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ペンタグラム  作者: はるひぶ いえん
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キメラ

俺とエリナさんはギルドで受けた依頼でキュリテ村にやってきた。村長から話を聞き、夜に獣の声が聞こえるとの事で日が暮れる前にギャラホム山へと入り、怪しそうな洞窟を見つけたので監視できる場所で夜になるのを待っていた。


エリナさんと簡単な食事を取りながら洞窟を監視していると、洞窟からズッズッ、ズッズッと何かを引きずるような音が聞こえてきた。

この距離で聞こえてくるって何を引きづってるんだ?なんか嫌な予感がするなぁ~。

エリナさんも何かを引きずる音が聞こえているようで怪訝が顔をして洞窟を見張っている。

体感的に4~5分くらい経った頃異形な姿をした何かが這い出てきた。

上半身は熊なのだが、下半身が巨大なトカゲで足が短いのか上半身が重いのか腹?の辺りを地面に擦りながら歩いていたため引きずる音がしていたんだろう。


この世界の生態系はどうなっているのか分からんが、珍しい生き物がいるもんだな。

こんな生物が存在するなんてと考えながら不思議な生物を観察していると熊が息を吸い込み雄叫びを轟かせた。


「グゥロロロロロロロロロロロォォォォォォォォッ!」


その雄叫びには魔力が籠っているのか近くの木々が熊を中心に反り返り枝なども折れて吹き飛んでいた。

空を飛んでいた鳥も衝撃を受けたのか地上まで落ちてきていた、熊は落ちてきた鳥を手に取り食べ始めた。

この付近に生物がいなかったのは、この熊から逃げ出したのもあるがこの雄叫びで気絶した獣を食べつくしたのだろう。


熊は鳥を食べつくしても満腹にはならないようで、緩慢な動きで徐々に山を降りて行っているようだ。

そりゃ食べるものが無いなら移動すると思うが、そっちはキュリテ村の方だぞ?ここに来るまでの道中に動物が何もいなかったってことは、あの熊村まで行くんじゃねーか?


俺は考えた事をエリナさんに伝えようとすると同じことを考えていた様で村に向かっているのではないでしょうか?と言ってきた。

俺は頷いて熊の移動速度が遅いこともあり、途中で方向を変える可能性もあるので見つからない距離で後をつけようと相談しあった。

熊が移動して1時間程経った頃、熊が立ち止り辺りを見回している様にしていると村がある方で顔の向きが止まった。

月明かりで照らされた熊は怖気を震う様な顔になったかと思うと両手を地面について体を震わせた。

すると、トカゲの胴体がひび割れるとバリバリと蜘蛛の足の様なものが6本生えてきた。その光景に絶句していると熊はのっそりと上半身を持ち上げるとガザガザと気持ち悪い動きで速度を上げて走り出した。

どうやら村を襲うつもりのようだ。俺とエリナさんは頷きあうと熊を追いかけるように駆け出した。


熊は器用に木を伝って走り抜けて山の麓に降り立つとさらに速度を上げて村へと走りだした。

このままでは熊の方が先に村にたどり着いてしまうので、熊の意識をこちらに向けるため石を拾って投げつけた。


石は時速何キロでてんだよ!って思う速度で飛んでいき熊の胴体にめり込んだ。

熊は胴体に痛みを覚えたのか「ガロロロロッ!」と叫ぶと石が飛んできた方を向いた。


俺とエリナさんは熊の近くまでたどり着き武器を構えて対峙した。熊はフッフッフッフッと短く息を吐いており睨み合いが続いていたが、熊の声で起きた何人かの村人が熊の姿をみて叫び声をあげた。


叫び声を聞いた熊は振り返って村人へと襲い掛かった。俺はダッシュして熊の前に躍り出て剣を振るうも熊は剣が当たる直前で横へジャンプしてのがれた。


この熊やろう思ったより戦いなれてやがる・・・。俺は背中にいる村人たちに危険なので家に入って戸締りをして下さいと言い熊へ追撃を開始した。


月明かりの中、剣を振るうも熊は巨体なくせにちょこまかちょこまか動きが良い。あの蜘蛛の足が異常な速度を実現しているんだろうが何ていう生物なんだよ、こいつ。


熊が急接近して手を振るうと俺はバックステップで回避してから前に出て剣を突き出す。熊は横に移動して突きをかわすと大口を開けて俺に食いつこうとし、前方に転がってかわすといった攻防を繰り返した。


