緊急依頼対象
「まず、テントなどを張り拠点を設営する。ギルド職員が四隅に設置した範囲内でテントを設営してくれ。」
ジャジュの森でトレントが対象発生している可能性があるためギルドとして緊急依頼を発行し、ランク3以上のパーティを募集した。
ランク3はある程度の実績がある。この様に討伐対象が確定していない依頼などで慎重に行動するため依頼成功率が高い。
その様なパーティが8パーティも集まってくれた。トレントが20体居ても討伐が可能だろう。
ギルド職員が拠点の4隅に設置した魔道具は魔物を寄せ付けなくする匂いと音を発生させる。
有効範囲ギリギリに設置しているが8パーティまでならテントを設置できる広さがとれる優秀な魔道具だが、如何せん使用する魔石の消費が激しいため使用費用が高くなるため安直に使用することができない。
こんな時だからこそギルドも投資しているのだ。
ギルド職員が拠点となるテントを張り水と食料を馬車から卸しているとテントを張り終えたパーティが集まってきた。
「エドモントさん、テント張り終えたぜ。まずは調査からでいいのか?」
「うむ。情報を持ち帰った二人から話を聞いたところ、正面右側に獣道がありそこから森に入ったそうだ。3パーティでその獣道を調査してくれ。「緑の黄昏」と「狼の牙」「暁の激情」で行ってくれ。」
「ああ、分かった。」「了解だ。」「…(頷き)」
3パーティは準備を整え獣道から森へと入っていった。俺はテーブルに地図を広げて残った5パーティに指示を出す。
「「黄戦師団」と「光明赤鵬」の2パーティはこの獣道から森に入ってくれ。この獣道は道幅が狭いため特に慎重に行動してくれ。」
「ああ」「うぃっす」
「黄戦師団」と「光明赤鵬」のリーダーが答えて森に入るために獣道へと向かって行った。
「残りのパーティはここから入ってくれ。ここは「牙王の剛剣」が森に入る時に使っていた獣道で道幅が広く見通しも良いはずだが牙王の剛剣は帰ってきていないことから植物系の魔物に襲われたと思われる。皆も十分注意して行ってくれ。」
3パーティは装備を整えて少し離れた所にある獣道へと向かって行った。
ゴブリンの集落など目標がハッキリしている場合はもっと的確な指示が出せるのだが、こういった調査は報告が入るまで待ちとなる。
年若いギルド職員は落ち着きなく拠点の整理を行っているがこういう経験をするのも大事なことだろう。
俺は緑の黄昏のリーダーでソルダというパーティメンバーの戦士をしてるガルドと魔法使いのソニアの3人パーティだ。
今ジャジュの森で植物系魔物の調査を行っているが相手が何かわからないのは久々だな。この緊張感。
「ふ~、植物系の魔物でトレントかもしれないってことだが、討伐対象がはっきりしない依頼は緊張感が半端ないな。」
「うむ。蔓に襲われたという話だから近くの蔓もできるだけ切り裂いて行動していこう。」
「ああ、しかし森の中だけあって草が伸び放題だな。草の下に蔓があったら見えんぞ。」
「気を抜かず進んでいくぞ。どこで襲われるかわからんからな。」
森を進むこと2時間位だろうか?特に襲われることも無く森を進むが何も襲ってくる気配がない。
もう少ししたら一度拠点に戻ろうと他のパーティと相談しようとした時に俺の足に蔓が巻き付いてきた。
「くっ!きたぞ。俺の足に蔓が巻き付いてきた。皆注意してくれ。しかし何て締め付けだ足の骨が折れそうだ。」
そう言って俺は剣を振るい蔓を切ろうとするが蔓は柔軟にしなり切り裂けなかった。見かねたガルドが斧を振り下ろし蔓を地面に打ち付けて切り裂いた。
そのガルドの腕に蔓が巻き付いたので剣を振るうもやはり切り裂けずにガルドが引っ張られて奥に連れていかれそうになる。ガルドは両足で踏ん張り耐えていたので俺も蔓を掴み一緒に引っ張り上げると何かが抜ける感覚がすると共に巨大な声が響き渡った。
「キィィィィィィヤャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「グッ・・・や、やばい。意識が持ってかれる・・・」
