緊急依頼
妖精酒の完成祝賀会の次の日、エルフと妖精の皆様は二日酔いと戦っていた。段々と前世のエルフイメージが崩れていく中お酒を飲んでいない年若いエルフとお酒に飲まれなかった酒豪エルフ、嗜む程度だったエリナさん達が一生懸命介抱していた。
エルフ達も普段お酒をあまり飲むことがないため、どれ位飲めるのかの判断がつかなかったのだろう。村長まで二日酔いで潰れていたのだから。
二日酔いには水を飲ませると良いと聞いたことがあったので、水魔法で綺麗な水を生み出して二日酔いの方々に飲ませておいた。少しはマシになるだろう。
館を管理するブロンさん達はさすが次の日に影響を及ぼさない程度にしていた為、普段通り通常業務を行っていた。
さすが元子爵家で仕えていたことがある人たちだ。ただ、夜遅くまで宴会をしていたので普段早寝早起きをしている人達なので少し眠たそうだ。
しかし、前世よりは対象強くなっているようだがお酒はそんなに得意になりそうもないな。まあ、お付き合い程度に飲めるだけマシかな。
二日酔いの皆を再度寝かしつけたあと館に戻り、みんなでさっぱりした朝食をとり食後の紅茶を飲みながら一息ついているとネルギエさん達が朝市に出かけていった。
朝市には新鮮な野菜や果物があり、珍しい食材も並ぶため物凄い人が集まっているらしい。
今度ネルギエさんの買い物に付いて行ってみよう。何か面白いものが見つかるかもしれないし。
紅茶を飲み干すと、拠点に戻り畑の水やりや森林の状態確認をエリナさんと一緒に行った。普段はエルフの皆様がやっているんだけど殆どが二日酔いで死んでるからね。巨樹も急激に成長させながらもしっかりと大地に根を張って安定した状態になっているとエリナさんからの太鼓判を貰い一安心だ。
この地球が作った種から生まれた巨樹は不思議なことに何種類かの実をつけるんだけど味がそれぞれ違うんだよね。
科学的に考えるとありえないことなんだけど魔力ってのが何かしらの作用を起こしているのかな?
拠点は以上に広く作っているので、一通り回るのにも時間がかかる。普段はエルフ達が分担して見回ってくれているのでそんなに時間が取られないらしいんだが、初心者の俺とスペシャリストのエリナさんだけなので午前中は見回りだけで終わってしまった。普段のエルフ達に感謝です。
宴会を行ってから二日後、普段の日常が戻ったのでエリナさんと一緒に何か面白そうな依頼があるかギルドへと向かった。
ギルドに到着するとトレントが発生しているかもしれないジャジュの森への緊急依頼を受けたパーティーがごった返していた。フルアーマーを着ている戦士風な男もいれば全身古傷だらけのアマゾネスのような筋肉モリモリの女性もいた。やはりある程度高ランクのパーティーが集まっているため歴戦の古強者といった風情の人が多かった。
俺たちは緊急依頼の邪魔にならないように端をこっそりと歩き依頼ボードの所に到着した。
丁度そのタイミングでギルド職員の戦技教官らしき人が高台に上がり声をあげた。
「まずはジャジュの森の緊急依頼を受けてくれたことに感謝する。今回の緊急依頼を牽引する戦技教官のエドモントだ。ここに集まってくれた皆は内容は知っているだろうが聞いてくれ。ジャジュの森に採取に行ったパーティーが植物系の魔物に襲われた。何とか戻ってきた2名に話を聞いたところ、大量蔓が襲い掛かってきて命からがら逃げだせたそうだ。トレントの姿は見ていないがギルドの見解としてトレントの大量発生と考えている。しかし、確認されているのは大量の蔓だけだトレントの可能性は高いが各パーティーはトレント以外の魔物も考慮して行動してほしい。まずはジェジュの森近くにキャンプ地を設置してからパーティーごとに討伐に赴いてもらう。話は以上だ。ギルド前に馬車を用意してある緊急依頼を受けた者は馬車に乗り込んでくれ!」
エドモントが緊急依頼の内容を説明し、馬車での移動を指示するとフロアにいた緊急依頼を受けた者たちは一斉にギルド前の馬車へと乗り込んでいった。
緊急依頼って結構出てるのかな?皆の動きが慣れすぎているんだが。
それを見送っているとひとつの視線を感じたので、視線のする方を見てみるとフードを被った人がこちらを見つめているようだった。フードを目深にかぶっているので顔はよくわからないから誰かわからない。
う~ん。何か恨みを買うようなことをしたっけかな?
