家と母
「今日までの成果で買える薬はやっと3個に届くかどうかですか・・・」
「まずは3個だけでも買って誰か薬を持ち帰るべきではないでしょうか?」
「「「・・・・・・」」」
ギルドでエルフのパーティが集まって暗い顔をしながら稼いだお金で薬を買うかどうかを話し合っていた。
今買えるだけの薬を買ったとしても病で苦しんでいる人全ては助けられない。また3名だけでも助けたとしても助かった3名は自分だけが助かったと心に傷を負ってしまうだろう。と。。。
解決しない問題に鬱屈しながら頭を抱えていた。エルフのパーティは村で流行った病を治すために持ち出せる素材を持って近くの村へと行ったが病を癒す薬が無くここ辺境伯領まで来ていた。
素材を売りつくしても薬が高くギルド登録をして薬を買う金を稼いでいた。
危険な事を考えなければ魔物退治が倒した魔物の素材も売れる事から一番収入が良かった。
エルフのパーティは遠隔攻撃がメインのため、弓で倒しきれなかった場合魔物に接近され一気に危険度が上がってしまう。
その為、弓で倒しきれる魔物をメインにして戦ってきたが、その魔物の素材は安かったのだ。
そんな中、ギルドで囁かれる会話が聞こえてきた。
「ハイエ・・が、家を・・・」
微かに聞こえた会話が耳に残り、エルフの女性はガタッと勢いよく立ち上がり先ほど聞こえてきた会話をしていた二人の所に向かった。
「すみません。先ほどの言われていた話を私にも教えて頂けませんでしょうか?」
「えっ?ハイエルフ様の事ですか?」
「や、やはりハイエルフ様と・・・」
「はい、私も聞いた話ですが最近ハイエルフ様が辺境伯領に来られて、なんと家を買われたそうなんですよ。凄いですよね、あのハイエルフ様が近くにお住まいになられるみたいなんですよ。」
それを聞いたエルフの女性は病に倒れた人々を救うにはハイエルフ様に縋るしかないと決意を固めていた。
エルフの女性はパーティメンバーの元に戻りハイエルフ様のお知恵を拝借するべく情報を集める様に相談した。
夜遅くまで情報を集めた結果、貴族街近くに家を買い今日からそこに住み始めたという事だった。
早く病に苦しむ人々を助けたいと心が荒立つが、流石にこの時間からお伺いするのも失礼になるため明日の朝にお伺いするべく宿へと向かった。
遡る事10時間前、錬金術の兄弟子バーカターを撃退した俺は錬金アイテム買い取り員、名前をルギーさんと言うらしい。ルギーさんから常に不足しているポーションを定期的に納品してくれないかと話を貰った。
特にお金に困ってはいなかった為、断っても良かったがエリナさんは困っている人を助けたい心が強いために引き受けて欲しそうにしていた。
「その話の諾否を回答する前に聞きたいことがあるんですが。。。」
「はい、費用の事ですね。ポーションは・・・」
「あ、いいえ、そうではなくて、常に私が作るわけではないんですが、数名ポーションを作れる人がいるんですが、その人たちを連れてくるのなら家を買いたいなと思いまして。」
「おお!そういう事でありましたら、あちらでギルドの不動産管理を行っております。ささ、どうぞこちらへ。」
そう言ってルギーさんは俺の手を引っ張って不動産管理を行っている受付まで連れていかれた。
不動産の受付嬢はルギーさんに引っ張られる俺を見て、その後ろにいるエリナさんを視界に収めるとビックリした顔をした。
「ハ、ハイエルフ様が辺境伯領に住居を持って頂けるのですか!こ、これはハイエルフ様に見合う家をご紹介しなければなりません!」
そう言って、受付嬢は不動産管理部門のギルド員を総動員して辺境伯領で人が住んでいないギルド管理下にある家を探し始めた。
その圧倒的な熱気に圧倒されながら紹介される物件を待っていると話が纏まったのか受付嬢が俺たちの前に戻ってきた。
うん。1時間位待ったよ・・・。
受付嬢は3件の物件を紹介してもらったが全て貴族街に近い場所だった。3件とも資料ベースで確認したが、どこの豪邸だよ!って言葉が出てしまった。
もう少し小さめの家をと話をしてみたが、ハイエルフ様がお住まいになる家ということでギルド側も引かなかった。
お金が足らないと思いますという話をしてみたら、そこは勉強しますという始末。色々と言い訳をしてみたが受付嬢はまったく引かなかった。
