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ペンタグラム  作者: はるひぶ いえん
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逃げないで

「はぁ、はぁはぁ。ま、まって・・・」


「はぁはぁ。待ってっ・・・せめてあと一口っ!」


ガバッ!


私は夢から覚めた事を理解し、布団を捲り上体を起こした。

体がぐっしょりと濡れている事に気づいた。どうやらあの夢を見た事で汗をかいたようだった。

ふ~。まさかお昼に食べたスイーツを夢にまで見るとは思わなかった。

でも、アリテシア先輩に一緒に連れて行って頂いた所で食べたスイーツは今までに食べた事がない天にも昇る美味しさだった・・・。



あれは数日前の出来事でした。

その日、最近ず~っとアリテシア先輩が放出していた暗黒のオーラが嘘の様に消え去っていました。

朝礼の時にはまだ纏っていたはずですが、お昼休みが一緒になった時には何時もの可憐な笑顔をした先輩に戻ってました。

私は勇気を出してアリテシア先輩に話しかけました。


「先輩何か良い事があったのですか?」


「ん?あ、ユミレさん今からお昼?一緒に食べましょ。」


「はい!で、何があったんですか?」


「うふふ。今朝、高難易度クエストを依頼していた方が無事に戻られたの。それが嬉しくてね!」


「そうなんですか。それは私たち職員としても有難い事ですね。」


「そうなの。その高難易度クエストはギルドに依頼があったんだけどもう何日も受けてくれる人もいないクエストだったの。それが無事に達成された事もとてもありがたかったわ。」


「その高難易度クエストって何だったのですか?」


「ん?そ・れ・わ~。ジャインビーの蜂蜜採取よ。」


「ええええぇぇぇぇっぇぇぇえぇっぇぇええええ~!あ、あのクエストが達成されたんですかぁああああ!」


「ええ。そうよ。最近私が暗かったのはそのクエストを受けてくれた方が中々戻られなかったからなの。その方は蟲の谷で過ごされた事がある人なので私はあまり考える事もせずに受けて頂ける様にお願いしてしまったの。それで中々戻られなかったので自責の念に駆られていたの。」


あ~、あの暗黒オーラはそれだったのかぁ。受付に座ってましたけどあのオーラで迂闊に近づけませんでしたから。

何度ギルド員の方にクレームを頂いたことか・・・。

でもアリテシア先輩も元に戻られたようなので一安心です。


お昼はアリテシア先輩のお勧めのお店で食べたのですが、パンが普通より柔らかくてとっても美味しかったです。

その日はアリテシア先輩の雰囲気が戻った事でギルド内も心なしか明るかったです。

そのせいかわかりませんがギルドの業務がサクサクと進み何時もより早く上がることができました。

業務を片付けて制服から私服に着替えていると仕事が終わったアリテシア先輩とアリテシア先輩の同期のスレイン先輩が業務を終えたのか着替えるために部屋にやってきました。


「あら?ユミレさんお疲れ様です。」


「お疲れ様です。アリテシア先輩、スレイン先輩。」


「お疲れ様。今日も頑張ってましたね。」


「はい!ありがとうございます。スレイン先輩!」


「ふふふ。ユミレさんの元気は周りを明るくするわね。」


スレイン先輩の言葉で私は照れてしまい顔が赤くなっていたと思います。

スレイン先輩は大人の女性で落ち着きがありアリテシア先輩とは違う美しさがある女性でギルド内でも人気の受付嬢です。

私もいつかはスレイン先輩の様になりたいと憧れてるのは内緒です。


「あ、そういえばシュンさんからお食事をお誘い頂いたんですが、スレインとユミレさん一緒に行きませんか?シュンさんから知り合いもお連れ下さいと言われてて。」


「シュンさんって、エリナ様のお付きの方の?」


「う~ん?どちらかと言うとシュンさんのお付きでエリナさんがおられるように見受けられるんだけど。そのシュンさんよ。」


「あら。あの美しさの秘訣がわかるかもしれませんね。私はご一緒させて頂きたいわ。」


スレイン先輩はエリナさんの美しさの秘訣が知りたいようです。確かにあの美しさは女性の私から見ても惚れてしまいますからね。

そんな事を考えていたら返事を忘れていたらしくアリテシア先輩が私の顔を見つめていました。


「あ、私もご一緒したいです!」


「うん。皆で休める日を調整しましょう。」


その後、私たちは私服に着替えてスレイン先輩のお勧めの店で夕食を食べながら休みの日を調整しました。


そして休みの日、エリナ様とシュンさんがお住まいの家へ3人でお伺いしたのですが何と執事さんにお出迎えされました!

さすがハイエルフ様がお住まいの所です。庭のお手入れなど完璧です!

