マンドラゴラ
「えぇ、それは・・・トレントでは無くマンドラゴラと報告がきました。」
「マンドラゴラですか。」
「はい。マンドラゴラは発見数が少なくて討伐情報も集まらず、今全てのギルドにマンドラゴラの情報を集めて貰っていますが全く集まっていなくて・・・」
そう言ってアリテシアさんは再度溜息を洩らした。
マンドラゴラは錬金術でも色々使い勝手が良い素材のため重宝するんだが、師匠曰く生息数が少なく手に入れた事も数回程度だと聞いた。師匠が手に入れたマンドラゴラは遠くの地で地面の上で干からびているのが届いた物らしく使える箇所が少なかったと愚痴を聞かされたものだ。
「そうだったんですね。アリテシアさん元気を出して下さい。ギルドに登録されている方が沢山いると思いますからマンドラゴラと戦った方もいると思います。すぐに良い情報が集まりますよ。」
エリナさんがアリテシアさんを慰めている。確かにギルドに登録している人は多いらしいのでマンドラゴラと戦った人もいるだろう。かく言う俺も。。。
「マンドラゴラは本体が土の中にいるから見つけにくいから大変ですよね。でも葉っぱの先端が少し黄色いのと蔓の付け根?生え際?も黄色いから少し注意すれば見つけれるから無理しなければ安全に狩れますからね。」
「えっ?シュンさん今なんて・・・?」
「ん?無理しなければ安全に狩れますよって言いましたが?」
「は?え?あ、あのシュンさんはマンドラゴラを狩った事があるのですか・・・?」
アリテシアさんは俺の言葉に困惑した様子で俺にマンドラゴラを狩ったのか聞いてきた。
「今そういったつもりですが?蟲の谷で師匠と一緒に過ごしていた時に見つけて、蔓に巻き付かれてビックリしながらも力任せに引き抜いたら「ぎゃあああ」って大声が響いて意識が刈り取られたらしく起きた時には凄い量の蔓に巻き付かれてたんですよ。で、また力任せに引き抜いたら声を聴いてを繰り返してたら近くにマンドラゴラが居なくなりまして。」
と笑いながら話をするとアリテシアさんとエリナさんが引きつった笑顔を浮かべていた。
「それを持って師匠の所に帰ったらもっと取ってこいと言われて、それから安全に取れる方法を色々試したら簡単に狩れる方法を発見したんですよ。」
と当時の経緯を話すとアリテシアさんが俺の襟を掴み揺すってきた。
「そ、それですよ。シュンさん私たちが集めている情報はそれなんです!」
アリテシアさんは興奮しているのか俺の頭が大きく前後してるのも気にせずガンガン揺すってくる。俺は次第に気持ち悪くなりながらも我慢していると見かねたエリナさんがアリテシアさんを止めてくれた。
「あ、シュンさんすみません。私たちの欲しい情報が今シュンさんからあっさりと出てきたので興奮してしまいました。」
そういってアリテシアさんは恥ずかしそうにしながら頭を下げた。
こんなにも頭を揺すられたのは前世の子供の頃依頼だろう。何年経っているかなんかわからないのは仕方ないな。
子供は加減を知らないし、善悪の判断がしっかり出来ていないから出来るのであって良い大人のアリテシアさんがしたのは本当に困っていたからだろう。
俺はグワングワンとしている感覚が収まるまで両膝に手を付きながら下を向いて耐えていた。数分すると揺れも収まってきて上体を起こすと心配そうにアリテシアさんが見つめていた。
「すみませんシュンさん。だ、大丈夫でしょうか?私、興奮してしまって・・・」
「ええ、ちょっとフラフラしてますが大丈夫です。時間がたてば元に戻りますから。」
俺の体って普通の人とちょっと違うと思っていたが、脳が揺れると普通の人と同じように気持ち悪くなるのがわかったのは良い発見だったな。調子に乗っていると思わぬ目にあうぞっていう教訓だな。
数分すると落ち着いてきたので「ふ~」と一息つきアリテシアさんにもう大丈夫です。と伝えるとアリテシアさんは申し訳なさそうに一礼した。
「申し訳ございません。職員としてありえない行動をしてしまいました。」
「気にしないで下さい。最近調子に乗ってたので気を引き締める良い機会でした。」
俺は手を振って気にしない様にと声をかけるとアリテシアさんは再度頭を下げてから真剣な顔でこちらを向いた。
「シュンさん、こんな事を仕出かしてお聞きするのは心苦しいんですがマンドラゴラを安全に狩る方法をギルドに提供頂けないでしょうか?」
「ええ、良いですよ?」
「そうですよね。魔物が安全に狩れる方法なんてそう簡単にご提供頂けるとは・・・えっ?良いですよ?」
「うん。別に良いですよ。マンドラゴラを狩る方法なんて大したことないですし。」
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇえええぇぇぇぇぇ!ほ、本当ですかぁ?マンドラゴラって錬金素材になるんですよね?シュンさんが独占出来る様になるんですよ?」
