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002 君は戦う人となれ

本日2話目です。



 ――はぐれオーク。


 オークというのは黒斗の知識にある通りのものと大差はないようだ。

 豚や猪がベースとなった亜人に近いモンスター。


 そして、ファンタジー的には当たり前のようになっている、性欲が強く、同種の雌に限らず人型種族の雌であれば何でも良いので襲いかかる――というのも、この世界では踏襲されてるようだ。


 この世界のオークの知能はそれなりに高く、集団生活をしていることが多い。

 人の集落を襲ったり、女子供を誘拐したりということはするものの、迂闊に襲えば逆襲されると理解しているので、集団でいる時は比較的大人しい。

 そんなモンスターのようだ。


 はぐれオークというのは、そんな集団からあぶれたオークのことらしい。

 基本的には集団の輪を乱すタイプが排斥されて、ぼっちになったオークということなのだろう。


 この手のオークには、種族として守るべきルールも仲間もないため、本能のままに暴れ回る。

 その為、人気の少ない集落や、街道などで人を襲う。


「オークって進化種としてハイオークがいるんだけどね。

 どうにも、ここらで暴れてるはぐれオークは、ハイオークよりも上位のグランオークって感じかな」

「いやいや。笑ってるようなコト?」


 腕の良い冒険者であれば、タイマンで勝てるのがオークというモンスターらしいが、進化するとスペックが跳ね上がるらしい。


 サリーはそれなりに腕の覚えがあるようだが、話を聞いている限りだとグランオークとやらは相当強そうではある。


「大丈夫だって。確かにグランオークはふつうの冒険者からすれば強敵だけど、わたしくらいのレベルになれば、勝てる相手だしね」

「君がどれだけ強いのか、俺はわからないんだけど?」

「それは実践で見せてあげるよ。仕事のあとクロトを街へ送るって約束は絶対守るから、信じて欲しいかな」

「……まぁ、いいけど」


 などと言いつつ、黒斗はふと思った。

 そんなやべー相手と戦いに行くサリーと一緒にいていいのかな……と。


 戦えない素人なんていうのは完全に足手まといだ。


「あ、もしかして自分のコトを足手まといだとか思ったかな?」

「まぁね」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。

 グランオーク程度が相手なら、枷があろうとなかろうと関係ないからさ」


 散歩の途中に寄り道する程度の気軽さのサリーに、そんなものかと黒斗は息を吐いた。


 そうして、しばらくは雑談混じりの常識のすりあわせのようなことをしながら歩く。


 やや歩いて――爆音が響いた。


「魔術? 火炎系の炸裂するやつかな?」


 音の出所をサリーが探っていると、続けて人の話し声が聞こえてくる。


「くっそ、何なのよコイツッ!!」

「逃げろッ! ただのハイオークじゃないぞッ!」


 だいぶ焦ったやりとりに、黒斗は思わずサリーを見た。

 すると、サリーはこちらを見て一つうなずいた。


「行くよッ! 近くに居てくれないと守れないからつかず離れずで付いてきてッ!」


 言うなり、彼女は走り出す。


「ちょッ、森の中だっていうのにそんな素早く……ッ!」


 戸惑いながらも黒斗は、彼女のあとを追いかけた。





 追いかけていると、キラキラとしたものが見えてくる。

 恐らくは陽光を反射している湖か何かだろう。


 視界が開けると、そこには無数のオークの死体が散らばっている

 無惨な光景に、あまり馴れていない黒斗は思わず吐きそうになって、それを堪えた。


「そこのお二人さんッ! どういう状況かなッ?」


 グランオークと思われる、周辺に転がってるオークよりも二周りは大きそうオークをパンチ一発で吹き飛ばしながら、サリーはさっきの声の主と思われる二人に訊ねる。


「ここにあったオークの集落の監視の仕事をしてたんだ」

「そしたら、あの大きい奴が急にこの集落を襲いだして」

「……群からはぐれすぎると、同族相手も構わず襲うようになるのね」


 男剣士と女魔術師がそれぞれに口にする。

 集落を監視するだけならば、大人数はあまり必要ないのだろう。


 サリーが僅かに思案をしていると、吹き飛ばされたグランオークが雄叫びを上げながら立ち上がった。


「はぐれオーク……? あれがか?」

「でも、いくらなんでも同族の群れを襲うなんて……」

「やっぱりグランオークに進化してるっぽいしね。力が増大して考え方が変わっちゃったのかも」


 グランオークの名前に、二人が驚愕を浮かべる。

 それだけ、やばい相手かもしれないなー……と黒斗がのんびり思っていると、サリーがこちらを見た。


「クロト。ボサッとしてないでね」

「え?」

「二人とも悪いんだけど、わたしの連れをお願いできないかな。

 街に送り届ける予定の人でね。戦闘はできないんだ」

「護衛相手連れて助けに来たのッ!?」

「無茶してんなッ!」


 驚きながらも二人は手早く黒斗の近くにやってくる。


「巻き込んでしまってすみません」

「いえ、困ってる時はお互い様といいますか……」


 突然謝られて、黒斗はしどろもどろに答えた。

 状況に付いていけていないが、とりあえず今は二人が自分を守ってくれるのだろう。


(現実は……龍也のようには立ち回れないよな……。

 正直、グランオークとか怖いし……)


 吹き飛ばされた瞬間しか見ていないが、かなりの大きさだった。

 それに、周辺で生き絶えているオークたちをみる限り、とてつもない胆力ももっていそうだ。


 黒斗は、自分が殴られたら絶対に一撃で死ぬ自信があった。


(無事に終わりますように……)


 祈るような様子で、サリーを見やった時だ。


「グオオオオオオオオオッ!!」


 サリーに吹き飛ばされていたグランオークが雄叫びを上げ、茂みの中から立ち上がる。


 二メートル後半はありそうな巨躯。

 両腕に、手の甲から肘に掛けてガントレットのようなものをつけているが、皮膚との境目が分からない。もしかしたら、皮膚が変化しているものなのかもしれない。

 足も、膝から足首に掛けて似たような形だ。


 腰には申し訳程度のボロ布のようなものを巻いており、首にもボロボロのロングマフラーのようなものを巻いている。


「ガントレットにアンクレット……?」


 立ち上がったグランオークの姿に、サリーが訝った。


「ブゥオオオオオオオオッ!!」


 だが、彼女が何か考えるよりも先にグランオークがサリーに襲いかかる。


「え? 速ッ!?」


 上段から打ち下ろされる拳を慌てて避けて、サリーは剣を構えなおす。


「みんな、もっと離れてッ! こいつ、ただのグランオークじゃないッ、グランオークの――変異種だッ!」


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