渋い執事さんの案内で館へ入るとエリナ様とシュンさんのお出迎えがありました。

相変わらずエリナ様の笑顔は眩しく感じてしまいます。同じ女性として何が違うのかいつか研究したいと思ってます。


「ようこそおいで下さいました。大した物はございませんが楽しんで頂ければと思います。」


「こちらこそ、お誘いありがとうございます。本日はシュンさんが新しく発案されたスイーツと聞き楽しみに参りました。」


「アリテシアの同期でスレインと申します。お見知りおき下さい。そして本日は私も一緒にお誘いいただきありがとうございます。」


「あ、わ、私はユミレと申します。アリテシアさんとスレインさんの後輩にあたります。本日はアリテシア先輩のお供としてお邪魔させて頂きました。よろしくお願いします。」


私は焦りながら挨拶をしたせいかカミカミで、それを勢いで誤魔化して頭を下げました。

エリナ様もシュンさんも笑顔で「よろしくお願いします。」と返され、その後食堂へ案内されました。


食堂で席に案内され、椅子に座るとメイドさんがすぐにお茶を配膳されました。

貴族様でもないのに執事さんとメイドさんの動きが半端ないです。これほど技術を持った執事さんとメイドさんなんてよっぽど歴史ある貴族様か高貴な貴族様以外いらっしゃらないほどです。

さすがハイエルフ様にお仕えする方たちです!


お茶を飲みながら談笑していると何とも甘い香りが漂ってきました。メイドさん達がワゴンを押しながらやってきました。

あれが本日のメインであるシュンさんが発案したスイーツです。


「はわぁ~、とても美味しそうな香りがしますぅ~。」


「ええ、とっても良い香りがしますね。」


私たちはメイドさんが持ってこられたワゴンに目が釘付けになってました。

私たちの前に見た事も無いスイーツが配膳されました。何でしょう?この茶色い皿みたいな物はなんなのでしょう?

白い四角いものがちょこんと乗っています。

その後、ドロリとしたものが入った小さいコップ?が置かれました。

3人ともそれを眺めているとシュンさんから説明がありました。このスイーツはパンケーキと言うそうで、上に乗っている白い四角いのがバターで、ドロリとしたものが蜂蜜だそうです。

その蜂蜜をパンケーキにかけて食べるそうです。


「この蜂蜜ってもしかして・・・」


「ええ、ジャインビーの蜂蜜ですよ。沢山ありますからいっぱい食べて下さいね。」


「・・・は、はい。」


アリテシアさんが何とか答えてくれましたがスレイン先輩と私はジャインビーの蜂蜜と聞いて固まってしまいました。


「ささ、パンケーキが暖かいうちに食べて下さい。冷えてもそれなりに美味しいですがやはり出来立てが一番ですから。」


シュンさんから言われるがまま震える手でジャインビーの蜂蜜をかけ、ナイフとホークで一口サイズに切り分け口に運んだ。

パンケーキが口の中にはいると同時に私は固まってしまった。


その芳醇な香りと甘さが口いっぱいに広がり、パンケーキの歯触りがとても優しく私たちが普段食べているパンとはまったく違うものであっという間に口の中で溶けるように無くなってしまいました。


口の中からパンケーキが消えると物凄い悲しみが沸き上がりましたがハッと気づき先輩方を見ると私と同じ様な反応をしてました。

私は続けて新しく切り取り再度口に運ぶと先ほどと同じ様な幸せがやってきました。

それを繰り返していたらあっという間にパンケーキが無くなってました。

パンケーキが無くなった皿を悲し気に眺めていたようで、シュンさんがお替わりは如何ですか?と仰って頂けると私が答える前に、アリテシア先輩とスレイン先輩が「「頂きます!」」と即座に返答していました。

私も負けずに「お願いします!」と返事しましたとも!

そんな事を繰り返して何とパンケーキを4回もお替わりしてしまいました・・・。ダイエット頑張らないと・・・。

でも、ダイエットとパンケーキを比べればパンケーキを取るのは間違いありません。本当に衝撃的なスイーツでした。


私たちは食べ過ぎなことに気づきながらも辞められませんでした。

その後、色々な話をしましたが頭の片隅にはパンケーキの事が離れませんでした。


夕食もご馳走頂いてから帰る事になったのですが、お土産にジャインビーの蜂蜜を頂けるとの事。

しかし、持って帰るのが怖いと相談すると護衛の方を付けて頂き無事に帰宅することができました。


何と幸せな休日でした。その幸せなまま今日は眠りに落ちたのですが冒頭の様に夢にまでスイーツが出てくる始末でした。

次の日、眠気眼でギルドに出社するとアリテシア先輩とスレイン先輩も同じように寝不足の様でした。

後で聞いたところ、私と同じくスイーツの夢を見て夢の中で追いかけていたらしいです。


シュンさん、何て恐ろしいものを作り出したのでしょうか・・・。

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