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どうして私がラスボスなんだ【更新停止中】  作者: 縹月草
今日から私も悪役令嬢?
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【1】どうして私がラスボスなんだ……

 ーーー私はうっかり山一つ消し飛ばした瞬間に全てを思い出した。



 いや、思い出したというのもおかしいけれど……。

 なんかこう映像みたいなものが頭の中に流れ込んできた。



 ーーアリリエス・フォン・レイウェル。(長いよね、みんなアリスって呼んでる。) 金の髪にアイスブルーの瞳を持つ容姿はなかなか整っている方だとは思う。容姿端麗 成績優秀なアリスはレイウェル公のご令嬢だ。


 魔法とか魔物とかそういうのがある世界で、アリスはなかなかの、いやかなりの魔力の持ち主だった。

 ある事がきっかけでアリスは世界に絶望し、滅ぼそうとするんだけど、止めようとした主人公達に倒される設定だーーー。



 そう、これは前世でやっていたゲームの中のお話だった。そこまで思い出した私は一言。



「どうして私がラスボスなんだ……」



 これに尽きる。いやだってねぇ?

 これまで波風立てず普通の人生を送ってきたつもりだった。確かに自分の魔力の多さには薄々気づいていたけど、だからと言ってそんなに気にしていなかった。

 今日はちょっとした好奇心で魔力量を測りにきたら山一つ消しとばしてしまった。うっかりだ。


「あっ、山!とりあえず戻しておこう……」


 手を前に掲げ、消しとばしてしまった山をイメージする。土を盛り立て、そこから木々の芽が息吹く。前世でみた、どんぐりからにょきにょき木が成長していくイメージだ。あ、すごい やりやすい。ついでだから滝も作っておこう。

 あれよあれよという間に山一つ分が完成した。ちょっとした罪悪感から前あったよりも盛り沢山にしてみた。うん、いい感じだ。


 にしてもーー


「流石に疲れた……」


 物凄い魔力の消費をしてしまい、体力というか気力のゲージがゼロに近い。しかし これだけやっても魔力枯渇にならないのだから恐ろしい。


 莫大な魔力の消費と前世の記憶を思い出した所為か、アリスは意識を手放した。



 ◆



 ぱちり。

 少しの眩暈を覚えながら目を覚ますと、そこは公爵家の自室だった。


「あれ、なんで……」


 まさか無意識の内に瞬間移動……なわけないか。流石にそれは反則技だ。きっとウチの優秀な護衛が運んでくれたのだろう。撒いてきたのに。


「お嬢様!目が覚めましたか??」


 心配そうに駆け寄ってくるのは侍女のミアだ。

 小さい頃から身の回りのお世話をしてくれている。


「お身体の具合はいかがですか?」


「大丈夫よ、少し疲れただけだから」


 そう言って笑うと安心した様子のミア。温かい飲み物を持ってきてもらうように言うとすぐに室を後にした。



「これからどうするかなぁ……」


 まさか自分がラスボスだとは……。現在アリスは15才。あれは確かアメリア学院の高等部でのストーリーだったから……って高等部入学は一ヶ月後じゃないの。あんまり考える時間なかった。


「ゲームのアリスはどうして世界に絶望してしまったのかしら。」


 肝心な記憶が思い出せなかった。どうせなら全部思い出させてくれればいいのに。ネタバレ厳禁ってか。いや自分がラスボスだという最大のネタバレは既に行われているんだが。


 このお話の主人公は高等部から学院に入学する、エミリア・カトレット。アメリア学院は中等部までは貴族しか入ることは出来ないが、高等部からは一般入学も可としている。この主人公エミリアこと通称エリーは、様々なキャラクターと出会い助けられながら成長していく。そして終盤、暴走したアリリエスを倒し、思い人と結ばれるというストーリーだ。


 彼女がゲームをクリアするには やはり悪の存在は不可欠だろう。私はあくまでラスボスなわけで。

 ストーリーを知った上でも私が主人公になることは出来ない。それならいっそ 彼女に成長してもらって、潔く倒される方がベストだろうか。いやでも痛いのはちょっとなぁ。

 


 うーんと唸っていると飲み物を取りに行っていたミアが戻ってきた。


「お嬢様、温かいミルクですわ」


「ありがとう」


「(悩ましげなお嬢様は一段と儚げで美しく見えますわ……)」


 ほう、と内心見惚れていたミアだが、当の本人がなかなか物騒な悩みを抱いているとはつゆ知らず。

 こうしてまた一つお嬢様美談が増えるのだった。

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