鰹節削り器
エルフの森の浄化も済み、ブロンさん達は訓練の真っ最中の為、何もやることが無くなって久しぶりに落ち着いた日々を過ごしていた。
折角なのでアイテムボックスに何が入っているのか確認していると鰹節モドキが大量に入っていることに気づいた。
「あ~、そういえばゴーレムに鰹節モドキを作って貰ったけど、エルフの皆が釣って余った魚を全て鰹節モドキにしてたから大量にあるんだった。でも、削る道具がないから貯まる一方なんだよな~。」
鰹節モドキを取り出して手で玩んでいるとエリナさんがお茶を入れてくれて対面に座った。
「それはゴーレムさんが作ってた魚の乾燥したものですよね?それは何に使う物なのですか?」
「え~っと、これは鰹節って言って魚を乾燥させた物なんですけど、これを削って料理に振りかけたり出汁を取ったりする物ですよ。」
「削って使う物なのですか。」
「ええ、作ったまでは良かったのですが、削る道具が無いのに気づいてず~っと封印してました。」
「そうなんですか。その封印を解いて何をされていたのですか?」
「いえ、アイテムボックスを確認してたら見つけてどうしようかと悩んでました。」
そう言って俺はお茶をすすり一息ついた。エリナさんは少し考えた後、道具屋を巡って削る道具を探して無ければ鍛冶職人に作成をお願いしたらどうですか?とアイデアを出してくれた。
丁度やる事も無いためそれも良いかと思い、エリナさんと一緒に買い物に出かけた。
辺境伯領には何か所か道具屋があるため全て回ってみたが包丁とか鍋とかフライパンはあったが、鰹節を削る道具らしきものは見つからなかった。
そもそも鰹節のように削って使う食材がないため作られなくて当たり前だよね。
エリナさんは道具屋で腕のいい鍛冶職人を紹介してもらっていたらしく、道具屋を出た俺たちは鍛冶職人の仕事場へ向かった。
鍛冶職人たちが集まる仕事場は辺境伯領の西門付近にあり近づくと鉄を打つ音が聞こえてきた。
鍛冶場が集まった通りは他の場所より2~3度ほど温度が高いようで息苦しさを感じたが職人街の活気も感じた。
お目当ての鍛冶職人がいる仕事場の前に着くと、奥で鉄を叩く音が一定のリズムで心地よく聞こえる。
「すみませ~ん。」と入り口の戸を開けて声をかけるとカウンターで剣を手入れしていたねじり鉢巻きをした短髪の小さい男の人がギロッと睨んできた。
おぉ~、The職人って感じがするな。ドワーフなのかな?良い仕事しそうだけど、奥で鉄を叩く音を鳴らしている人と一緒にやっているのかな?
「何か御用か?ここは鍛冶場だから武器が欲しいなら武器屋に行ってくれ。」
「こんにちは。え~っとですね。ちょっと作って欲しい道具がありまして、道具屋の店主に話を聞いたらこちらの親方が腕が良いとお勧め頂いたんですよ。」
短髪の小さいおじさんは渋い顔をして工房の方を向き、親方の仕事があと少しで終わるので待ってくれと言い椅子を出してくれた。
俺とエリナさんは飾られている武器などを見ながら時間を潰していると工房から髭面で三つ編みの小さいおじさんがノシノシとハンマーを担いでやってきた。
「ワシに用があるってのはお前か?」
「ええ、ちょっと作って欲しい道具がありまして、武器じゃないんですけど相談に乗って頂けますか?」
「珍しいな、武器以外の話ってのは。で、どんなのを作って欲しいんだ?」
俺はカバンから鰹節を取り出して親方に見せた。
「これは魚を乾燥させた物なんですけど、これは削って使うんですがこれを削る道具が欲しいんです。」
俺は地面に道具のイメージを描いて説明すると親方はうんうんと頷きこちらに顔を向けた。
「おめえの説明分かりやすいな。作るもののは分かったが、これは本当に魚なのか?カッチカチだぞ。」
そう言って親方は鰹節を手に取ってテーブルにガンガンぶつけていた。
俺はナイフを取り出して削ってみるも綺麗に削れなくて分厚く削れてしまったが、それを親方に持たせてみると親方は疑いもせずに口に含んだ。
「むお?なんだこりゃ、分厚いから木を口に含んでいるようだが何とも言えねぇ旨味があるぞ。」
「ええ、これが薄く削れると料理の上に振りかけると良い風味が出ますし、水を張って削った物を入れて煮込むと良い出汁が出るんですよ。」
