先輩
王都で奴隷たちを買ってから数日後、奴隷たちは部位欠損などを治してから何時ものごとく拠点で訓練を実施中だ。
今回は人数が多いため訓練期間が長くなるかもしれないとカルーゼから言われている。
そのため王都にある屋敷と研究施設を管理するために俺とエリナさんは辺境伯領にも帰らずにいる。
しかし、エリナさんは昨日お母さんが妊娠したと報告が入ったため、朝早くから王都でお祝いの品を買って拠点へと戻っている。
エリナさんと入れ替わるようにシェリアリスが遊びにきた。
「シュン、王都って広いし人が多いね~。エリナと一緒に散策したけど全然回り切れなかったよ~!
今日もエリナと出かけようと思ったけど今回は仕方ないわね!」
シェリアリスは新しく拠点に住みだした妖精とコロポックルたちに日々感謝されており、毎朝テンション高く王都の屋敷へとやってきて先ほどの言葉のように取り留めのない会話が続けられるのだった。
シェリアリスとの会話を放置しているとすぐに機嫌が悪くなっていくので愛想よく聞き手に回るしかないのだ。
今日もテンションが高いシェリアリスの相手をしていると屋敷の門前から大声が聞こえてきた。
「だれかいないのーーーー!私が真の後継者よーーーーー!!!」
「誰の許可を貰ってここに出入りしているのよーーーー!」
う~ん?朝から頭のおかしい人が来てるのかな?
俺とシェリアリスは顔を見合わせると誰が叫んでいるのか見に行くべく屋敷を出て門まで歩いて行く。
「ねぇ、シュン。あそこにいるド派手な人知り合いなの?」
そう。門前にはピンクの上下で首周りに真っ白な羽をこれでもかとくっ付けた服装で、宝塚の様な格好をした女性が叫んでいた。
ただ、宝塚の様にスタイル良く似合っていればよかった?のだろうが門前にいる女性は全体的に丸く全く似合ってなかった。
師匠の屋敷は門まで結構な距離があり、そのピンクの人を見つけるとすぐさま隠れるようにしたがどうやら見つかっていたようだ。
「あなたね!アリストテレス先生のお屋敷に不法侵入している輩は!出て行きなさい!ここは私が先生から譲られる場所なのよ!」
???
この人は何を言っているんだろうか?
というかこの人は誰なんだろう?
「きぃーーー!早く出て行きなさいよ!先生が帰られるまで此処は騎士団の方が管理されているのよ!騎士団の方がいない隙をついて勝手に住むなんてーーーー!!」
「でていけ!でていけ!さっさとでていけ!・・・しばくぞ!」
お、おう。何か既視感がある気がするが音量すげーな、この人。
「あのぉ~。どなたでしょうか?」
「何であなたに名乗らないといけないのよ!先に貴方が名乗るべきじゃないの!目上の人に敬意を払いなさい!」
うおっ!おばさん力が半端ないな。世界が変わってもこういった人はどこにでもいるんだな。
前世ではこういう人に実際には会ったことは無く、ネットとかでしか見た事なかったけど実際に会ってみると物凄い圧迫感を感じてしまうな。
目の前のおばさんに圧倒されて固まっていると何の反応も示さない俺に業を煮やしたのかおばさんがさらに話しかけてきた。
「あなた!何黙っているのよ!さっさと名乗りなさいよ!」
「あ、はい。シュンと申します。」
「ジョンね!ジョン!さっさと出て行きなさい!先生には黙っておいてあげるから早く出て行きいなさい!」
「あのですね。ここ私が相続しまして、現在私の屋敷なんですけど・・・」
「はぁぁぁぁぁ!ここは私が受け継ぐことになってるのよ!アリストテレス先生の弟子である私が!!!」
師匠の弟子?ってことは・・・先輩なの?
ししょぉぉぉ!こんな人弟子に取ってたんですかぁぁ。もっと人を選びましょうよ。
「えっと、、、アリストテレス師匠の弟子?なのですか?」
「ええ、そうよ!私は先生にその才能を認められた錬金術の天才!サルモナラよ!
