死神に出会う
「…」
僕はもともと幽霊だとか神様だとか…オカルト…とまとめていいのかわからないけれどそういう類のものに関しては全く信用していないタイプだった。
友達との会話でそういう話題になったとしても…
『幽霊がいるとしてさ…透けてるんでしょう?物体が触れるわけ無いじゃん』
とほざいていたし…挙げ句の果には
『神がいたとしたら今の世の中見たら泣いて引きこもるでしょ…』
などと好き放題に言ってたりしていた。
だからこそ今僕は目の前で起きているこの現象が信じられずにいた。
なんせ僕が目の前で寝ているわけだ。
ベットの上で手を組みながら。
「これってあれか…僕…死んでる?」
体のそばには簡易的な小さな仏壇のようなもの…線香とそれを立てるための灰のいれものまでばっちりと準備がしてある。
もう明らかに死んでいる。
ってことはここにいる僕は…幽霊…
「ってなわけないじゃーん。あはははは…はは…」
…ほんとに幽霊じゃないよね…!?
僕は手をじっくりと見てみる。
なんだろう。透けて見える。
「いやいや…考えてみろ…透けて見えたとして…触れたら幽霊ではないよね…そう…そのはずなんだ…!」
僕はそのまますぐ近くの壁に手をつこうとした。
しかしある考えを思いつきつこうとしていた手を止めた。
もし…もしこれで触れなかったとしたら…
「幽霊確定ってことじゃないかぁぁぁぁ…!」
そんなの嫌だぁぁ…!
今まで否定してきたことがホントは事実でした☆だけならまだしも死んだのも確定しちゃうし…!
僕はそんなことを考えながら頭を抱え勢いよく体を後ろに反った。
そしてそのまま…ぐるんと一回転。
「ん…?」
僕は何も考えずもう一度勢いをつけて後ろに反り返る。
またしても一回転。まるで地に足がついていないように空中を回転することができた。
僕は恐る恐るといった感じで足の方にゆっくりと目を向ける。
そこには…
「あははは…ははは…皆…今までごめん…幽霊ってほんとにいました…」
いや…足はある…けどすごく薄くて…うん。透けてる。
しかも宙に浮いてるし…
「…いったいなんなんだぁ…!なんで幽霊になってんだぁ…!」
「…やっとみつけた」
「…え?」
聞き間違いか…?
俺は声の聞こえた真後ろの方に体を向ける。
するとそこには無機質な病院の扉…ではなく深くフードを被った小柄な少女が立っていた。
「…君が河合翔?」
「そ、そうですけど…」
「ん…」
彼女はそれだけを言うと後ろを向き何かボソボソと話し始めた。
え?誰…てか何これ…どゆこと?
一応今のところ僕は幽霊になったって考えているけど…それに平然と話しかけてくるってかなり特殊な人…だよな…?
それに僕を訪ねてきたような話し方だったし名前も知られていた…
ゴーストバスター的な存在なら名前をわざわざ聞くようなイメージはないし…何なんだろう…わからない…
そんなことを考えながら1人もんもんとしていると彼女は再びこちらを見るように体の向きを変えた。
「…君は今自分がどんな状態かわかってる?」
「正直あんまりわかってないですよ…というかまずあなたは誰なんです…?」
もともといきなり現れたことによる不信感は今の意味不明な質問で更に強くなっていく。
顔は見えないし、素性もわからない…ただの不審者なんじゃない…?この子…
「はぁ…」
「!?」
ため息つきやがったぞこいつ…!まじで何なんだよ…!
もはや警戒心を隠さず僕はかなり強めに睨みつける。
「だるいなぁ…」
そうぼやくと彼女は深くかぶっていたフードを脱ぎ素顔を見せながら話し始めた。
「そんな警戒しなくていい…私はサナ…死神をやってる。まあ…よろしく」
そう言って彼女は手を伸ばし握手を求めてきた。
「あっ、えとよろしく…」
俺は慌てて握手を返す。
なんで慌てていたのかというと…うん…不信感とか吹っ飛ぶくらいにきれいな顔に見惚れていて気づかなかったからだ。
金髪碧眼のショートヘアー。
顔は無表情だけどキリッとしたつり目とあいまって小柄な体型とは正反対に大人っぽい印象を受けた。
握手を終えると彼女…サナはゆっくりと話し始めた。
「あなたは…ありきたりに言えば幽霊…」
「あー…やっぱり死んでるんだ…」
死神って時点で何となくそうだろうなとは思ってた。
「ん…それで死神の仕事は幽霊の最後の願いを聞いて還すこと…」
「それって…」
「俗に言う…あの世」
「存在するのか…はは…」
もういろいろと俺が当たり前だと思っていたことが覆りすぎて驚く気力すらない…
「ん…で率直に聞くけど…どんな未練がある?」
「未練…未練…」
んー…なんかあるかな…
特になにか執着するほどの物事なんてなかったし…
なにか気になること…
「あっそうだ…僕…なんで死んだんです?」
考えてみれば死ぬ瞬間だけは一つも覚えてない。
過去の記憶はあるのにそこだけがポッカリと抜けてる感覚…
未練…とは違うけど…それくらいしか気になることがないんだよなぁ…
まぁ別に記憶がないからって何か問題があるわけでもないよね…
そう気楽に考えていた僕とは違い目の前にいるサナさんは一瞬目を見開いたあと今まで以上にめんどくさそうな顔で
「…こんなの聞いてない」
と隠しもせずにぼやいていた。
「え…?」
僕はなんでそんなにめんどくさそうな顔をしているのかを聞こうとしていた。
しかしそれは叶うことなく…
「…少し痛いかもだけど…我慢してね」
そう呟きながらサナさんはいつの間にか手にしていた鎌を僕に振り下ろしていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「……で…」
『…………んにょ』
誰かの声が聞こえる…
「……らしい」
「…んー………といっ……んにょね?」
んにょ…?
