浄化
ドンッ!
「どこの馬鹿だ!ハイエルフ様に手を出したのは!」
そう言って豪華な机を叩いた男の言葉に机の前に立つ騎士風の男が敬礼をして答えた。
「ハッ、デキンバ男爵様のご次男のジャガン殿です。」
我が領にハイエルフ様が入られたとの報告を受けた時、私も挨拶をしに伺おうかと考えたがハイエルフ様は世俗に馴染まない種族で人族が集まって生活する場所には滅多に現れる事がない。なので反対に迷惑になるだろうと考えて挨拶に行くのを取りやめたのだ。部下に監視をして貰っていたが何と我が領に家を購入されたとの報告があった。それを聞いた私は歓喜したものだ。ハイエルフ様は住まわれている土地を豊かにして幸運を運んできてくれる存在だ。
そのハイエルフ様にご迷惑をかけた者がいるという報告だ。クソッが!ジャガンの小僧が問題を起こすのはこれで何度目だ。そのたびにデキンバ男爵に苦情を伝えているが、あの男は優柔不断で息子にでさえ強く言えないから同じ問題を繰り返すのだ!折角、ハイエルフ様が我が領に住んで頂けるかもしれないのに邪魔をしおってからに!これでハイエルフ様が買われた家に住まわれなかったらジャガンには責を取ってもらわんとな。
「それで、その後ハイエルフ様はどうなさったのだ。」
「ハッ、下人と共に市場へ食材を買いに行き、家に戻られてからエルフのパーティが家に入って出てきておりません。」
ふむ。ハイエルフ様はご気分を害されたかもしれぬがまだ我が領にお住み頂けるようで安心したわ。
しかし、ジャガンの奴めが撃退されたと報告を受けている。そのジャガンの傲慢さを考えると必ず報復を行うだろう、それは止めねばならんな。
「お前たちはジャガンの行動を監視し、ハイエルフ様に手を出すようなことがあるならば知られぬように対処しろ。」
「ハッ!」
とりあえず、打てる手は打っておかないと折角の幸運が手から滑り落ちて行くかもしれんからな、我が領はバルッサ王国で最も辺境にあり、魔の森からくる魔物から王国を守ることが使命で近くのダンジョンの管理も行っている。そんな難しい領地を経営するにあたってハイエルフ様の幸運や知識を逃すわけにはいかん。その為には男爵家の次男程度に事故が起こっても問題はないからな。
この男、コッフェロ辺境伯は大貴族の一人であり辺境を任されるだけの力を持っており貴族特有の冷徹さも持ち合わせていた。
今回エリナとジャガンを天秤に掛けてエリナの価値がジャガンを大きく上回っており最悪ジャガンを亡き者にする決断を下していた。
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エルリーンさん達が宿から荷物を取って館に戻ってきてから一緒に拠点に移動した。
聖水が手に入るのが3日後と報告して、サンダーバードたちからも話を聞いていると館で寝ていたシェリアリアスがプリプリ怒りながらやってきた。
「何でこっちに戻ってきてるのよ!館中探しまわったじゃないの!」
「いやぁ~、何回か起こしたんだけど気持ちよさそうにグッスリ寝てたからエリナさんと相談してそのままにしておいたんだけど扉を開けてたから分かったでしょ?」
「わかんなかったわよ!」
シェリアリアスが俺の頭の上に乗ってポコポコと殴っているのを放置しながらサンダーバード達と話を再開していたらエルリーンさんが村長と一緒にやってきた。
二人から話を聞くと今回戻ってきたメンバーもハイエルフにして頂けないかという相談だった。俺は了承を返したが辺境伯領に館経由で戻る場合にエルフが急にハイエルフになってると色々と問題が発生するので、一度館に戻って辺境伯領を出てから拠点に戻ってと面倒だけどそうやってくれないですか?というと納得してもらえた。その為3日後に聖水を手に入れてから一度一緒に外に出て此処に送る様に相談した。
村長からの相談が終わり俺はギルドでの会話とエリナさんからの助言の話をした。エルフとしてもお金を手に入れる手段が増える事は有難いし、辺境伯領と行きき出来るのは便利なのでカルーゼ、シュテーナちゃん、アロン君が辺境伯領の館に来るという事になった。館に来ると言っても住むわけではなく、エルリーンさん達を送った後に代わりに連れてくるだけである。館に着いたらまた此処に戻ってくるわけだが、ちょっとした散歩だね。
村長はカルーゼやシュテーナちゃんに話をしに行ったがエルリーンさんは残っていた。エルリーンさんは病を癒した事へのお礼とエルフ達の移住に感謝を述べた後、辺境伯領の館をどうするのか聞いてきた。
何を気にしているのだろうかと思って話を聞いてみると、普段こっちに住むとしたら館の管理はどうされるのですか?との事。
