過去
当時僕が9歳、ミリが7歳の時に確かソレは起こった。
結論から言うと、ただどこでもありふれた出来事で、よくあることであり、魔物の襲撃で村が滅んだというだけだ。
夜中、突如村に魔物の襲撃があった際に知らせるための警笛がけたたましく鳴り、それを聞いた両親は僕らを守る為に村の近くにある、遊び場であった洞窟の中の窪みに隠れさせた。
決して私たちが戻るまで外に出てはダメよ、と一言言って、
父は魔物を退治に、母はまだ避難を終えていないであろう人達を誘導する為に飛び出していった。
近くの森に出没する、よくいる中型の肉食の魔物相手なら、村人全員で対処せずとも数人の狩人で対処できたはずだが、今回襲撃してきた魔物はいつもの魔物ではなく、大型の四足歩行の地を這う竜であった。
本来ならこの近くに生息しているわけないはずの凶暴な肉食の竜が、どういうわけか村を襲って人々を捕食するために襲ってきたのだ。
後になってから知った事だが、この地竜は住処を逃げ追い出されてここまで辿り着いたらしい。
追い出され、逃走の果てにお腹を空かせた先にたまたまこの村があったというだけ。
ではなぜ大型で凶暴な竜が一体何から逃げていたのかという疑問が残る。
この世界では神という存在がいる。
神はとても強大な力で実質的な世界の支配者のようなものだが、それとは別に神に迫る強さを持った存在がいる。
それは人々から忌み嫌われ、畏怖の意味も込めて”魔人”と呼ばれている。
魔人のような闇の勢力側のモノは神の力の源の一部、”神核”を狙っいて、神格とは吸収することで半永久的な不老不死を手に入れることが出来るものであり、神に仕える教皇、また地位が高い巫女や偉人が獲得している、所謂神の御業の一つである。
あと魔人と魔人同士は仲が良いというわけでもない。むしろ敵同士であり日々争い、殺しあっている。
そんな中魔人同士の争いに巻き込まれた哀れな地竜が住処を逃げ出し、お腹を空かせた先に村があった。それだけだ。
いつまで洞窟にいたのであろうか、両親が迎えに来てくれると信じていいつけ通りに待っていたが何時まで待っても来なかった。
何日も食べないでずっと洞窟に居たため限界が近づいていたのもあり、意を決して外に二人で出た。
その時に見た光景は生涯忘れることは出来ないだろう。
そうして僕ら兄妹は天涯孤独となった。
そして小さい子供二人だけでこの世界は生きていけるほど甘くない、そんな時に孤児として引き取られた僕たちはとても運がよかったといえる。
その時地竜討伐に参加していたガイルズや色々な人たちと出会ったりした。
実はというと両親と故郷を無くしたが今になってはそこまで悲観しているわけではない。初めて村の外にでて大きな広い世界に驚き、沢山の人と出会うことが出来た。
確かに父と母はいなくなってしまったがまだ僕には大切な妹がいる。そして二度と家族を失わないためにも僕は大切な人を守れるようになりたいとその時初めて思ったのである。
***
「戦士シミグよ、此度の魔物討伐の任務ご苦労であった。魔物の討伐は我々戦神ドラング様に仕える者の使命であり、そなたらの働きによって民衆が安心して暮らせる世を作るために必要なことである。」
ここは、ドラング神殿の聖堂、その祭壇の前で僕は昨日の任務の報告を行った。
目の前で報告を聞き、今労いの言葉をかけてくださったのは神殿の大司祭、ハムルズ様だ。隣にはミリが控えている。
ハムルズ様はとても信頼が厚く、とても信仰深い優れた聖職者であり、僕たち孤児にとっての第二の父でもある。
「はい、ですが攫われた人々を助けることが出来ませんでした。申し訳ありません。」僕は膝をついて続けて報告する。
「分かっておる。詳細は一緒に同行していた神官ミリから既に聞いておる。そしてその状況では助けられなかったのも仕方なかろう。そなたはよくやってくれた。」とハムルズ様は物悲しそうな顔をして言った。
「それと今回はそなたを招集したのは報告のほかにもう一つ重要な任務を告げるためだ。」とこちらを改めて顔を向けられそう言った。
今回呼び出された理由だろうか。僕は気を引き締め大司祭様から告げられる言葉を待つ。
「このドラング神殿には多くの神器や、術具といったものが数多く封印されておるのはお主も知っておろう。その神器の一つが今、封印が解け掛け少し呪いの力が漏れ出しているという報告を受けた。今回はその神器を解明するべく調査の任をお主に与えたい。それとこの任務を無事に達成できた際にはお主を正式に神官の戦士として任命しようと思う。」
神殿には数多くの人間の手に余る武器や防具などが数多く封印されている。中には呪われたものも多く野放しにしておくと悪い輩に利用され大勢の人が死んでしまったり、大きな災厄が起こったりするものが沢山ある。
それと正式な神官として認められるということもあり、それだけ信頼され、重要な任務を任されたというのだ。任務を受けよう、そう思った。
「はっ! 謹んでお受けいたします!」
「ほう、受けてくれるか。よし、では早速だがまずは実際にその神器を見てもらおうと思う。神官ミリよ、例の場所に案内してくれたまえ。」とハムルズ様はミリのほうに向きそう言った。
「戦士レヌよ、ではこちらです。ついて来てください。」ミリはそう言ってハムルズ様に一礼をし、背後にある奥の扉へと向かった。
ミリに付いていき、神殿の奥へと進む。
そこで一枚の魔法陣が描かれた鉄性の頑丈そうな扉の前で止まるとミリは懐から大きなカギを取り出して扉の施錠を外した。
「お兄ちゃん、ご苦労さま。その神器はこの扉の向こうにあるけどここからは一人で入ってね。それと…ちょっと呪いが強いのか大変だから気をしっかり持って。」
「うん、分かったよ。とりあえず見てくるだけでいいんだよね?」
「うん、危険だと思ったらすぐに出てきていいからね。とりあえず気を付けて。」とミリは心配そうに言った。
僕は妹に大丈夫、と一言声を掛けてから重い扉に手を掛け重い空気が漂う部屋の中に入っていった。
とある作品を元ネタにしたりしなかったりしているのでなんか似てるなーって思ったらすいません。
だけどまだ現時点ではよくあるちょっと重そうな雰囲気のファンタジー作品かなと思ってたり…