事後処理
ミノタウロスを倒した俺は近くで倒れている兵士たちの重症者を優先して保持しているポーションを飲ませて行き、手持ちが切れたので城門を潜って外に出た。
そこでは・・・何時の間にか城壁から降りて来ていたウィルシアさん達女性陣とギルデイさん達男性陣が所狭しと暴れまわっていた。
兵士やギルド員たちは複数人で一体の魔物を相手にしているのだが、うちの戦闘要員たちは一人で一体の魔物を相手にしていた。
しかも圧倒しまくって皆笑顔で切りまくっていた・・・。なんだろう?ストレスが溜まっているのだろうか?
少し待遇を改善しようと心に誓った。
エリナさんの姿が見当たらなかったので、城壁の上を見てみると傷ついた人々の手当てをしているようだった。
エリナさんも俺の姿を見つけたらしく小さく手を振ってきたので手を振り返した。
周りを確認しいると応援も不要そうだったので立ち止まって眺めていたら後ろから人が来る気配がした。
振り返って近づいてくる人を見てみると豪華な鎧を着て馬に乗った男が見えた。
馬に乗った男はギルデイさん達をみて唖然としながら馬に揺られてこちらに向かってきていた。
先導していた兵士が俺の近くで止まり豪華な鎧を着た男に何かしら報告をすると、豪華な鎧を着た男は馬を降りて俺に近づいてきた。
短い銀髪で白髭を蓄えた鋭い鷹の様な目をした渋い感じのおじさんが話しかけてきた。
「ごほんっ!君がミノタウロスを倒したシュン君かね?」
俺は誰か分からないが豪華な鎧を着ている事から貴族なのだろうと思い一応丁寧に返事を返すことにした。
一礼してから「はい。シュンです。」と返答して誰でしょうか?という顔をしておいた。
相手は俺が疑問に思っていることに気づいたのか何者かを名乗りだした。
「あ~、すまんな。私はここコッフェロ領の領主。ラスプ・フォン・コッフェロ辺境伯だ。」
なんとここの領主様だったようだ。昔エリナさんを連れ去ろうとしたジェガンみたいな名前の貴族の様に高圧的な物言いをしていない分まともなのだと思いたい。
「辺境伯様でしたか。平民の為この様な場での礼儀作法を知らないため失礼を致しました。」
「うむ。この様な戦場での礼儀など気にせずとも良い。」
うむ。心が広い方の様で安心した。しかし、何しに俺の元へとやってきたのだろうか?
城門の外ではまだ戦闘中なのだが、この領都のトップである辺境伯様が共を連れているとは言えこんな所まで来るとは兵士たちを慰撫しているのだろうか?
俺が辺境伯に一礼してから顔を上げてからそのような事を考えていると何も言わない俺が困惑していると思ったのか辺境伯様が話始めた。
「そう言えば君は蟲の谷からジャインビーの蜂蜜を採取してきたシュン君かね?」
「はい。そうです。」
「うむ。ギルドから私に報告が来た時にまさかとは思ったが実物を見て驚いたよ。あの依頼はとある貴族の要望だったが中々達成されず私にも直接話が来ていて困っておったのだよ。助かった。」
「いえ、ギルドの知り合いからお願いされただけですから。」
なるべく辺境伯に失礼にならないように回答しようとしたつもりだったが、ちょとした知り合いに回答する感じに返事してしまった。
喋った後にそのことに気づき「しまった!」と思いながらこっそりと辺境伯の顔を伺ったが気にしていなさそうだった。
ただ、辺境伯の後ろに侍っている配下の方たちの顔が恐ろしい事になっていたのでそっと目を反らせてしまった。
俺の態度に気づいた辺境伯はニッとした後、俺の視線の先にいる家の戦闘要員達に気づきポカーーンと口を開けて固まってしまった。
「な、なんだあの者たちは!魔物達を相手に一対一で圧倒しているではないか!」
辺境伯が叫ぶと配下の者たちも辺境伯の視線の先を見て驚愕してしまった。
暫くギルデイさん達の戦いぶりを眺めてから配下の者に小声で指示した後、もう一度俺に向かって話しかけてきた。
「シュン君、ジャインビーの蜂蜜の件と今回のミノタウロス討伐の件で一度話をする時間を取って欲しい。ギルド経由で日程を知らせるのでハイエルフ様と共に訪問してくれぬか?」
おおぅ。貴族様から直接訪問しろと命令がきてしまった。一平民に取っては断り辛いものだなこれは。。。
うわぁ~。礼儀作法などブロンさんに聞いておかないと失礼なことを仕出かしそうだ。
俺が頭の中で色々と考えていた様で返答がない事に辺境伯の側近たちが苛立ったのか「んっんっ」と音を鳴らして返答を催促してきた。
それに気づいた俺は、「はい。なるべくギルドに顔を出して知らせをお待ちします。エリナさんも多分一緒に来てくれると思います。」と答えた。
俺の返答を聞いた辺境伯は馬の元へと戻り乗馬すると「今度は落ち着いたところで話をしようぞ!」と言うと前線で戦っている兵士たちの方へと走り去っていった。
ふ~、この領で一番偉い人にイキナリ話しかけられるのって、前世で大企業の社長に話しかけられた時の緊張に似ていたよ。