うん、確かに何も考えてなかった。カルーゼやシュテーナちゃんが館に来ると言っても普段住むのは拠点の方に住むしギルドで管理者を雇ったとした場合、移動ドアの事がばれてしまうし問題が大きくなりそうだな。
う~ん、う~んと唸っているとエルリーンさんは奴隷制度の事を教えてくれた。
奴隷は主人の言う事には絶対服従で口止めした事を他で話すことはないと。奴隷の種類として借金奴隷、犯罪奴隷、戦争奴隷、特殊奴隷があるらしく犯罪奴隷は鉱山で働かされるため買う事は出来ないらしい。借金奴隷、戦争奴隷、特殊奴隷は買う事ができるので俺みたいに他に知られると拙いけど人が必要な場合は奴隷を買うと良いらしい。
エルリーンさんは辺境伯領で住んでいた時に奴隷の存在をしり何かできないかと思って色々と調べたらしい。
エルリーンさんとの会話が一段落すると村長とシュテーナちゃんがやってきた。カルーゼ達には話を通したがシュテーナちゃんはポーションを売るために何をすればよいか聞きに来た。
シュテーナちゃんに普段練習で作っているポーションをそのまま売れば良いよというと私のポーションは売れるのですか?と疑問に思ったようだ。俺はシュテーナちゃんにバーカターの事を話、シュテーナちゃんの方が品質が良いポーションを作っているよと話をすると満面の笑みで私頑張ります!と宣言した。
拠点でやることが一段落したので辺境伯領の館に戻り、館に足らない物を買いだしに行った。奴隷を買うなら各部屋に人が住むに必要な物は揃えないとなと思い、家具などを買い占める勢いで買って各部屋に設置していった。ベッドを買った時に布団も一緒に買ったんだが、前世の様なフワフワな布団ではないため一つのベッドに3枚ほど重ねて多少ふわふわ感を出すようにした。3日後、館に戻ったエルリーンさんが呆れられたが俺は満足げだった。
3日後、エルリーンさん達と一緒に教会に行って聖水を購入した。神父様はこんなにも聖水を作ったのは初めてですと言って苦笑されていたが教会にとっては良い収入となって助かりましたとのことだった。
教会を出た俺たちは辺境伯領を出てある程度離れてから人が通らなさそうな森に入り移動ドアを出してエルリーンさん達と拠点に戻りエルフの村へ移動した。ゾンビの残骸を封印した場所に行き、封印を解除して聖水を撒くと残骸が浄化されてキラキラとした灰の様な物に変わり風に吹かれて飛んで行った。
その光景を見たエルフの村長は俺に頭を下げて感謝の言葉を述べた。それを見たエルリーンさん達も頭を下げて「ありがとうございます。」と感謝を述べた。俺は照れながら「私も皆さんに色々と助けて頂いてますので」と言って頭を下げた。
それを見た村長たちは皆笑顔になり笑いあった。
エルフの村は移動ドア経由で管理することにした為、皆で拠点に戻り辺境伯領へ行くメンバーはエルリーンさん達と移動してきたドアへと戻った。
辺境伯領へ戻るにしても時間が早かったため森でカルーゼ達の訓練の成果を見る事になった。
この森には普通の動物より少々大きい位の魔物しかいないらしくエルフの村に攻めてきたハウンドより弱いらしいが、それでもギルドに登録したばっかりの新人だと一人では無理な位強いらしい。
エルフの村が魔物の群れに攻められた時にカルーゼ達が弓で殲滅した事で遠隔攻撃の強さは知っているが折角なので近接で戦って貰う事にした。
3時間程狩りを行ったがカルーゼはもちろんあっさり狩ってたがシュテーナちゃんが近接でもゴブリンソロ出来るんじゃね?ってくらい強かった。錬金術を頑張ってるのは知ってたが戦闘技術を上げる修業も頑張っていたらしい。ほんま頑張り屋さんやで。
倒した魔物をアイテムボックスに仕舞い、コッフェロ辺境伯領に向かい入城手続きを行った。その足でギルドまで案内を行いギルド登録してから館まで帰った。
アロン君やシュテーナちゃんは初めて人族の街に来たため人の多さと見慣れない光景にキョロキョロしていた。
街の散策は後日にして館から拠点に戻りこれからの事を話し合った。
次の日、俺はギルドに行って館の掃除や雑用を行う奴隷を買いたいと相談すると一つの商館を紹介された。
紹介された奴隷商館へ行くと商館の前を掃き掃除している小間使いがいたので要件を伝えると中に案内された。
応接室っぽい所で待っていると恰幅の良いちょび髭を生やしたおっさんがドシドシと入ってきた。
「お待たせして申し訳ありません、奴隷商のドンファンと申します。」
そう言って奴隷商ドンファンが頭を下げ、俺の前の椅子に座り目が笑っていない笑顔で俺を品定めしていた。




