表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうして私がラスボスなんだ【更新停止中】  作者: 縹月草
今日から私も悪役令嬢?
6/34

【6】放っておけないわよ!!何あの子!

 

「よっ、()()()()?」


「……。」


「あーうそです ごめんなさい。」


 今話題の〝アリス様〟に対し、にやりと笑って軽々しく声をかける青年。(取り巻きガールズが見たら発狂しそうな勢いである。)


「何かご用ですか。()()()()殿()


 オリオン・フォン・アスター (アリスはいつもはリオンと呼んでいる)は、アスター公爵家のご子息だ。

 さらっとした蒼い髪にグレーの瞳を持つ彼の容姿は整っており、学院でもファンがいる程とか。


 ーーまあアリスにとっては初等部の頃からの、幼馴染に近い存在である。腐れ縁といってもいい。


 成績優秀 容姿端麗な公爵令嬢のアリリエスに、戸惑いなく接することが許されるのは、幼馴染と自負するオリオンの特権だろう。

 幼い頃から整った顔立ちのアリスに寄ってくる男たちを牽制してきたのは彼の功績と言って良い。


「冗談だって。そう怒るなよ」


 少し冗談が過ぎたかと肩をすくめて笑うオリオンに、アリスは呆れた顔をして答える。


「別に怒ってないけれど。ちょっと面倒なのがきたと思っただけよ」


「正直だな……」


 自分に対し取り繕わないアリスに安堵する反面、正直すぎる言動に少しばかり傷つくオリオン。しかしまあ こんなのは慣れっこだ。何年やってきたことか。


「それより……随分と人気者だな?アリス様」


「意味がわからないわ。突然みんなそう呼び出したのよね」


 不可解そうに答えるアリスに、そういえばと思い返すオリオン。


「オレの聞いた話だと、カトレット嬢が関わってるらしいな」


 ーーーまたあの子か。アリスの感想はそれに尽きる。悉く関わってくる主人公エミリアに、呆れを通り越してもはや感心してくる。ここまでくると すごいな主人公。


「あのコ、アリスや周りのご令嬢が いくら言ってもめげないんだろ?なかなか凄いじゃないか」


「……あの子の前向きさには心が折れそうになるわ」


 疲れたように言うアリスに苦笑するオリオン。

 彼は 昔から誰にでも優しいアリスが、最近やけに悪ぶろうとしたり(悉く失敗に終わっている)、高飛車お嬢様っぽくしようとしたり(生粋のお嬢様のくせに嫌味がない)、色々と試みているのを知っている。


「まあ、いいんじゃないのか?別に悪い方へは行ってないみたいだし。むしろ懐いてんじゃん」


「ーーーそれが悪いのだけど」


 ぽつりと呟くアリス。そう、この物語のラスボスである私としては、こんなに主人公に懐かれるつもりはなかったし懐かれてはいけなかったはずだ。

 ーーどこで何を間違ったのか。え、私が悪いの??別に優しくしたつもりもないんだけどなぁ。


 アリスだって出来ることなら倒されることを回避したい。しかし仲良くなってからやっぱり倒されることになりました、というのは流石に傷つく。


「はあ……」


「なんだよ、彼女のこと嫌いなのか?」


「嫌いとかではないけれど。どうしていいか分からなくなるわ」


 こんな風に人間関係で悩む彼女は珍しい。アリスは基本、来るもの拒まず去る者追わずの精神だ。そんな彼女がここまで悩むカトレット嬢とは どのような人物なのか……オリオンはちょっとだけ興味が湧いた。


「ふーん。まあ、いつもみたいに好きにさせたらいいんじゃないか?」


 けろっと言うオリオンに、アリスはなんだかいつまでも悩む自分が滑稽にみえた。

 ーー何をこんなに悩んでいるのだろう。面倒な。


「……そうね、なるようにしかならないものね。リオンに諭されると思わなかったわ」


「元気が出たと思ったら失礼な奴だな」


「あら、励ましてくれていたの?ありがとう」


 そう言って笑うアリスに、心の中で安堵の息をつくオリオンだった。



 ーー悩んでいても仕方がない。こちらから何かすることはないけれど、とりあえず好きにさせておこう。放っておくのが懸命だ。そう思ったアリスであった。





 ◆







 ーーーって……放っておけないわよ!!何あの子!


 アリスはまた心の中で絶叫した。

 もちろん表情には出さな……


「アリス様、心の声が漏れてますわ」


 苦笑するレイチェル(彼女もすっかり愛称呼びが定着している)によって現実に引き戻される。あぁ、ご令嬢として失格だわ。でも不可抗力だといいたい。


「どうしてあの子が()()()いるの?!」


「なんでも珍しい魔力の持ち主だとか。基礎魔力も基準値を大きく超えていて、さらに全属性に対する魔力抵抗がないそうですわ」


 あぁそうだあの子主人公だった!全属性OKとかとんでも設定だな!しかもこれで一般人なのだから反則だ。じゃなくて。


「ーーーだからってどうしてエミリア(あの子)が魔導師コースにいるのよ!」


「……。」



 ーーそう、魔導師コースとは基本、貴族の()()()が受ける講義だ。

 この講義は将来魔導師として活躍するであろう人物を育成する為の場だ。ご令嬢方は基本そのような道に進む人がいない。ましてや魔導師は危険な職である為、よほど稀な騎士家系の女性陣を除いて自然と男子生徒が多くなるのだ。


 それなのに、だ。


 若干場違いな彼女はそのことを知らないのか、周りの生徒に笑顔で挨拶をしている。その中には殿下や、あの腐れ縁のオリオンもいた。一見にこやかに挨拶を返しているようだが、アリスには彼が笑顔の裏で相手を探ろうとしているのが見てとれた。

 ご令嬢相手に何をしているんだか……。まあ特異体質な彼女に着目する彼は やはり勘がいいというか何というか。


 たまたま通りかかってしまったアリリエスは、その思わず叫びたくなるような状況にまた頭を悩ませるのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