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ペンタグラム  作者: はるひぶ いえん
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スタンピード 1


「糞!くそ!くそ!俺様は貴族だぞ!その俺様が何故我慢せねばならん!くそがぁ!」


シュンとエリナが辺境伯領で館を買った時に来た男爵家の次男であるジャガン フォン デキンバは荒れていた。

シュンに追い返された後、報復を行おうとしたが辺境伯の指示により密かに動いていた影の者によって失敗していた。


影からの報告を聞いた辺境伯はジャガンに対し直々に手を出すことを禁止されていた。

辺境伯の前に連れられたジャガンは顔面蒼白になりガタガタを震えながら了承したのだった。

それから暫くは辺境伯からのプレッシャーに押しつぶされ部屋に引きこもっていた。


鬱憤を貯め続けたジャガンの我慢は限界突破していた。

自分の思い通りにならないエリナを恨み、自分に攻撃したシュンを殺す方法を考え、手を出すことを止めた辺境伯を憎んだ。


そんな日々を過ごしていたジャガンに部下から報告が入った。


「ジャガン様、イルブロ侯爵様から使者が参りました。」


「やっと来たか!爺は相変わらずやることが遅い!その使者とやらをさっさと連れてこい!」


ジャガンは部下に指示をだすと部屋の中をイライラと歩き回った。

少しして扉をノックする音が聞こえ、「入れ!」と言うと部下の男と一緒にフードを深くかぶった顔が良く見えない者が入ってきた。

フードを被った男は一礼すると侯爵家からの手紙を差し出した。

ジャガンは手紙を受け取り中を読むとニヤリとした顔をしてソファーにドスン!と座り込んだ。


ジャガンはフードの男に対面に座るように言い、不敵な笑みを浮かべたまま喋り始めた。


「おい、お前は本当にダンジョンを活性化させる方法を知っているのか?爺からの手紙には帝国の研究者とあり、その研究内容から危険分子として放逐されたとあるが・・・」


「はい。その通りです。私はダンジョンの研究をしておりダンジョンと魔物の関連を調べた結果、ジャガン様が望む事を実現することが出来るでしょう。」


ジャガンはフードの男と夜遅くまで話し合い、次の日フードの男は大金を手に辺境伯領を後にした。


フードの男が去ってから数日後、ジャガンは祖父の侯爵領へ行くことを父である男爵に伝え数人の部下を連れ辺境伯領を後にした。

ジャガンは侯爵領へは向かわずに、辺境伯領の近くで一番大きなダンジョンへ向かった。


ジャガンが去ってから数十日後、ギルドにダンジョンの様子がおかしい事が伝えられた。

辺境伯領には3つのダンジョンがあり、その中で一番大きなダンジョンにいる魔物の数が増えてきているという報告だった。


ギルドはギルド員に対して調査依頼を発行し、詳細な情報を得るために動き出すと同時に辺境伯へ報告を上げるのだった。



「北西のダンジョンの魔物が大量発生しているという報告があった。兵士たちに警戒態勢を取るように指示を出せ。ギルドからの報告を待つだけで無く調査部隊を派遣するんだ。」


「はっ!」


辺境伯はギルドから報告が入るとすぐに兵へ指示を出すと共に自ら情報を集める様に指示をだした。

これが辺境を任させる所以であり他の貴族と異なり判断の速さと指示の的確さが群を抜いていた。


しかし、ダンジョンにいる魔物の活性化が辺境伯の予想を超えた規模であったことで後手に回ることになるのであった。


北西のダンジョンは辺境伯領から徒歩で3日ほどの距離にあった。

ダンジョンの近くには小さな村があり、ギルド員がダンジョン攻略の拠点とするため他の村に比べて裕福でありダンジョン近くという事で防衛のために土で出来た壁を設置してあった。

ギルドに異変の報告が入ってから2日後、ダンジョンから魔物が溢れ出し村は魔物に囲まれあっという間に崩壊した。


ギルドが派遣した調査隊と辺境伯が派遣した偵察部隊は、辺境伯領に近づく魔物の群れを確認するとすぐに大急ぎで領都へと引き換えし魔物が迫ってきている事を報告するのであった。