「ほう、確かにこの味は魚の味だが旨味が凝縮されているな。これなら色んな飯に振りかけても旨いだろうな。気に入った!この鰹節か?これを何個か譲ってくれたら最良の物を作ってやろう。」
「お!本当ですか。では、カバンに10個ほど入ってるのでお渡ししますね。」
俺はカバンから鰹節を全て机の上に出した。親方はニヤッと笑い、ちょっと待ってろと言い木札を一つ持ってきた。
「これは仕事を請け負った相手に渡して出来たものと引き換えにする物だ。そうだな3日程貰えるか刃物の部分は少なさそうだから鍛冶の部分はすぐに作れそうだが、何せ初めて作るものだから納得のいく物が作れるかわからんからな。」
「お~、そんなに早く作って貰えるのですか。ありがたいです。でも他の仕事は大丈夫ですか?」
「ああ、急ぎの仕事は無いし、作った武器は後磨ぎの作業があるんだが、今は弟子の仕事にやらせているからな。3日位時間を空けられるぞ。」
「ちょ、ちょっと親方、明日ギルドから依頼が来る予定じゃなかったですか?」
「ふん!注文は今貰ったこっちの坊主の方が早いんだ、優先すべき仕事はこっちだ。こんな技術がいる面白そうな物やらないでどうするってんだ!」
親方の何に触れたのか分からないが、親方は物凄いやる気を見せて弟子を叱りつけていた。
「んじゃ、坊主悪いが3日後また来てくれ。必ず満足いくものを作っておくから楽しみに待ってろよ。」
俺とエリナさんは木札を持って、親方たちに挨拶をしてから鍛冶場を後にした。
□□□ □□□ □□□ □□□ □□□ □□□ □□□
3日後、鍛冶場に行くとフラフラになっている親方が現れた。弟子の方に話を聞くとあの日から鍛冶場に籠り眠らずに何度も何度も試作を繰り返していたらしい。
「おお!来たか、納得が行くものが出来たぞ。試作の物で削ったものがこれになる。見てみてくれ。」
親方は削った鰹節を出してきた。それを見た俺は前世の記憶にある鰹節と一致していることに感動を覚えた。
一枚手に取って掲げてみるとヒラヒラとして薄っすらと向こう側が見える程薄く親方の技術力に感嘆してしまった。
「凄いですよ親方!私の思ってた通りの物ですよ。」
「ふふん!今回は本当に面白い仕事だったぞ。刃の新しい使い方も出来る事が分かったからな。色々と考えさせられたぞ。」
「それは良かったです。この親方が作ってくれた削り器のこの部分をこう使うと木材を削る事もできます。これで削ると木材が滑らかになるんで木工職人さんにお勧めです。」
「ほほう。それはそれで面白い。これくらい小さい刃物の鍛冶なら練習で弟子たちに作らせてみるのもいいかもな。」
「親方、本当にこれ前に渡した鰹節だけでよかったんですか?物凄く申し訳ないんですが・・・」
「いい、いい。こっちにもメリットがあったからな。」
俺はカバンに入れてきた鰹節20本を出して親方の前に差し出した。
「やはりお金を受け取ってくれなかったので、鰹節を持ってきました。私が心苦しいのでこれを収めて下さい。」
「ふん!お前も難儀な性格をしておるのぉ。わかった。ワシもこの鰹節ってのは気に入ったからありがたく受け取っておくよ。」
館に帰るとさっそく削り器で鰹節を削り、和風だしを作り野菜炒めの味付けや、鰹節そのままを和えたりして色々な料理を作りエリナさんとシュテーナちゃん、ルールチェさんと味見を行った。
「はわわ。凄い深い味わいです。これが本当にあの木みたいなのから出た味なのですか?」
「本当に美味しいです。このフワフワしたものを口に含んでも味わいがありますが野菜と一緒に食べると今まで食べた野菜と違う味わいがあって美味しいです。」
「私はこのスープがとても好きです。優しい味でほっとします。」
鰹節が好評でエルフの皆さんにも試食してもらったら大変お気に召したようで、削り器が欲しいという注文を受けてしまった。
親方に相談した所、弟子たち総動員して5日で50個も作ってくれた。ただ、弟子たちが床にぶっ倒れて死んでいるのかどうか分からないカオスの状態だったのだけ印象に残った。
今回はちゃんと料金を払いましたよ。




