商業施設
お好み焼き屋を開店して10日。今日は用事があってお好み焼き屋のお手伝いはお休みです。
お好み焼き屋は2~3日で落ち着くかと思ったら噂を聞きつけた大通りから遠い場所に住んでいる人々も集まっているらしい。
また、お好み焼きを食べて気に入った人がリピーターになり日が過ぎる程に人が増えて行っている。
俺は急遽ギルドにお手伝いと言う名のアルバイト募集をかけて貰い人員を増やしたのだが、それでも追いつかない状況になっていた。
お手伝い募集の条件には料理が出来る事と、接客が出来る事だけだったので多数の応募があったらしい。
ギルドでお手伝い募集業務を担当してくれたユミレちゃんは多数の応募者の中からある程度人員を整理して俺に報告してくれる事になっていたため物凄く忙しく、お手伝いが決まった後にユミレちゃんがパンケーキを食べながら俺に愚痴をず~っと言い続けた。
本当に申し訳ない。
お手伝いが増えた事でお店を担当しているメンバーが休憩を取れるようになったため初日よりはマシな状態になっている。
しかし、状況的には少しマシな程度で根本解決にはなっていなかった。
そこで前からギルドに相談していた商業施設としての活用を進めるために俺はギルドに来ていた。
「ユミレちゃんこんにちは。前に相談していた件が進められると聞いて来ました。」
「あ、シュンさんいらっしゃいです!この間はパンケーキごちそうさまでした!」
そう。なんと事あるごとに受付嬢3人衆にはパンケーキを要求されているのだ。
受付嬢3人の中で一人でも何かあると全員にパンケーキをご馳走しなければいけないルールになったのだ。
いつの間にかね・・・。
「いえいえ、こちらこそお手伝いの件では大変助かりました。多少ですが店員に余力ができました。」
「それは良かったです!では、商業施設の件での話し合いという事でギルドマスターの元へご案内致しますので私について来て来て下さい。」
ユミレちゃんはそう言うとギルドマスターの元へと案内するために受付の奥へと案内していく。
受付奥の階段を上がり二階へ行き廊下の奥へと歩いて行く。どうやら突き当りのあのドアがギルドマスターの部屋っぽいな。
そう思って廊下を歩いて行くと途中でユミレちゃんが立ち止まった。
ん?と思ったら立ち止まった所の左側にあるドアをノックした。奥のドアじゃないんかい!と心の中でツッコミを入れているとユミレちゃんが「シュンさんをお連れしました。」と声をかけた。
ユミレちゃんの声に反応するように「どうぞ」と部屋の中から聞こえてきた。
ユミレちゃんは部屋の中から返事が聞こえるとドアを開けて中に入って行く。
俺はユミレちゃんについて部屋の中に入ると白い髭を生やしたおじいさんが対象の書類が乗った机の上に座っていた。
どうやらあの人がギルドマスターなのだろう。
俺の中でギルドマスターは筋肉モリモリマッチョマンか出来るオフィスレディの様な人のイメージだったのでしわしわなお爺ちゃんが居てビックリしていた。
「ふふふ。ワシの様な爺がギルドマスターでビックリしたかい?」
俺は初めて会うギルドマスターに失礼な態度を取っていたのに気づき姿勢を正した。
「これは失礼しました。ギルド員のシュンです。この度は商業施設の件でご協力頂けるとの事でありがとうございます。」
「いやいや、こちらこそ商業施設の件に噛ませてくれて有難いよ。屋台をやっている者たちに屋根のある場所を提供してくれるだけで喜ばれる事じゃろうて。」
俺たちは簡単に挨拶して商業施設の運用について詳細を詰めて行く。初めて会ったギルドマスターはハーチェスさんと言い商業施設の様な事は初めて運営するが今まで海千山千の難事を解決してきた古強者で細々したことは考えてあり案を作っていた。
俺はハーチェスさんが作った案の詳細を聞き問題点を詰めて行く。のだが、問題点が一個も見つからない。
施設を提供する俺たちの利益とギルドの利益、施設に入る屋台の人たちの利益が考えられており誰一人として損をしない案が出されていた。
お爺ちゃん侮りがたし・・・。
商業施設に入る屋台はギルドに申請してクジで当たりを引いた人が場所決めのクジ引きへと進む。
クジで順番を決めて自分が入る店舗を決める。
店舗は30日間使う事ができ銀貨5枚が使用料となる、5枚のうち2枚がギルドの取り分となり残り3枚が俺の取り分となる。
商業施設には30店舗入ることが出来るため、最大で一月銀貨90枚手元に入ることになる。
商業施設には毎日水が汲みあがられ施設全体へと流れているため自由に使う事が出来るようになっている。
火を使う事も出来るが火を焚く燃料は屋台の人任せである。
また、火事を起こした場合は火事を起こした人の責任となり、鎮火に掛かった費用と施設の修復にかかる費用が請求されるため十分に注意するようにギルドから通達されている。
使用上の注意としては当たり前の事ばかりのため問題ないだろう。
俺はギルドマスターから提案された内容に問題がないことを確認したため何時から開始するかの相談に入った。
ギルドとしては案内を出してから受付を開始するまで3日かかるという話だった。
こちらの施設は完成しており、何時でも入って貰う事が出来る様になっているため3日後で問題ないと回答した。
俺とギルドマスターは握手を交わして部屋を後にした。
俺をギルドマスタールームへ案内したユミレちゃんは俺が疑問に思っていたことを教えてくれた。
「シュンさんも緊急依頼の時にギルドマスターが出てこない事に疑問を持たれていませんでしたか?
