師匠の遺産
俺とエリナさんは今、イレイブ子爵邸へと向かっている。
騎士団との訓練が終わり、ダラアス様が騎士団の訓練をお願いしてきたが流石にボロクソに倒した後なので速攻断りを入れるとダラアス様は残念な顔をしながらも再度俺を説得しようとした所で事務っぽい方がやって来てダラアス様に報告を行った。
「うむ。ご苦労であった。シュン!手続きが完了したようだ。我が友アリストからの最後の願いを叶えるため、お主にアリストが残した遺産を譲渡する。」
俺はダラアス様に頷くとダラアス様も頷き返した。
「ハイエルフ様の訓練も終わったようだし、ではさっそくアリストが住んでいた館へと案内しよう。ついてまいれ!」
エリナさんが俺の下へとやってくると騎士団をボロボロに倒した事に小言を言うと最後にメッと可愛らしく怒ったふりをしていた。
う~ん。癒されるなぁ~。
そんな俺たちを無視してダラアス様はドンドンと歩いて行くのに気づき、俺とエリナさんは急いで後を追いかけて行く。
城門前には馬車が準備してあり、ダラアス様はドンッ!と乗り込むと俺たちを手招きした。
「ふ~。シュンには断られてしまったが、騎士団が一人にやられてしまったのは事実だな。訓練を一新して、魔物との戦闘ももっと行う必要があるな。シュンの様に蟲の谷で訓練でもするかぁ?」
いやいや、あのレベルで蟲の谷なんて行ったら最初のダニに殲滅させられるぞ?
そもそも騎士団の皆さんって力も技術もスピードもまだまだ鍛える所があるし、身体強化とかも知らないようだから教えればもっともっと強くはなるんだろうけど。。。
あの高いプライドが邪魔をして俺から教わることを良しとしないだろう?
なのですぐに断ったんだが流石に色々とお世話になっているダラアス様にはもう少し優しくすべきかな?
「ダラアス様」
「む?どうしたシュン。」
「先ほどは騎士団の訓練を行う事を断りましたが、」
「お!受けてくれるのか?」
「いえ、さすがに一平民が貴族様が所属する騎士団を指導するのは色々と気を使いますので、私がエリナさん達を鍛えた時の訓練メニューを資料に纏めるという事で如何でしょぅか?」
「おお!ハイエルフ様が訓練されたのと同じメニューを教えてくれるのか。それはいいな!ワシは大抵城に詰めているので城門で伝言を伝えてくれれば何時でも会おうではないか!ガハハッハハハ!」
ダラアス様は上機嫌になってどんな訓練方法だったのか早く知りたいようで色々と質問攻めにあってしまった。
そうこうしていると馬車が止まり扉が開く。
「アリストテレス様のお屋敷に到着致しました。」
「うむ、ご苦労。」
そう言いながらダラアス様は馬車を降りたので俺たちも一緒に馬車を降りると目の前には辺境伯領の館以上に大きい館が聳え立っていた。
はぁ?ここって王都なんだよね?師匠って確か貴族ではなく一応平民だったはずなんだが、なんだこの館の大きさは。
辺境伯領で買った館より大きいって、どういうこと?土地もこっちの方が高いよね?