仕舞には無料で差し上げるとまで言い出したので、話し合いを中止して実物を見せて貰う事にした。
受付嬢の案内で各家を見てみたがやはり全て豪邸だった。そんな中でも一番落ち着きがある家に決めギルドに戻った。
ギルドで家の買い取り金額を確認したところ、ギルド側は無料でと言ってきたが流石にそれはこちらも住み辛くなると言って説得した。
その言葉にギルド側も折れたが相場よりも安くして金貨100枚でとの事。言い合いしてもこちらが負けるのが見えたため、受付嬢に家を購入する手続きを行ってもらい購入金額を支払い契約を結んだ。
朝からバーカター騒動、家購入と予想外の出来事が2件も続きまだ午前中だと言うのに疲れ切ってしまった。
そして流れで家を購入してしまったが、普段は拠点に戻って住むとしても家具など何もないままというわけにもいかず、午後からエリナさんと家具を買いに行くことにした。
俺はエリナさんにお金は気にせずにあの家に合う家具などをお任せします。と伝えるとエリナさんは女性特有の拘りがあるらしく色々な店を回った。
調理器具から家具まで色々と見て回り気に入った物を手当たり次第買い、足らない調理器具や家具はどういったものが良いか要望を伝えて作ってもらほどだった。
前世でも今世でも女性の買い物好きは変わらない事を再認識した俺は買い物が終わった夕方に当初の目的であった聖水を買いに行っていない事に気づきため息をついた。
今の時間でもまだ教会は開いているらしくエリナさんと共に急いで教会まで行った。エリナさんは自分の村の事なのに家具など自分の好みで揃えられることにテンションが上がって聖水を手に入れる事を忘れてしまった事にテンションが急降下していた。
教会に到着した俺たちは教会の前で掃除を行っているシスターらしき人に挨拶を行い寄付を行うと共に聖水を売ってもらえるか確認すると一つ銀貨20枚で売られているとのこと。
エルフ村を綺麗に浄化するには最低10個は必要なため念のために20個分、金貨4枚分購入することにした。
教会で聖水は高価なため滅多に売れないし売れても月1個位であった。
シスターは大量購入に驚愕して、自分では判断できないと神父様を呼んできますと言って走って教会の中に入って行ってしまった。
俺たちは教会の前で茫然と待たされ、5分もしないうちに年老いた正しく神父!って感じの神父様を連れたシスターが戻ってきた。
エルフの村であった出来事を神父様に話をして大量の聖水が必要な事と、場所が遠いため不足しないように大量購入なんですと伝えると神父様は理解を示した。
神父様は聖水の準備に3日かかるため日を改めて来てくださいと仰られた。
俺とエリナさんは「それではまた後日お伺いします。」と挨拶して帰宅するのであった。
疲れ切った俺とエリナさんは、購入した家に帰ると折角なので購入したベッドを各部屋に配置して辺境伯領の家で初お泊りをすることにした。
調理器具も揃っていないため、露天で買った料理で夕飯を済ませて早々に眠るのであった。
久々のちゃんとした布団で寝た為、深い眠りだったのであろうか?いつもより遅めに起きるとエリナさんは起きており、出しっぱなしにしていた食器を片付けていた。
俺とエリナさんは調理器具も揃ってないため朝食は外で食べましょうと家の外に出ると庭を挟んだ門の前にエルフの集団が頭を下げた状態で待っていた。
「朝早くから申し訳ありません。ハイエルフ様にお願いがあって参りました。私たちの村で病が流行り危機的状況です。私たちは病に聞く薬を手に入れるため此処まで参りましたが力及ばず薬が揃っておりません。そこでハイエルフ様が此方におられると聞きお力をお貸し頂けますようお願いにあがりました。」
そう言うとエルフの女性はさらに頭を下げた。同じく頭を下げていた他のエルフの方もさらに頭を下げる。
「え~っと、頭をお上げ下さい。お力になれるか分かりませんが、ここでは何ですからどうぞお入りください。」
そう言って俺は門の扉を開けるとエルフの女性は頭を上げた。その女性の顔を見た俺はどこかで見た事あるような人だな~っと思っているとエリナさんが声を上げた。
「お、お母さま!」