「ああ、マンドラゴラなんて蟲の谷行けばいっぱい居ますので必要になったら、そちらに狩りに行くので問題ないですよ。」
「シュンさんは蟲の谷へ行けるのですか?」
「はい。師匠と共に住んでましたからね。ジャインビーの巣にも行けますよ。」
「ほ、ほ、本当ですかぁ!ギルドでず~っと残っている依頼があるんですが、シュンさんのご都合が良い時に受けて頂けませんでしょうか?」
「ええ、何の依頼かわかりませんが受けさせてもらいますよ。」
「ありがとうございます。その依頼が達成されないことでギルドの信用が失墜してしまう可能性がありました。こちらがお願いしたのですが、無理はなさらないで下さい。」
「わかりました。まぁ、大丈夫だと思いますよ。さっきの件で気を引き締めたばっかりですし。」
そういうとアリテシアさんは顔を真っ赤にしながら「んっんっ!」と口を押えて喉を鳴らす。
「すみません。シュンさんマンドラゴラの討伐方法をお教え頂けるとの事ですので会議室の方へお越し頂けますでしょうか?ここでは不必要に情報が出回ってしまいますので。」
そういうとアリテシアさんは受付を他のギルド職員にお願いしてから俺たちを会議室へ案内する。
会議室で待つように言われたので、エリナさんと一緒に待っていると副ギルドマスターのルシティベルザさんと一緒にアリテシアさんが入ってきた。
ワゴンを引いてきておりお茶を出してから席に座った。アリテシアさんが席に座るのを確認するとルシティベルザさんが話始めた。
「シュン殿、アリテシアに聞いたがマンドラゴラの討伐方法をご存じだとか。そしてその情報をギルドに提供頂けると。」
「ええ。私の方法が最適かはわかりませんが普通よりは楽に狩れますよ。」
ルシティベルザさんとアリテシアさんは顔を見合わせて頷きあう。
「シュン殿、今回教えて頂ける情報は公に公開されることになります。しかし我々ギルドとしてシュン殿の狩り方が有効であることが証明された場合に報酬をお支払いします。これはギルドの規定として定められているものですのでご安心下さい。」
俺はどっちでも良いのでとりあえず頷いておいた。別に報酬が欲しいわけでもないし、効果的に狩れる可能性が高まれば錬金術士たちが素材としてマンドラゴラを使う機会が増えてレベルの高い錬金術師が増えるといいなと思っている程度だ。
錬金術士たちは師匠が昔に作った錬金術の本をベースに練習している。高レベルになればなるほど素材が効果になっていくし、師匠自身マンドラゴラを素材として使った事が殆どないと聞いている。また、その時に使った錬金術も高レベルに位置されているものだ。
並の錬金術士では使う事さえできないだろうが、たぶんエレナさんレベルだったら20パーセントの確率で成功するので錬金術のスキルを上げるのには持ってこいだろう。今回の緊急依頼で沢山売りに出されるといいな。
「では、シュン殿。狩り方を教えてくれるか。」
「はい。マンドラゴラは葉の先端が黄色く、また蔓の生え際も黄色くなっているので見つけるのが容易です。また固体で多少異なりますが大体蔓の長さが30メートル位です。その蔓は相手を逃がさないようにするために自分を中心に円を描くように伸ばしているので直線距離で15メートル程近くによっても攻撃してきません。マンドラゴラは蔓を引っ張って引っこ抜くと叫び声を発声します。叫び声が止まるとマンドラゴラは死ぬのですが、この声でマンドラゴラが死んでいるわけではありません。実際には土から出されると死にます。」
「土から出るとマンドラゴラが死ぬ?」
「ええ。マンドラゴラは土の中でしか生きられないみたいで土から出ると死にます。」
「し、しかしマンドラゴラを引っこ抜くと叫び声を上げるのだろう?その叫び声を聞くと意識を失うとか。」
「そうですね。マンドラゴラは蔓を持って強引に引っこ抜くと叫び声をあげます。でも、マンドラゴラの近く土を取り除いてあげると叫び声を上げずに土の上に出るので何事も無く死んでくれます。」
「な、なんだと・・・し、しかしマンドラゴラの近くによるのも蔓に絡まれて危険だろう?」
「はい。なので土魔法でマンドラゴラの近くの土をマンドラゴラごと持ち上げてから土魔法を解除すると土の上に出てきます。ただ、この時に注意が必要なのはアースランサーとかで持ち上げた場合、マンドラゴラを傷つけると叫び声をあげます。」
俺がマンドラゴラの討伐方法を話すとルシティベルザさんとアリテシアさんは驚いた顔をしながらも納得したように何度も何度も頷いていた。
「シュン殿、教えて頂いた情報の検証は必要だがとても有効だと思われる。今回の緊急依頼でのマンドラゴラで検証を行います。本日は重要な情報を頂きありがとうございます。後日検証結果が着次第アリテシアからご報告致します。」
ルシティベルザさんは、会議室での話をエドモントさんに送るために急ぎ足で会議室を出て行った。
俺たちはアリテシアさんに見送られてギルドを後にした。