俺は師匠の遺産が思ったより大きくてびっくりしていると間抜けな顔をした俺を見たダラアス様はガハハハハハッと機嫌よく笑った。
「どうじゃ。アリストの遺産の一つは。」
「えっ?遺産のひとつですか・・・?」
「うむ。アリストは平民じゃが偉大なる錬金術師じゃったからのぉ。この館と、あそこに見える研究施設が遺産の全てじゃ。研究施設には今は誰もおらんがこの館と同じくうちのメイド達が掃除はしとるから綺麗なはずじゃ。え~っと、この鍵で開くはずじゃが。。。」
そう言いながら懐からちょっと大きめのカギを取り出すと門にある鍵穴へと差し込み門を開いた。
ダラアス様は各部屋を案内しながら師匠との思い出を俺たちに話て一通り話終わったら瞳に涙を溜めながらカギを置いて戻って行った。
俺たちは門前でダラアス様の馬車に頭を下げて見送り、見えなくなると館へと入った。
「う~ん。師匠から預かった手紙にこんな事が書いてあったとは。まさか師匠の館を譲り受ける事になるとは思わなかったな。どうしましょうか、エリナさん。」
「え~っと、シュンさんの師匠様の思い出のお屋敷ですのでどなたか雇い入れて辺境伯領のお屋敷の様に管理されるのが良いと思います。
でも、ダラアス様が仰られていた研究施設ですか?そこがどの様な場所なのかわかりませんが、そちらも放置する訳にもいかないですよね?」
「そうですよね~。移動ドアを設置して拠点と繋げるのは良いのですが、変な噂が立たない様にしないといけないのでブロンさん達の様に秘密を守れる人を雇うしかないか。ここと研究施設って所の分を。」
「ふふ。シュンさんと一緒にいると色々ビックリする事が起こってとても楽しいですね。」
「えっ?!そ、そうですか?」
「うふふ。ええ、本当は迷宮の調査の為に出発したのにまさか王都へ来ることになるとは思いませんでしたから。」
「あ~!本当にそうですよね。私もまさか王都へと来ることになるとは思いませんでしたよ。あ!そういえば、このお屋敷を貰ったのでイレイブ様の所にお世話になるわけにもいかないですよね?」
「そういえばそうですね。遅くならないうちにご挨拶にいきませんか?」
「そうですね。ゆっくりするのは後にして先にご挨拶しに行きましょう。」
俺とエリナさんはダラアス様から受け取った鍵で戸締りをしてイレイブ様のお屋敷へと向かった。
研究施設はイレイブ様のお屋敷とは反対側にあるのでしっかりとは見ていないが師匠のお屋敷から見る限り3階建てっぽくて結構大きそうだ。
研究道具とかが揃ってるならシュテーナちゃんやルールチェちゃんが錬金の練習をする場所としては良いのかもしれないな。
拠点にある俺の家では素材は色々と揃ってるけど機材が殆どないからな。
少し落ち着いたら研究施設を見に行くか。
エリナさんと王都の街並みを見ながら歩いてイレイブ様のお屋敷へと到着した。
1時間以上かかったんだけど、師匠の屋敷からイレイブ様のお屋敷まではあまり見る物がなかったのが残念だった。
門番の方に帰ってきた事を報告すると快く招き入れて頂き、玄関で執事の方の出迎えを受けた。
やはり貴族様に使えてる方達だけあり素晴らしい心遣いです。
「エリナ様、シュン様おかえりなさいませ。」
「お出迎えありがとうございます。ただいま帰りました。」
俺とエリナさんは執事さんへ一礼し、帰宅の挨拶を返した。
執事さんの案内でイレイブ様のお部屋へ向かい、帰宅の挨拶と出かけていた時の事を報告した。
師匠の屋敷を譲り受けたことで、そちらを管理するために移り住むことを伝えた。
「そうですか。ニアーナの頼みを聞いてくれて、私を助けてくれた命の恩人に対して何もしてあげれなかった。王都に住んでいる間に何か困ったことがあったら相談してほしい。」
「ありがとうございます。さっそく一つお聞きしたい事があるのですが・・・」
「おっ!なんだね。なんでも聞いてくれたまえ。」
「今回師匠のお屋敷と研究施設を譲り受けたのですが、私とエリナさんは辺境伯領にも屋敷がありまして、辺境伯領に行っている間こちらを管理する人を雇いたいのです。
私たちは王都が初ですので知り合いもいないため、契約で裏切ることが出来ない奴隷を買おうと思ってるのですが、信頼できる奴隷商をご紹介頂けないでしょうか?」
「ふむ。シュン殿は中々考えておられるのだな。確かに私の知り合いを紹介してもシュン殿はどこか信頼が置けない部分が出てくるだろう。」
「いえ、イレイブ様を信頼していないというわけではないのですが・・・」
「いや、これは一般的に正しい認識だよ。私も逆の立場なら同じようにするだろうしな。
ふむ。私が知っている奴隷商ではブルタが一番信頼がおけるだろう。
この後奴隷商に行くのなら執事に案内させるが?また後日であるならば紹介状を書いて渡そう。」
「ありがとうございます。屋敷と研究施設で何人必要か考えていませんので紹介状を頂けますか?」
「あい、わかった。書いている間にニアーナに挨拶をしてくるがいい。」
「はい。お心遣いありがとうございます。まだ暫くは王都にいますので何か体調に問題がありましたらご連絡下さい。」
「ああ、ありがとう。その時はよろしくな」
俺とエリナさんはイレイブ様の部屋を後にしてニアーナ様へご挨拶をしたが、そこで3時間囲炉端会議に参加させられることになったのは予定調和だろう。




