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ペンタグラム  作者: はるひぶ いえん
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ニアーナの悩み

俺たちはニアーナ様の護衛として無事に王都へと到着した。

王都を遠くから見た時には都庁と思ったが近づくにつれて二つの塔に見えていたものは砲台の様に見えた。

ニアーナ様からは古代遺跡を使って王城としていると聞いており入れない場所も多いらしい。

あの塔の部分も外側から登った人が居るらしいのだが入り口は見つけられなかったと聞いている。


俺とエリナさんは異様な王城に言葉が出ずに唯々眺めているだけになっていたが、それを見ていたニアーナ様はニヤニヤと嬉しそうにしていた。

そして、王都へと到着すると俺たちが乗っている馬車は貴族が通る門へと向かった。


「ニアーナ様、私達は護衛ですから一度降りて入門手続きを行いたいと思いますが。」


「このままで問題ありません。エリナさんとシュンさんは私の護衛をして頂いておりますが、お客様として王都へと着て頂いています。」


「「えっ?!お客様ですか?」」


「ええ。本当に何も聞いてらっしゃらないのですねぇ。シュンさんはアリストテレス様の最後のお弟子さんで後継者と伺いました。実は私の夫であるゴレリアスが原因不明の病に掛かっており、錬金術の大家であるアリストテレス様に薬を調合して貰うために蟲の谷に一番近いコッフェロの街に行ったのです。

 そこでアリストテレス様が亡くなった事を知り悲嘆に暮れていた時にシュンさんの事を教えて貰いました。

 シュンさんに直ぐにでも王都へと来て頂きたかったのですが、コッフェロでは何かと問題が発生して中々依頼することが出来ませんでした。

 そして、シュンさんは商業施設を立ち上げられて忙しくなりましたので更に依頼することが出来なくなりラスプ様に相談した所「任せて下さい。」と言われこの度の運びとなりました。

 知らなかったとはいえ騙す様なことをして申し訳ありません。」


「そ、そうだったんですか。え~っと、お力添えるか分かりませんが頑張ります。」


う~ん。思ったよりちゃんとした理由があって良かったのかな?ニアーナ様曰く、旦那様は師匠と知り合いらしく相談しに行けば何かしら手を打ってくれたと熱心に俺を説得してくる。

まぁ、あの時助けたのも何かの縁だし原因さえわかれば助けることは出来るだろう。


俺たちはニアーナ様の馬車で王都へと入り大通りを通っているのだろうか?窓が閉められているので外の様子が全くわからない。

貴族の女性は一般的に顔をあまり出さないらしく王都に入ってから馬車の窓を閉められてしまったのだ。


王都は相当広いらしく王都に入ってから結構長い時間馬車に揺られている。

その間ニアーナ様のお話に付き合いながら時間を潰していると馬車が止まり、馬車の扉が開かれた。

ニアーナ様が先に降りられると執事たちとメイドたちが大勢並び一礼し、「おかえりなさいませ。ニアーナ様。」と声を揃えて挨拶した。


ニアーナ様が執事たちへと挨拶を返すと俺たちの方へ向き、馬車から降りる様に手招きした。

俺たちが馬車から降りると執事たちが一斉に「いらっしゃいませ。」と声掛けされて俺とエリナさんは場違い感に一歩怯んでしまう。


ニアーナ様は執事たちに何かを指示すると俺たちを屋敷へと導いた。

屋敷の一室に案内されると豪華なソファーが置いてあり、「今お茶を準備しておりますので、お座りになってお待ちください。」と言いニアーナ様は旦那様へ帰還の報告をしに行った。

