005 誰かが君を――
本日二話更新です(2/2)
次回の更新は日曜日の予定です。
(うあー……マジで怖かった……ッ!!)
身体が勝手に動くような感覚で戦えたから良かったものの、考えてみれば本当の戦いというのは始めてなのだ。
ゲーマリオンの撮影はもとより、色んな映画や舞台で殺陣を演じたことはあっても、殺陣はあくまで殺陣でしかないのだから。
やはり殺陣と実戦では、迫力も恐怖も大違いだ。
今になって震えてきてしまいそうなほどである。
「クロトッ!」
「サリー? ケガは平気なの?」
「うんッ、ポーション飲んだし、あっちの人が治癒術かけてくれたしね」
「治癒術なんて……本当にファンタジーな世界なんだな、ここ」
「え?」
「なんでもない」
思わず漏れた言葉に、黒斗は首を横に振る。
「何であれ無事で良かったよ」
「そういうクロトは? えっと、全然攻撃が当たってなかったから無事だとは思うんだけど……」
「うん、大丈夫。正直、このチカラで本格的な戦闘をする初めてだったから……ちょっと心臓バクバク言ってるけど」
本当はバクバクどころではないほどなのだが、あまり心配かけないようにそう告げる。
すると、冒険者カップルたちが苦笑した。
「あれだけ動けて本格的な戦闘が初めてってどういうコトだよ?」
「そうね。随分馴れた動きのように見えたけれど」
三人が興味深そうな顔をしているのを見、黒斗は後ろ頭を掻く。
「演劇とか舞台とかお芝居とか……そういうの分かるかな?
俺、地元では英雄譚みたいな物語の、主人公の師匠みたいな役を演じててさ。
敵役相手に剣舞のようなコトもやってるから、練習は結構してたんだけど……」
「じゃあこれだけのチカラを持ってて、お芝居にしか使ったコトがないの?」
「うん、まぁ……」
サリーの問いを肯定すると、三人はなんともいえない微妙な表情を浮かべた。
実戦経験がないと言ったのだから、当然と言えば当然かもしれない。
三人の表情に黒斗も困った顔で返す。
しばらく困った顔の黒斗を見つめていたサリーだったが、ややしてニッコリと笑った。
「クロトの護衛、やっぱ必要っぽいかな」
「まぁ、そうだね。お願いできるかな?
変身しないと戦えないし……何度も変身できるもんでもないしなぁ……」
変身してみて分かったことだが、かなり疲れる。
もちろん、命のやりとりをしていた緊張感があったというのもあるだろうが。
RPGのようにモンスターとエンカウントするとして、戦闘発生のたびに変身いていたら、身体が持ちそうにない。
それにウィルサーク現象によって、怪人と化したグランオークまでいた。
今後もウィルサーカーとの戦闘もあることだろう。無駄に変身しすぎて、肝心のウィルサーカーと戦う時に疲れて変身できないとかだと泣くに泣けない。
「わかった。じゃあ、まずは街までかな」
「改めてよろしく頼むよ、サリー」
「うんッ!」
笑顔でうなずくサリーに思わず見惚れそうになっていると、横から冒険者の二人も声を掛けてくる。
「オレたちも街へ戻るところだし、付き合うぜ」
「そうね。サリーさんも、本調子じゃないかもしれないし。
巻き込んじゃった責任を取る意味でもね」
「えへへ。二人ともありがと! よろしく!」
素直に礼を告げるサリー。
それを見て、黒斗も二人に頭を下げる。
「変身しないと完全な足手まといなんですけど……よろしく」
★
拝啓、ファンのみなさまへ……
こうして、私の異世界での生活がはじまりました。
この世界で暮らす為に必要なことを覚えながら、帰る方法を探していきます。
いつ地球に帰れるか分かりませんが、帰れるまではこちらの世界でがんばって生きたいです。
応援、よろしくお願いします。
次回は日曜日更新予定です。
<NEXT Level――
「ここが……冒険者になる為のギルド……」
「そ。流旅行者互助協会って言うんだよ」
「今のクラスをそのまま、そのカプセルの力も得られるのです……」
「俺の知らないユーザリオン、か……」
「あなたは……?」
「俺には……護る力がある……ッ!!」
「クロトッ!!」
――迷子の迷子の特撮ヒーロー『Lv2:Black knight! もう一人のリオン』>
次の対戦相手は、君だ!
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