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祈り  作者: 谷川陣
15/18

<拾四>

僕は何もできなかった。

することが怖かった。

この気持ちがなんなのか、考えるのが辛かった。

これが恋と言うものなのだろうか……

彼女の無邪気な笑顔が僕は大好きだ。

ずっとその笑顔のままでいてほしい。

たとえ僕が辛くても、構わない。

「他人のため」なんて台詞は僕には似合わないけど……


白石さんと話すことが日常になってきた。

毎日のように話し、いつも一緒に帰った。

その時何を話したかなんて良く憶えてない。

けど、たくさん笑った。

僕も、彼女も。

日常ってこんなに楽しいんだな。

一度は失いたいと思ってたものが、こんなに心地いいものだったなんて……


「白石さん」

「何?」

帰り道。僕は思いきって聞いてみることにした。

「人を好きになることってどう言う感じ?」

「えっ、なんで?」

「あっいや、そのなんて言うか、皆わかるのかなーって」

「うーん、そうだね」

彼女は腕を組んだ。

「まぁ一言で言えば一言では言い表せない感覚ねー」

「また曖昧で絶妙な返答」

「だってそうとしか言いようが無いんだもん」

「一言では言い表せない感覚か……」

どんな感覚だろう。

「そんな考え込むことじゃないよ、自分に正直になるとすぐ見える」

「そうなのか……って白石さんは好きになったことがあるの?」

「えっ!?」

彼女は目を見開いた。

「ま……まぁあるよ」

「へー」

彼女は動揺を隠しきれずもぞもぞしていた。


一言では言い表せない感情……か。

どんなものかは僕にはわからないけど、

ただ、僕が関わりたくなかった感情なんだろうな……

「そういう二宮君は?」

「え? 僕?」

まさか聞き返してくるとは思わなかった。

「中学の時告白っていうものをされて……」

「え!? ほんと?」

「うん、けど僕にはわからなかったからその場を去ったんだけど」

「嘘!? それは可哀想だよ」

「だってほんとにわからなかったから……」

「それは徐々にわかっていけば良いんだよ」

「けど……」

けど怖かった。

いきなりすぎた。僕には。

何も知らない僕には大きすぎて、いきなりすぎた。

そんな感情、いらなかった。

「けど?」

「僕には……やっぱり向いてない、そんな感情……」

そういい終わる前に言葉を遮られた。

彼女は僕に抱きついた。

彼女の鼓動が僕の体に伝わった。


帰り道。

オレンジ色の夕日が沈みそうな頃。

デジャヴを感じた。

いや、ほんとはあったんだ。

「今どんな気持ち?」

「え?」

「飾る必要は無いよ。ただありのままの感情を言って」

「……暖かい。それにドキドキというかバクバクというか……」

「心地いいでしょ」

「うん」

「それがね、一言では言い表せない感情なの」

その一言だった。

その一言が引き金だった。

そして気づいた。

そっか……

僕は……

僕は彼女が好きなんだ。

毎日考えちゃうのもそのせいなんだ。

「……ありがとう」

僕は彼女の体に手をまわした。

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