エリナさんは弓を構えて隙を伺っているが月明かりしかないため俺に当たるかもしれないと躊躇しているようだった。

確かにこの熊は動きが速いがエリナさんなら外すことなく当てれると思うが、実戦経験の少なさで自信が持てないのだろう。

熊のスピードに慣れてきたころ、俺はさらにスピードを上げて熊の攻撃を回避すると同時に剣を振るって繰り返し攻撃を当て続けた。

この熊の上半身も下半身も頑丈にできているようで、剣で切り付けても致命傷を与えるほど切り付けられない。

蜘蛛の足も頑丈みたいで切り裂くことができなかった。しかし何度も何度も同じ個所を切り付けることで蜘蛛の足を数本ぶち壊すことに成功した。


熊は蜘蛛の足で走り回ることが出来なくなった所でエリナさんが放った矢が熊の首を貫いた。

熊は口から大量の血を吐きながら「ゴロロロロオッロロロロロォォォl」と叫ぶとズドンッと言う音を響かせて倒れた。


ふうっと一息ついてエリナさんに向かって親指を立ててサムズアップをするとエリナさんはニコッと笑顔になった。


村人たちは家の隙間から戦闘の様子を見ていたらしく戦闘が終わったのを確認すると恐々と家から出てきた。

村長が俺の元へとやってくると説明を求められた。


「山の中腹に洞窟があって、何か感じるところがあってそこを見張っていたらこの熊なのかな?が這い出てきまして。雄叫びを上げていたのでこいつが調査依頼の対象ですが、どうやら山で獣が取れなくなったからか村に目をつけて此処までやってきました。本来は調査だけでしたが、村に被害が起こるよりはと思って討伐しました。」


「おお!ほんにありがとうごぜぇますだ。こっただのに襲われだらおら達みなおだぶつだぁ。なぁ、みんなぁ」


「「「「んだんんだ」」」」


「すっかし、こっただ獣みたことねぇ~だけんどもぉ、なんてぇ~なめぇなんだぁ?」


「いや、俺も初めて見るので名前はわからないですね。ギルドに持ち帰って調べてもらいますが。」


「こっただ物もちけぇ~れるだかぁ?村にゃ台車もねぇ~だど?」


「ああ、大丈夫ですよ。このカバンに入れていくことが出来ますので。」


そう言って俺はカバンに仕舞うふりしながらアイテムボックスに熊の死骸を入れた。村人たちは「おお!」と感嘆の声を上げていた。

蜘蛛の足もしっかりとカバンに仕舞うふりをして後片付けを終えると村長の家に泊めてくれることになった。

村長の家で夜を明かし朝食を頂いてからキュリテ村を後にした。

俺たちが乗ってきたギルドの馬車は辺境伯領からグルッと村々を回るため次にここに来るのが2日後くらいになると聞いている為歩いて帰る事にした。


拠点から馬のゴーレムを持ってこようと思ったが、のんびり歩いて帰るのも風情があってよいかと言うことで今歩いているんだが、前方に盗賊らしきのに襲われている馬車を発見してしまった。

お約束展開キタコレ!とテンションが上がっているとエリナさんが颯爽と駆け出した。俺も慌てて走り出してエリナさんと並走して馬車を襲う盗賊に近づいて千切っては投げ千切っては投げを繰り返して盗賊を無力化した。千切ってはないけどね。


盗賊の無力化が終わると馬車の護衛たちは俺たちを警戒しながらも「ご助力感謝致します。」と言った。


「ご無事で何よりです。お怪我はありませんでしたか?」


「ええ、多少傷ついた者もおりますが街も近いので問題ありません。」


その様な会話をしていると馬車のドアが開き上質な生地で作られたドレスを着た中年の女性が降りてきた。

護衛の方々は女性に向かって一斉に跪いた。女性は頷くと俺たちに向かって声をかけてきた。


「この度はご助成頂きありがとうございます。私はニアーナ・イレイブと申します。」


「これはご丁寧な挨拶痛み入ります。私はシュンです。」


「エリナです。」


「シュンさんとエリナさんね。おかげで助かりましたわ。私たちは辺境伯領まで向かいますがお二人はどちらへ?」


「私たちも依頼の帰りで辺境伯領まで歩いているところです。」


「まぁ、それは丁度よろしかったですわ。お礼と言ってはなんですが馬車でお送り致しますわ。」


「いえいえ、私たち依頼の帰りなので服が汚れています。馬車に乗ると汚してしまいますから。」


「そんなお気になさらず汚れたら掃除をすれば良いだけですわ。ささ、一緒にお乗りくださいな。」


そう言ってこちらの話を聞かずに馬車へ乗り込んでいった。俺は護衛のリーダーっぽい人の顔をみると頷かれたのでエリナさんと一緒に馬車に乗り込んだ。


ふ~。貴族っぽい人って人の話を聞かない人が多いんだなぁ~。

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