フードを被った人は緊急依頼を受けているのかパーティーメンバーらしき人に声をかけられギルドの外へと出て行った。
緊急依頼を受けた人たちを見送った後、依頼を確認しているとアリテシアさんが話しかけてきた。
「シュンさん、エリナさんおはようございます。本日はご依頼をお探しですか?」
「アリテシアさんおはようございます。何か面白そうな依頼があったら受けてみようかなと思って見に来ました。何かお勧めはありますか?」
「はい。丁度お二人にお願いしたい依頼があって話しかけさせて頂きました。」
そういって、アリテシアさんは目を瞑って舌をぺろっと出してお茶目な顔をした。
俺たちが笑うと、アリテシアさんは照れた顔をした。
「では、依頼をご説明させて頂いて宜しかったでしょうか?」
俺とエリナさんは頷き、「ええ、説明お願いします。」と答えると受付カウンターまで案内された。
「本日お受け頂きたい依頼はこちらになります。」
「え~っと、ギャラホム山の調査依頼?」
「はい。ギャラホム山はここ辺境伯領から西に向かって30キロほどの距離にあり標高2600メートル位の山になります。ギャラホム山の麓の村からの依頼で、最近山から獣の咆哮がよく聞こえるらしく調査して欲しいとの依頼です。何の獣がいるのか調査頂いてキュリテ村とギルドへ報告をして頂けませんか?」
「討伐ではなくてですか?」
「はい。今回は調査依頼になります。獣が何なのかわからないため無理に討伐しようとして返り討ちに合うのを回避するためです。高ランクの方が本日の緊急依頼に出たためギルドとしては特に無理をさせるわけにはいかないのです。その点、シュンさんとエリナさんは功名に逸ることがないため無理をせずに調査して頂けると思いました。」
「なるほど、最近角ウサギの大量発生とか緊急依頼とか変なことが良く起こってますからね。エリナさんどうですかこの依頼?」
「はい、私は受けても良いと思います。アリテシアさんもお困りの様子ですし。」
エリナさんが答えると、アリテシアさんはホッと一息ついた。俺はエリナさんに頷いてアリテシアさんにこの依頼を受けることを告げた。
キュリテ村まではギルドが馬車を出してくれるそうなので、一度館に戻ってブロンさんに報告してお弁当を持って出発した。
前世のように道路など整備されていないためガタガタ揺れながら進んでいる。しかも座るところはクッションも何もない板なのでお尻が痛いのなんのって。こんな椅子に座ってたら痔になるわ!と思い、アイテムボックスから布と羊毛を取り出して羊毛を布で包み即席のクッションを作成した。
エリナさんもやはり痛かったようで、クッションをお尻に引くと痛くなくなりました!と笑顔で報告してくれた。
同席していた違う依頼を受けた3人パーティーにも同じクッションを作ってあげると物凄い感謝をされた。
やはり皆お尻が痛かったんだね。
お昼を過ぎた頃にキュリテ村に到着して、お昼ご飯を食べてから村長宅へと向かった。村人に話を聞くと村長宅への道はすぐにわかり、村長にギルドの依頼を受けてギャラホム山の探索にきたと告げた。
「依頼を受けて貰ってありがてえだ。ワスがキュリテ村のぉ村長やっとりますベルべってもんだ。10日ほどぉめぇから夜になるとぉ山から唸り声が聞こえてくるだぁ。ワスら恐ろしくて夜も眠れねぇだぁ」
ベルべ村長の説明によると夜に獣の遠吠えが聞こえてくるらしいので夜行性なのだろう。とりあえず昼間のうちに山に入って下調べをすべきとエリナさんと話し合いギャラホム山へと足を踏み入れた。
狩人たちが山へ立ち入る道を注意しながら進んでいくが辺りには獣一匹見当たらなかった。小動物さえいないのは山に潜む獣に怯えて逃げ出したのかもしれない。
途中薬草などを発見したので採取しながら歩いていると山の中腹あたりで日が落ちてきた。
辺りが暗くなる前に洞窟を見つけたので入ろうとしたが洞窟から漂う空気に嫌なものを感じ、エリナさんも怪しいという意見だったので洞窟を監視できる位置まで離れてキャンプ準備を行った。
さて、何がでてくるのやら。。。