これを御覧なさい!先生から頂いた二級免許よ!」
サルモナラと名乗った女性は、びっかーん!と光っている雰囲気を出しながら銅色をしたバッチの様な物を突き出した。
サルモナラは得意満面の顔をしながら鼻息荒くふっふーん!としているのだが。
あのバッチっぽいものって昔師匠の持ち物にあって「何ですかこれ?」と聞いた時に前に弟子たちが格付けを望んだ時に適当に作った物らしく何の意味も無いと言っていた物だ。
そもそも錬金術は必要な物がきちんと作れるかどうかでしかなく格付け何て意味が無いとの事。
師匠としてはランク別にまとめた本に書いた錬金術は全て100%作れる様にならなければいけないと言っていた。
本人としてもランク8からは100%では無いのでまだまだ精進が必要だ!と言われていたが。
「え~っと、私アリストテレス師匠から免許皆伝を貰っておりまして、ダラアス騎士団長立ち合いの元こちらを正式に引き継ぎまして。。。」
「はぁぁぁぁあああぁぁぁあ?そんなことあるわけないでしょ!ここは昔先生が住まわれていた時に私が受け継ぐって決まってたのよ!なぜあなたのようなどこの馬の骨とも知らない奴に掻っ攫われなければいけないのよ!さっさとでてけーーーー!」
イキナリ切れました。何か凄い早口で色々と言われているが何を言っているのか聴き取れない。
どうすればいいんだ?
なんの進展もしないまま1時間位サルモナラの相手をしていたら鎧を着た騎士っぽい人たちがやってきた。
もしかしたらさっきこの近くをチラチラ見ながら通っていった人が知らせてくれたんだろうか?
「お前たち!何をやっているんだ!」
騎士たちは騒いでいるサルモナラと俺の間に入り話を止めてくれた。
止めてくれたと言っても喋っているのはサルモナラだけなので俺は事の行方を眺めていただけだが、ぼ~っとしていたらいつの間にか俺の体には縄が掛けられていた。
「はぁ?」
俺はぼ~っとしている間に何が起こったのか。縄が掛けられてから話に聞き耳を立てていると何とサルモナラの言い分が認められたらしい。
「あの~。なんであちらの言い分だけ聞いて私の話は聞かないんですか?」
「うるさい!黙れ!この不法侵入者め!」
「いやいや、ここは私が受け継いだ場所なので不法侵入ではないですが・・・」
「ええい!お前の様な者と二級錬金術師様の話、どちらを信用すると思うか!黙ってついてこい!」
騎士たちは俺を括り付けた縄を引っ張っていく。
チラッとサルモナラを見ると勝ち誇ったような顔をして屋敷の中へと入って行こうとした。
しかし門を潜ろうとした時に門に設定されてあるセキュリティが発動した。
バチバチバチ!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あ、そう言えばシェリアリスがいないわ。多分シェリアリスが師匠が設置したセキュリティをONにしたんだろう。
師匠は結構えぐいセキュリティを設置していた。最初にこのセキュリティを発見した時には一通り食らってみたが俺をもってしても結構な痛みを感じたので普通の人が食らうととっても大変な事になること請け合いだ。
そして今サルモナラが門に設置してあるセキュリティを食らってしまった。
騎士たちもサルモナラの叫び声が聞こえたらしく屋敷へと引き換えしていく。
そこでは門に手を掛けた状態でビクビクと痙攣しているサルモナラがいた。
騎士たちはその状況に驚いていたがすぐに危険と判断してサルモナラを掴み門から引き離した。
その時にまた電流が流れたようで「ぐっ!」と唸りながらも騎士の意地なのか歯を食いしばりながら頑張ったようだ。
ちょこっとプスプスと煙が出ているが命に別状はないようだが、出来る限り早く手当てが必要だろう。
騎士たちはポーションも持っておらず、回復魔法(あるか知らないが)も出来ないようだ。
とりあえず様子見をしているが騎士たちはアタフタするだけで何をすれば良いのか分からないようだった。
俺は体を縛られているのでその様子を眺めていることしか出来ないのだが一度話しかけてみたのだが「黙っていろ!」と怒られてしまったのでぽけーっと見ているのだが騎士たちはコソコソと話をしているだけだ。
って言うかこいつら何かおかしくね?




