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序章
雨が激しく打ち付けていた。
僕はたった今大切な人を無くしてしまった。
いや、自ら手離したのかな。
でも、後悔はしていないんだ。
これは失恋なのか。
いや違う、恋なんかじゃない。
もっと大切な大事な存在だった。
後悔なんてしていない。
だけど何でだろう。
目から涙が溢れてくる。
これは雨なのかな。
傘をさしているのに何で雨が…
あれ、おかしいな。
勝手に体が痙攣したかのように震えだした。
嗚咽の様に何度も何度も。
立っていられなくなって座り込んだ。
両手を水たまりのある地面に着くと傘が遠くに飛んで行った。
駄目だ。
全然涙が止まらないや。
雨なんかじゃない。
涙だ。
僕はもしかしたら別れたくなかったのかもしれない。
大切な人が消えていなくなるその瞬間まで一緒にいたかったのかもしれない。
僕は逃げてしまったんだ。