誰だろう…そんな言葉使う人知り合いにいたっけ…
特徴的な語尾のおかげで少しずつ覚醒し始めた意識と共になぜ僕は寝ているのかについて考え始めた。
えーと…死神のサナさんに出会って幽霊なのが判明して…
未練について聞かれて記憶がないって答えたあとに…
「はっ…!」
そうだよ!俺切られた…!
僕はすばやく体を起こすと切られたはずの部分を触りながらどうなっているのかを確認する。
けれど…
「あれ…切れて…ない?」
「…やっと起きた」
僕が声のした方に顔を向けるとすぐそばにサナさんの顔があった。
「んあっ!?」
僕は慌てて離れるとすぐに立ち上がる。
「ちょっ、あ、え?」
なんで僕を切ったのか聞きたかったのにろれつが回らず変な声だけが出てしまった。
そんな僕を見ながらサナさんの方は少し目を細めふっと静かに笑っていた。
無表情な顔しか見たことがなかったから少し見惚れて…
「ってそんなことする暇ないじゃん僕…!考えろ…!僕はあの人に切られたんだぞぉっ…!?」
たとえ思春期まっしぐらな年頃だとしても切られた相手に見惚れていたらいろいろアウトだよ…!
「なかなか元気がいいんにょねぇ?私…そういう子とても好きんにょよ?」
僕が思春期と戦っているといきなりのオネエ感満載の声が響き渡ってきた。
「だ、誰!?」
そういえば起きるときに聞こえてきた声だよね…
いくら周りを見渡してもどこにもその声を出した人らしき人物は見当たらない。
サナさんしかこの場所には人は立っていなかった。
「そういえばここはどこなんだ…周りはすごく真っ黒だし…」
さっきまでの病室とは違い、人は見えるのにその周辺の物の区別は全くつかないほどに真っ黒な世界だった。
というか人以外は者がないように見える。
先のない真っ暗な空間に留めさせられているような…
「…ヒント…上」
「う、上?」
なんで上?
言われたとおりに上を見上げてみる。
ただ見上げたところで真っ暗な空間が見えるだけで何かがあるようには思えなかった。
「何もないじゃないですか…」
ほんとなんなんだこの人…いきなり切ってきたり変なこと言ったり…外見は可愛いけどそれ以外の行動が人間らしくないというか…死神だからと言われれば何も言えないけども…!
「んー…残念んにょねー…ちょっとだけ小さくなって…ア・ゲ・ル♡」
「へ…?」
その声とともにゴゴゴ…と地響きのような大きな音が聞こえ始める。
まじで何なんだよ…もういろいろ怖すぎるよ…助けて誰か…
早くも脳みそのキャパを超える現象の数々に泣きそうになりながらもう一度を見上げてみる。
そこには…
「えん…ま?」
「そーんにょ。私閻魔大王なのぉ…閻魔ちゃんって呼んでんにょ♡」
「…はは…」
「…まーそうなる…よね」
もー無理だ…いろいろ…無理だ…!
「どういうことだよサナさん…!いきなり切られたかと思えばこんな場所に連れてこられるし、閻魔大王はオネエだし…!未練を解決するだけなんじゃなかったの…!?」
一気にまくしたてるとサナさんはバツが悪そうな顔をしながら口を開いた。
「…それについては悪かった…ごめんなさい…」
「…ふん…」
「確かに死神は幽霊の未練を無くすことが仕事…だけどもう一つ仕事がある」
「もう一つ…?」
サナさんは頷くと話を続けた。
「死んだ記憶のないものを迎え入れること…」
「迎え入れる…?」
「そう…死神として迎え入れる…だから君はここに連れてこられた」
「…え?」
ちなみにんにょね?と閻魔大王が口を挟んでくる。
「この仕事に拒否権はないんにょ」
「…そういうことだから…よろしく…翔」
「な、え…は…?」
意味もわからないまま無意識にサナさんに差し出された手を握る。
この時のサナさんの顔はとても可愛らしい笑顔だった。
なんでもう片方がちゃんと更新できてないのに2つ目を…と思った人…!
いつも見てくださりありがとうございます!
個人的にあの世がこんな世界ならいいのにな…というものをいつか書いてみたいと思っていたので…不定期更新にはなりますが読んでもらえると助かります。
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