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祈り  作者: 谷川陣
12/18

<拾壱>

空がだんだんとオレンジ色に染まってきた。

もうすぐ4時だった。

「じゃあ最後のお楽しみに行きますか!」

そう言って白石さんは走り出した。

僕もこのペースに慣れてきた。

慣れって怖いな……

僕も後を追った。


着いたのは、

観覧車。

一周20分というとてつも長く、でかい観覧車だ。

「最後の楽しみって、これ?」

僕はおそるおそる聞いてみた。

「うん!」

彼女の顔が輝いていた。

この顔には逆らえない。

いつものことだが。

「じゃあ行こうか」

僕たちは観覧車に乗った。


実を言うと高い所が好きなわけではない。

ましてや自ら進んで行こうなど思ってもいなかった。

しかもこの密室の状態で天高く上がって行くわけだ。

想像もできなかった。

沈黙。

やはり最初はこうなってしまう。

白石さんが口を開いた。

「二宮君は高い所好き?」

「好んでは行かないかな……」

「そうだったの? それなら早く言ってくれれば良いのに」

いや、断る勇気がなかっただけです。

「まぁ乗っちゃったし仕方ないね」

「うん」

そう、仕方ないのです。

彼女は少し寂しそうな顔をした。

「この観覧車ね、友達との思い出の場所なの。」

「そうなんだ」

「うん。今日と同じ感じで遊んで最後に観覧車に乗って、

 そこで転校することを打ち明けて、泣いちゃった。」

「……」

何も言えなかった。

なんて声をかければ良いかわからなかった。

彼女は続けた。

「けど友達はずっと私を励ましてくれた。

 『頑張ってね』って。

 だからこうやっていられるのかもしれない」

「それで良いんじゃない?」

「え?」

「過去を悲しむよりさ、今を見ている方が良いと思うよ。

 そっちの方が白石さんらしいしさ」

「そ、そうかな」

彼女は照れくさそうに笑った。


「あっ」

彼女が外を見た。

「ねぇ、外見てよ。すごくきれいだよ!」

気が進まなかったけどせかされたので見てみた。

オレンジ色の夕焼け。

太陽に反射する町の硝子。

点としか見えない人が歩いている様子。

それは質素で、でもどこか繊細だった。

「……きれい」

僕はぽつりと言った。

彼女の方を見てみる。

瞳が太陽の光を浴び、輝いている。

頬が夕焼けと同じ色をしていた。

そして、

瞳から一粒涙が流れた。

キラッと光ったと思うと一筋の線となった。

彼女の涙に全てが詰まっていた。

昔の想い出、友達、感情。

それらが彼女の涙を作っていた。

僕は何をすればわからなかった。

ひたすら彼女の涙を見ることしかできない。

そんなの嫌だ。

衝動だった。

僕はいつの間にか彼女を抱いていた。

何も考えていなかった。

刹那の時間。

人のぬくもり。

「二……宮君?」

僕は我に返った。

なんか暖かい。

「あっ!ごめん!」

僕は急いで手を離した。

「泣いてるから、つい」

そう言い終わる前に彼女が僕を抱いた。

「うわぁぁぁああああん」

彼女は糸が切れたように号泣した。

僕は彼女の体にそっと手を回した。


刹那が永遠に感じた。

そうなって欲しいとを願った。

こうやって、彼女を近くに感じていたかった。

彼女を守りたかった。

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