俺の意識が途切れようとした時に頭から水が降ってきた。
「ぶはっ!な、なんだ?」
辺りを見渡すとソニアが水魔法で俺たちに水をかけてくれたようだ。それによって途切れかけていた意識が回復した。
ソニアも意識が途切れそうになるなか俺たちに水をかけたあと倒れたようだ。蔓がソニアを捕らえようとしていたのが見えたので急いで抱え上げその場を逃げ出した。
まさか襲ってきた蔓がマンドラゴラだったとは。。。マンドラゴラは本で読んだだけで本物を見たことがなかった。
たしかマンドラゴラを抜くと大声を上げ、その声を聴いた者の意識を刈り取るらしい。それにより近くにいるマンドラゴラ達が蔓を伸ばして獲物を殺して養分にするらしい。
初めて遭遇したがこんなにも戦いにくい相手だったとは。
急いでエドモントさんに報告して他のパーティと情報共有しないとこの討伐失敗するぞ。
マンドラゴラがこんなにも戦い辛い相手とは。普通の草にしか見えないし抜いてもあの声を発声されると意識が持ってかれて他のマンドラゴラに掴まってしまう。
蔓自体も強固で柔軟性が高いから切り裂く事も難しい、やはりエドモントさんに報告して対策を話し合う必要があるな。
無事に拠点まで戻ってくると他のパーティたちも無事に戻ってきていた。マンドラゴラと遭遇したのは俺たちだけだったようだ。
「エドモントさん、今回の討伐対象が判明しました。」
「なに!遭遇したのか。」
「はい。ガルド。」
俺はガルドを呼ぶと腕に蔓を巻き付けたガルドがやってきた。こいつ何時まで蔓を巻き付けておくつもりなんだ?
ガルドはエドモントさんに腕を突き出した。エドモントさんは困った様に顔を顰めたので俺は慌ててガルドの腕に垂れ下がっているマンドラゴラを持ち上げてガルドの腕から蔓を取り外した。
「これがマンドラゴラか。これはもう死んでいるのか?」
「死んでいると思います。昔本で読みましたが引っこ抜かれると大声を出した後死ぬとありました。こいつも大声を出した後は動きませんでした。」
その後、本の知識だがマンドラゴラについて知っていることを報告した。
「情報感謝する。しかしマンドラゴラか目撃情報の少なさから討伐方法がはっきりしない。力任せに引っこ抜くと意識を持ってかれるらしいから無理はできんな。一度ギルドに人を走らせて情報を集めよう。その間マンドラゴラの分布図を出来る限り作るぞ。なるべく遠くから攻撃できる手段を持って行動してくれ。魔法使いは前衛から離れて援護出来る様にしてくれ。」
今回の討伐対象がマンドラゴラだったのは不幸中の幸いだったんだろう。どうやって繁殖しているのか判明していないが繁殖速度はそんなに早くはないだろう。あとはギルドからの連絡が来るまでに分布図をできるだけ正確に作っておくか。
□□□ □□□ □□□ □□□ □□□ □□□ □□□ □□□ □□□
アリテシアはエドモントからの手紙を受け取り中を確認していた。
手紙の内容は今回の緊急依頼の討伐対象がマンドラゴラと書いてあり討伐しようにも引き抜くと大声を上げて意識を刈り取られるらしい。そのため討伐の効率を上げるためにマンドラゴラの情報をできるだけ集めて欲しいとあった。
アリテシアは副ギルドマスターのルシティベルザや教導官のギリアムドに手紙を持って話を聞きに行くも有効な情報が入手できずにいた。
出来る限り早くに情報を集めてエドモントへと返す必要があるが書ける情報が集まらずに頭を抱えていた。
「はぁ。副ギルドマスターもギリアムドさんも一緒に情報を探してくれてますが・・・はぁ。。。」
「どうされたんですか?溜息なんてついて。その本が何か関係してるんですか?」
アリテシアが顔を上げると黒髪黒目の男が目の前にいた。最近新種と思われる魔物を討伐してきたシュンだった。
「あ、シュンさん、エリナさん。こんにちは。」
「こんにちは。何かお悩みですか?」
「はい。緊急依頼の討伐対象が判明したのですが、その魔物の情報が無くて困っているんです。」
「へぇ~、どんな魔物なんですか?たしかトレントって聞いたことありましたが。」
「えぇ、それは・・・」