俺とエリナさんは流石王都の貴族様の屋敷だと思いながらメイドさんが淹れてくれたお茶を飲み旅の疲れを癒していた。

う~ん。さすが良い茶葉を使っているようだ。香りがとてもよく口当たりが爽やかになる。

帰る時にお土産で買って行こうと思う程だった。


お茶を飲みながらニアーナ様を待っているとドタドタと淑女とは思われないほどの足音を響かせながらバターンとドアを開けて入ってきた。


「シュンさん!夫が、夫の容態が・・・」


ニアーナ様は早口でそう言うと涙を流して崩れ落ちてしまった。

俺は即座に立ち上がりニアーナ様に近づき、すぐに案内をお願いします。と言うとニアーナ様を立ち上がらせてゴレリアス様が休まれている部屋へと急いだ。


ニアーナ様は部屋へ急いで案内すると扉を開けてゴレリアス様の下へと向かうと俺を手招いた。

俺は急いでニアーナ様へ近づきゴレリアス様の様子を伺った。

ゴレリアス様は息遣いも荒く、尋常ではない程の汗をかき胸を掻きむしっていた。

近くにいたメイドさんに濡れタオルを準備して汗を拭いて貰う様に指示を出し熱と脈拍を測る。


熱が高いが脈拍はそれほど問題になるほどではなかった。俺はゴレリアス様の病状を診察し、師匠から譲り受けた錬金術の成功と失敗を書き示した内容を思います。

師匠がまだ王都で弟子たちを教えていた頃、これに似た症状を診察して色々と手を尽くしたが助けることが出来なかったと書いてあった。

ポーションで体力を回復させたり、解熱剤を調合して飲ませたりしたが症状は改善しなかった。

死亡後に親族の許可を取り原因調査のために解剖を行った所、胸の辺りに魔石の様なものを発見したとある。

師匠はこの石を調査したが何なのかは分からなかったとあった。

しかし、この石からは高濃度の瘴気が漏れていたらしい。


瘴気とはゾンビが長い年月をかけてリッチになると魔力の代わりに纏うものと言われている。

死霊系の上位種が持つものと考えられているらしい。


この資料を読んだ時に俺と地球たちは深夜遅くまで話し合い解決方法はこの石を取り出すか、魔力で瘴気を打ち消すかという結論に至った。

俺は手からソナーの様に魔力を放出しながら胸辺りに何か無いか確認してみると師匠が書き残した様に小石の様な物がある事が分かった。

その小石に意識を集中すると確かに魔力とは違った力を感じた。


小石に魔力を集中して浴びせるとゴレリアス様が苦しみだした。それを見たニアーナ様が俺を押しのけてゴレリアス様に抱きつき泣き出してしまった。

俺はエリナさんを呼んでニアーナ様を慰めて貰い、師匠が昔に同じ症状の人を診察して死なせてしまった事。そして原因を調査して瘴気を発する小石が見つかったことを説明した。

瘴気に対抗するために魔力を流して症状を確認したのがさっきの現象と説明し、方法は体を割いて小石を取り出すしかない事を伝えた。


この世界にはまだ麻酔が無いため体を切るのも我慢して貰うしかないのだ。

ニアーナ様に出来る限り小さく切り、小石を取り出した後すぐにポーションで傷を治すことを説明するもニアーナ様は頭を振り拒否を示した。

このままだと確実に死に至る事を説明するも聞き入れなかった。

さすがに許可も無く貴族様に傷をつける分けにもいかず、どうしようかと悩んでいると小さい声が聞こえてきた。


「・・・や・・やって・くれ・・・」


ん?俺はその小さい声がどこから発しているのか辺りをきょろきょろと見回すとベッドに横たわるゴレリアス様が薄っすらと目を開けてこちらに話しかけていた。


「このまま・・だと、死ぬんだろ・・・い、医者も匙を・投げたのだ・・私はニアーナを信じる・・・」


ゴレリアス様はそういうとニアーナ様に目線を合わせて頷くとまた目を閉じた。

それを見たニアーナ様は目に涙を溜めて頷き返すと俺の目を見てから「お願いします。」と頭を下げた。


俺は「はい。」と答えてからお手伝いしてくれる人を集めて貰った。

麻酔も無い状態で胸の辺りを切るため痛みで暴れない様に体を押さえるようにお願いし、新品のナイフだったが火にかけて消毒してから小石のある場所を一思いに切り裂いた。

想定通り血が噴き出すと「ひっ!」とニアーナ様が小さく悲鳴を上げるも手を握り締めて耐えていた。

エリナさんはニアーナ様の手を握って慰めている。


俺は血が顔につくも意に介さず片方の手で薄っすらと魔力をエコーの様に流しながら瘴気を発する小石の位置を確認してピンセットの様な器具を突き入れる。

慎重に他の臓器を傷つけないようにしながら作業を進めるがやはり物凄い痛みがあるのだろう。

ゴレリアス様が呻きながらも体は最小限の動きに止めている。素晴らしい意思の強さだ。


時間にして1分も経っていないと思われるが全員が集中しており小さな呼吸音でさえ大きく聞こえてくる。そんな中で俺はしっかりと小石を掴みゆっくりと引き上げる。

暗い色を称える小指の第一関節位の大きさの石が取り出されると俺はすぐにポーションを振りかけ傷口を治す。


ゴレリアス様の傷口は治ったが治療中に体力を使い切ったのだろう。治療が終わると同時に気絶するように意識を失った。

しかし、その寝息は先ほどとは違い規則正しい寝息を立てていた。


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