今日会ってご理解頂けたと思いますが、ギルドマスターはもうお歳を召されており前線に出る事が出来ません。
しかしあの通りルール決めや仕組みの構築、人の動かし方で他の追従を許さない程優秀な為、
本人が辞職をしたいと思ってもギルド本部のお偉方が許してくれないらしいのです。」
「なるほど。ハーチェスさんはギルドマスター職を辞したいのですが、あれだけのリーダーシップを発揮されるとギルドとしても易々と手放せないと。」
「そうなんです。このギルドもギルドマスターがいるから回っているようなものですので、私たちもギルドマスターの体調には特に気を使っているんです。」
「確かにお歳を召されてるので健康に注意が必要ですね。そうだ!前に健康のために栄養ドリンクを作ったんだけど良かったらプレゼントしますが。」
「栄養ドリンクって何ですか?」
「そうか!栄養ドリンクって言葉自体が無いのか。う~ん。体に良い成分を集めたもので、飲みやすい様に味を調整した飲み物です。前にうちに来た時にパンケーキと一緒に出したフルーツ味の飲み物に近いですね。」
「あー!あの美味しかった飲み物ですか。それで体に良いと。ふむふむ。シュンさん!宜しければ私の分も一緒にいただけますか!」
おぉう!サラッと何気なく自分の分も要求するこの技術、この子も侮れないなぁ~。
ここは前世も含めると結構な人生経験をしているのでユミレちゃんの希望を叶えてあげるとしますか。
「了解。ユミレちゃんの分も作ってくるね。3日後に募集が掛かるのでその時に持ってくるよ。」
「ありがとうございます!楽しみに待ってますね!」
俺はユミレちゃんに別れの挨拶をしてギルドを後にした。
その後、お好み焼き屋へ行き状況を確認したら何時も通りに沢山のお客さんがいたので裏に周り子供たちに挨拶をしてから手伝いの準備をして仮設店舗でお好み焼きを作るのを手伝う。
最低でも後3日はお手伝いをする必要があるだろう。エリナさんは朝からこちらに来ており、午前中は開店の準備を手伝い午後からは小さい子供たちの相手をして貰っている。
お好み焼き屋の手伝いをしないのは、開店当初手伝っていたのだが、エリナさんが焼いたのが食べたいと言い出す奴が現れ、それが広がってしまったからだ。
その為、エリナさんは裏方の手伝いに徹して貰っているがエリナさんは子供たちが幸せそうにしている事に対してとても嬉しそうにするのである意味良かったのだろう。
そんな日々を過ごし3日経ち、ルクミネスさんが朝お店へと行くと外からガヤガヤ声が聞こえ表通りに出ると荷物を抱えた人が大勢いた。
何事かと話を聞こうと外に出るとギルド職員のユミレさんが立っていた。
「おはようございます。シュンさんはお見えでしょうか?」
「おはようございます。シュンさんはまだ来られておりませんが・・・。」
「そうですかぁ。シュンさんからお話聞いていませんでしょうか?本日から商業施設に露天の方が入られる事になっているのですが。」
「あっ!伺っております。あの方々がお店を開かれるのでしょうか?施設の扉を開けますが案内は必要でしょうか?」
「あ、開けて貰えますか。施設の地図は頂いておりますのでこちらで案内致します。ギルドでもルールは伝えておりますのでご迷惑はお掛けしないと思いますが十分注意致します。」
「はい。承知しました。今から扉を開けますので皆様のご案内お願いします。私は他のメンバーに話を通しておきますので。」
ルクミネスはユミレちゃんにそう伝えると急いで施設の扉を開くカギを取りに走り出した。
数分すると施設の扉が開かれた。
ルクミネスはユミレちゃんに一礼すると奥へと入って行った。
その姿を目で追いかけたユミレはこれから大いに賑わうであろう商業施設が輝いているように見えたのだった。