□■□ □■□ □■□ □■□ □■□ □■□ □■□ □■□ □■□ □■□


北西のダンジョンの様子がおかしいとギルドへ報告が入った頃、シュンは錬金術の授業を行っていた。

エリナさん、シュテーナちゃん、ルールチェちゃん達はほぼ完ぺきにポーションの作成が出来る様になり、ランク3レベル相当の実力を持つと判断できるので錬金術ではないが魔石に魔法陣を刻み込む方法を教えている。

これは錬金術とは違うのだが、錬金術で使う材料となるため自分で自作できる方が良いというのが師匠からの受け売りだ。


この魔石に対して魔法陣を刻み込むというのが思いのほか難しい。

まず魔法陣をしっかりと覚え込み魔石の真ん中あたりに自分の魔力を使って削っていくんだが削ることに集中しすぎると魔法陣を間違えるし、魔法陣を意識しすぎると削るのに失敗する。

もう何度も何度も練習するしかないのだが、基本的に何でも器用にこなすエリナさんでさえ苦戦していた。

魔力を使えるようになって日の浅いルールチェちゃんは魔石の中を削るの自体に苦労していた。


練習方法の一つとして自分の目の前に小石サイズの魔力を生み出し、その場でグルグル回転させる方法を教えた。

この練習方法を思いついたのは自分が魔法を使っている時にどの位置から魔法が放たれているのだろうと疑問に考えた時だった。

実際手のひらから炎の球を打ち出すファイアーボールなども手のひらの前すぐだとその熱で手が火傷だらけになるはずで実際にはそうなっていない。

では、そうなっていない理由を調べていたら手のひらより少し前の方で炎が生み出されていた。

疑問に思った俺は手のひらを上に向けた状態で何も考えずにファイアーボールを出してみると自分の顔の前辺りで作成された。

目を凝らしてみていたらどうやら俺は無意識に安全圏と思われる位置に魔力を集めて現象を起こしていることが分かった。

という事は魔力自体は自分の思った位置に集める事で現象が発動できるので、例えば盾などの後ろに隠れた状態で盾の前に魔力を集めて魔法を発動すれば安全なんじゃね?と色々試行錯誤していた時に思いついた方法だった。

で、盾の後ろから魔法の発動は出来なかった。理論的な事はわからなかったが目視出来ないと現象を生み出すことが出来ないっぽかった。


そんな日常を過ごしていたらレイソンさんが報告にやってきた。


「シュン様、ギルドの方から緊急を知らせるベルがなっております。如何致しましょうか?」


「緊急ベル?何があったんだろう?とりあえず、俺とレイソンさんで行ってみましょうか。エリナさん達はここで練習をしていてください。話を聞いてきます。」


「私も行きます。」


「いえ、話を聞いてから戻ってくるのでそれまで待っていて下さい。緊急ベルだとしてもすぐに何かあるわけではないと思いますので。」


エリナさんを説得してからレイソンさんと一緒にギルドへと向かった。

ギルドには沢山のギルド員たちがやってきていた。俺とレイソンさんはギルドへと入ると職員たちがドタバタと走り回っていた。


少しの間待っていると副ギルドマスターのルシティベルザさんが壇上に上がり、北西のダンジョンの様子がおかしいという話があり辺境伯から緊急依頼が発動される可能性が高いためギルド員たちは呼び出しに何時でも答えられる様にする様にする事という話であった。


ルシティベルザさんがギルド員たちへ連絡を行った後、俺を見かけたルシティベルザさんは副ギルドマスターの部屋へと連れていかれた。


「忙しい所すまんな。シュン、今回北西のダンジョンの魔物が急激に増えているらしくスタンピードになる可能性が高いと考えている。それを考慮して今ギルドでは出来る限りの対策を行っているがどれだけの魔物が出てくるのか想像がつかん。そこで出来る限りポーションを集めておきたい。協力してくれないか?」


「なるほど。分かりました。今から戻って皆で素材がある分だけ作ってきます。」


「すまんな。受付には話を通しておくので何時でも持ってきてくれ。今日からギルドは一日中開いておくのでな。」


「了解。」


俺はルシティベルザさんに返事すると部屋を出てレイソンさんと一緒に館に戻りブロンさん達を集めてギルドでの話を伝えて厳戒態勢を取るように指示した。

その後、移動ドアを通って拠点へ行きエリナさん達にギルドでの話を伝えて皆でポーション作りを開始したのであった。

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