぞしていた。
一言では言い表せない感情……か。
どんなものかは僕にはわからないけど、
ただ、僕が関わりたくなかった感情なんだろうな……
「そういう二宮君は?」
「え? 僕?」
まさか聞き返してくるとは思わなかった。
「中学の時告白っていうものをされて……」
「え!? ほんと?」
「うん、けど僕にはわからなかったからその場を去ったんだけど」
「嘘!? それは可哀想だよ」
「だってほんとにわからなかったから……」
「それは徐々にわかっていけば良いんだよ」
「けど……」
けど怖かった。
いきなりすぎた。僕には。
何も知らない僕には大きすぎて、いきなりすぎた。
そんな感情、いらなかった。
「けど?」
「僕には……やっぱり向いてない、そんな感情……」
そういい終わる前に言葉を遮られた。
彼女は僕に抱きついた。
彼女の鼓動が僕の体に伝わった。
帰り道。
オレンジ色の夕日が沈みそうな頃。
デジャヴを感じた。
いや、ほんとはあったんだ。
「今どんな気持ち?」
「え?」
「飾る必要は無いよ。ただありのままの感情を言って」
「……暖かい。それにドキドキというかバクバクというか……」
「心地いいでしょ」
「うん」
「それがね、一言では言い表せない感情なの」
その一言だった。
その一言が引き金だった。
そして気づいた。
そっか……
僕は……
僕は彼女が好きなんだ。
毎日考えちゃうのもそのせいなんだ。
「……ありがとう」
僕は彼女の体に手をまわした。