まさか生まれ変わってこんな思いをするとは思わなかったよ。ミノタウロスと戦うより緊張したわ。
暫くその場で戦場を見ていたらエリナさんが城壁から降りてやってきた。
「シュンさん!」
俺は声のした方へ振り向くと手を振りながら小走りでやってきたエリナさんに手を振り返し、俺の元に到着した時に「お疲れ様です。怪我はありませんか?」と声をかけた。
「はい。大丈夫です。シュンさんミノタウロスと一人で戦ったと聞きましたがシュンさんこそ怪我はしてませんか?」
「はい。私も怪我は無いです。ギルデイさん達もあそこで暴れまわっていて怪我しないか心配だったんですが問題無さそうで安心しているところです。」
「皆さん無事なんですね。安心しました。でも。。。ウィルシアさん達もあそこまで暴れているのってストレスでも溜まっているんでしょうか?」
ギクッ!あの戦闘を見てエリナさんも一緒の事を感じたようだ。やっぱりストレスを溜めているとみるのが正しいのだろう。今度しっかり話し合ってストレス解消の方法を検討しようと再度心に誓った。
エリナさんと共に周りの状況を確認していると魔物の数が残り数体になっており、ギルデイさん達も自分たちが担当した魔物を倒したので俺たちの元に戻ってきた。
「皆さんお疲れ様でした。」
「「「「「「ただいま戻りました。」」」」」」
「皆さんが無事で安心しました。緊急依頼での魔物の討伐はギルドで一元管理されて参加者全員での分配になるらしいです。今回は兵士の方々とも一緒に戦ったのでギルドと領主様が話し合ってからになるので今日はもう家に戻りましょう。ブロンさん達も心配していると思いますので急いで戻って美味しいものでも食べましょう。」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
俺は戻ってきた皆に簡単に慰労してから館に帰ろう領都へ入って歩いていたら、どこからか名前を呼ばれているのが聞こえてきたので周りを見渡すとアリテシアが追いかけてきていた。
「シュンさーーーん!まってーーーー!」
俺たちは立ち止まってアリテシアさんを待っていると息を切らせて「はぁはぁ」言いながらやってきた。
膝に手を置いて息を整え、少し落ち着いたのだろう顔を上げて深く息を吐いた。
「大丈夫ですか?アリテシアさん。」
「はい、申し訳ありません。急いで追いかけて来ましたので息が上がってしまいました。」
「急ぎの要件ですか?」
「あ、はい。シュンさん方が今回討伐されたミノタウロスの件でご確認させて頂きたく思いまして。」
「ミノタウロスですか?」
「はい。今回シュンさんがミノタウロスを討伐されたのは何名もの兵士の方やギルド員が見ております。今回の様に領都へと魔物が攻めてきた時に討伐された魔物は一度全てギルドが査定してから分配の運びになるのですが皆さまが討伐された高ランクの魔物全てと中ランクの魔物の数が多すぎて平等に分配すると皆さまが相当な損してしまいます。辺境伯様とギルドはその事に頭を痛めておりまして。」
なるほど、確かにミノタウロスとデスバード全てを倒したのはうちのメンバーたちだ。
確かに平等に分配となると討伐量に対して相当な損をする計算になるだろう。その事に頭を痛めているとはエリナさんがハイエルフなので怒らせてしまう事を恐れているのだろう。
まあ、そもそも前線に行くときに話を聞いていたので気にしないのだけどね。
ただ、ギルデイさん達には特別ボーナスを出す必要はあるだろう。ストレスも溜めているみたいだし・・・。
「あ~、その点は問題ありませんよ。そもそも前線に行く前にアリテシアさんに参加条件を聞いて納得してますので特に気にせずに平等に分配するようにして下さい。」
アリテシアさんは俺の回答を予想していたのだろう。結構長い付き合いになっているので俺の考えていることが分かってきているのだろうか?
「シュンさん、エリナさん。皆さまありがとうございます。ギルド職員として皆さまにお礼を申し上げます。」
アリテシアさんはそう言うと頭を下げた。
俺たちは各々「いえいえ」「気にしないで下さい。」など返事をすると、アリテシアさんは「そうだ!」と思いついたような顔をした。
「シュンさん。今回のスタンビード鎮圧のお祝いをしませんか?スレインとユミレを連れて慰労させて頂きますので!」
おぉ~。ギルド職員の美人受付嬢達に慰労してもらえるのはご褒美だろう。
そう考え俺は「わかりました。」と返事をしてから折角お祝いをするのなら美味しい物を準備して前回喜んでもらえたパンケーキなども準備しておこうかなと考えていたらアリテシアさんが「ニヤリ」とした様な気がした。
まさか、お祝いと言いつつパンケーキを狙っていたのか・・・?
もしそうであるならば女性って怖いな・・・。




