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祈り  作者: 谷川陣
13/18

<拾弐>

観覧車を出た時、お互いの行動の本当の意味を知った。

そして顔もあわせられなかった。

けど、お互いの顔を見た時、僕たちは笑った。

何故だかはよくわからない。

けど、無性に面白くなった。

「ありがとう」

彼女が唐突に言った。

「え?」

「私いつも二宮君に守られてばっかだね」

「そんなこと無いよ。僕だって白石さんにいろいろしてもらってるし」

彼女に出会えてなかったら、一生つまらない人生を歩んでた。

死ぬことにも疲れた僕に残された最後の希望。

「そろそろ帰ろうか」

彼女が言った。

「うん」

僕もそれに答えた。


5時。

夕焼けの色が最骨頂に達していた。

電車に揺られながら僕たちは話していた。

「今日は楽しかったね!」

「うん。あんなに楽しいとは思ってなかった」

「でもまさか二宮君があんなに大胆だったなんて」

「そ、そういうわけじゃないよ」

「じゃあどういう意味?」

彼女は僕の顔を覗き込んだ。

「えっ? あの、その……」

「冗談よ。けど嬉しかった」

「え?」

「すごく暖かかった。なにもかも受け入れてくれる、そんな気がした」

「えっと……それ褒め言葉?」

「当たり前じゃない」

彼女は照れくさそうに言った。

「あまり言わせないでよ。照れくさいじゃない」

「あっ、ごめん」

「なんで謝るのよ」

彼女は笑いながら言った。

そう言っていると駅に到着した。


見慣れた光景。

今までのは幻かと思うほど現実に落ちた。

ただ、決して幻ではなかった。

隣には白石さんがいる。

疲れたのか、それほど元気がない。

「大丈夫? 元気なさそうだけど」

「あ、うん。大丈夫」

彼女は笑顔で答えた。

「そう……」

少し不安だった。

彼女が何か我慢しているようで……

空を見上げると一番星が見えた。

どこまでも遠い場所にあるものなのに見えている。

手が届くわけ無いのに……

「二宮君どうしたの?」

「いや、星がきれいだなって」

そう言われた白石さんは上を見上げた。

「あっ、ほんとだ。きれい……」

「そうだね」

手が届くわけない。

けどそれで良い。

あることさえわかれば……


「ねー二宮君」

「あっ、何?」

唐突に呼ばれたので少し驚いた。

「えーっと、そのー、女の子が夜道歩くなんて危険じゃない?」

「え? う、うん。そうだね」

「危険だからさ……」

「危険だから?」

「もー、言わなきゃわかんないの? 二宮君」

白石さんはじれったそうに聞いた。

「えーと……ごめん。わからない」

「もー、なんで全部言わなきゃわかんないかなー察してよ」

「あっ、ごめん」

彼女の顔が赤く染まっていった。

「その……家まで送ってくれない?」

「へ?」

「ね? 良いでしょ?」

「あ、うん。良いけどさ……」

「良いけど?」

「……それが言いたかったの?」

「うん」

「それぐらい言えば良いのに」

「言うのが恥ずかしいのよ……」

彼女は声を大きくして言った。

「普通察してくれるのが常識よ」

「そうなの? ごめん」

「これからは憶えててね」

「うん」


少しの間沈黙が続いた。

場所も知っているわけではない。

だからただ彼女に着いて行くだけだ。

「ここ」

彼女が沈黙を破った。

そこは見るからに2階建ての一軒家だった。

庭には木々が生えていた。

僕の家からもそう遠くない場所だった。

「じゃあ、今日はありがとうね」

「こっちこそ、楽しかったよ」

「ばいばい」

彼女が手を振った。

「ばいばい」

僕も繰り返して手を振った。

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