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剣使いの魔女はダメでしょうか?  作者: ろず
第一章
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一日のはじまり

 朝、カーテンの隙間から漏れる光に優しく照らされて目覚める。

 僕は気だるげに体を起こしてカーテンを開け放つと、心地のいい光が体を包み込み、次第に意識がはっきりしてくる。


 いい朝だ、と寝間着から着替える。

 そこでふと、台所を覗くが妹の姿はない。時計を見るといつもより二時間ほど早く目が覚めてしまったみたいだ。


(昨日は帰ってくるのも大分遅かったし疲れているんだろうな)


 起こすのは悪いと思い、玄関に立てかけてある木剣を掴んで外へと出た。


 毎日、朝に鍛錬をすることから一日は始まる。これはもう随分昔からの日課で欠かしたことはない。

 それに剣を振ること精神が研ぎ澄まされて、気持ちが落ち着く。


 ふと、昨日の出来事が頭をよぎり一瞬悲しいことを思い出すが、素振りを始めると気を紛らわすことが出来た。

 縦切り、斜め切り、横切り、剣を振る度に鳴る風切り音が耳に心地いい。一刀一刀に力を込めて早く、そして力強く木剣を振る。

 

 剣術にも流派というものがあり、僕の流派は親友であるガイルズから教えてもらった光一刀流というらしい。一太刀一太刀に重きを置きつつ、速さと柔軟性を重視する流派だそうだ。師匠でもあるガイルズは一応免許皆伝だそうで本人の実力も相当に高い。

 重きを置くという割にはガイルズ本人は曲剣二刀流だけれども本人曰く「流派の基本が出来てれば武器なんてなんでもいいんだよ!大事なのは何の為に剣を振っているかだぜ。」と言っていて、実際に彼の剣技はとても早く、実際に流れるような連撃が得意だ。


 何度も彼と模擬戦闘行っているが勝てるのは十回に一回くらいで、僕にとって目指すべき目標でもある。



 そうこうして素振りに集中していたらミリが起きたのか、神官服の格好で外に出てきた。集中しすぎて気付かなかったけど、もう出る時間だったのかと素振りを中断して妹のほうに振り返る。


「お兄ちゃんおはよー。今日も素振りご苦労ご苦労。」


「あぁミリ、おはよう。もう家を出る時間か、まったく気付かなかったよ。すぐ準備するから待っていてくれ。」


 だがミリは首を振り、


「違う違う。今日は私だけ早く神殿に行かないといけない用事があるからお兄ちゃんはもう少しゆっくりしてから来るといいよ。あとご飯作っておいたから食べといてねー。」


 そうだったのか、じゃあ気を付けて行ってらっしゃい。と妹を見送り、鍛錬を終えて僕は家の中に入った。


 妹は僕と同じ様に神殿で勤めを果たしているが、僕と違って”見習い”ではなく正式な神官だ。何より魔法の才能と信仰深さもあって最年少の神官になっている。おまけに明るく、よく気が利くので周囲の評判も大変いい。



 家の中に入ると台所には朝食と書置きが置かれていた。



”ちゃんと食べてねお兄ちゃん。あと今日は大司祭様から大事な話があるみたいだから遅れないように。 愛しの妹より”



 きっと寝ているであろうと思って、書置きをわざわざ書いてくれていたみたいだ。妹に感謝。


 いただきます、と一言呟いてからまだ暖かい朝食に手を付けた。優しい味がした。




 その後、朝食を食べ終えた後、片付けをして、僕は神殿戦士の服に着替えてからゆっくりと家を出て神殿へと向かった。




***




 僕とミリはもともと二人だけではなく、ちゃんと両親もいた。

 高い山の麓にある大自然に囲まれた辺境の村、ケレスという村出身であった。


 村に住んでいる人間も全員顔見知りなくらい狭いコミュニティだったが、年齢が近い子供も妹以外いないような村であった。


 父親は村の狩人兼用心棒で、主に周辺の獣や魔物を狩って、肉や毛皮を売ったりして生計を立てていた。一方母親はそんな父親や僕ら二人の子供を支えるために一生懸命に家事などをこなし、家族全員を支え、愛していた。


 決して娯楽も多くなかったが、それでも家族は仲が良く今ある幸せを感じて暮らしていたのだが、幸せは長く続くことはなかった。

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