<拾弐>
観覧車を出た時、お互いの行動の本当の意味を知った。
そして顔もあわせられなかった。
けど、お互いの顔を見た時、僕たちは笑った。
何故だかはよくわからない。
けど、無性に面白くなった。
「ありがとう」
彼女が唐突に言った。
「え?」
「私いつも二宮君に守られてばっかだね」
「そんなこと無いよ。僕だって白石さんにいろいろしてもらってるし」
彼女に出会えてなかったら、一生つまらない人生を歩んでた。
死ぬことにも疲れた僕に残された最後の希望。
「そろそろ帰ろうか」
彼女が言った。
「うん」
僕もそれに答えた。
5時。
夕焼けの色が最骨頂に達していた。
電車に揺られながら僕たちは話していた。
「今日は楽しかったね!」
「うん。あんなに楽しいとは思ってなかった」
「でもまさか二宮君があんなに大胆だったなんて」
「そ、そういうわけじゃないよ」
「じゃあどういう意味?」
彼女は僕の顔を覗き込んだ。
「えっ? あの、その……」
「冗談よ。けど嬉しかった」
「え?」
「すごく暖かかった。なにもかも受け入れてくれる、そんな気がした」
「えっと……それ褒め言葉?」
「当たり前じゃない」
彼女は照れくさそうに言った。
「あまり言わせないでよ。照れくさいじゃない」
「あっ、ごめん」
「なんで謝るのよ」
彼女は笑いながら言った。
そう言っていると駅に到着した。
見慣れた光景。
今までのは幻かと思うほど現実に落ちた。
ただ、決して幻ではなかった。
隣には白石さんがいる。
疲れたのか、それほど元気がない。
「大丈夫? 元気なさそうだけど」
「あ、うん。大丈夫」
彼女は笑顔で答えた。
「そう……」
少し不安だった。
彼女が何か我慢しているようで……
空を見上げると一番星が見えた。
どこまでも遠い場所にあるものなのに見えている。
手が届くわけ無いのに……
「二宮君どうしたの?」
「いや、星がきれいだなって」
そう言われた白石さんは上を見上げた。
「あっ、ほんとだ。きれい……」
「そうだね」
手が届くわけない。
けどそれで良い。
あることさえわかれば……
「ねー二宮君」
「あっ、何?」
唐突に呼ばれたので少し驚いた。
「えーっと、そのー、女の子が夜道歩くなんて危険じゃない?」
「え? う、うん。そうだね」
「危険だからさ……」
「危険だから?」
「もー、言わなきゃわかんないの? 二宮君」
白石さんはじれったそうに聞いた。
「えーと……ごめん。わからない」
「もー、なんで全部言わなきゃわかんないかなー察してよ」
「あっ、ごめん」
彼女の顔が赤く染まっていった。
「その……家まで送ってくれない?」
「へ?」
「ね? 良いでしょ?」
「あ、うん。良いけどさ……」
「良いけど?」
「……それが言いたかったの?」
「うん」
「それぐらい言えば良いのに」
「言うのが恥ずかしいのよ……」
彼女は声を大きくして言った。
「普通察してくれるのが常識よ」
「そうなの? ごめん」
「これからは憶えててね」
「うん」
少しの間沈黙が続いた。
場所も知っているわけではない。
だからただ彼女に着いて行くだけだ。
「ここ」
彼女が沈黙を破った。
そこは見るからに2階建ての一軒家だった。
庭には木々が生えていた。
僕の家からもそう遠くない場所だった。
「じゃあ、今日はありがとうね」
「こっちこそ、楽しかったよ」
「ばいばい」
彼女が手を振った。
「ばいばい」
僕も繰り返して手を振った。




