兄弟子2
バーカターはアリストテレスの弟子だけが持つネックレスを首から取り出た。
「これを見よ、これは錬金術師の大家であらせられるアリストテレス様の弟子だけが持つペンダントだ。」
錬金術の分析の魔法陣をベースに作成されており、アリストテレスのお手製で複製が出来ない様に特殊な素材を融合して分析をかけても成分が分からない様にしているらしい。
「錬金術師の中でも、これを持つ者は一段上の存在なのだよ。ワーハハハハハ!」
アリストテレス師匠は魔法陣を開発した錬金術師として有名で、何種類もの錬金術の研究成果を上げた事で錬金術の大家と呼ばれている。
アリストテレス師匠はその性格のせいか弟子をなかなか取らない事でも有名で弟子の数も両手で数えれる程しかいないと聞いている。
その最後の弟子が俺になるのだが、師匠以外いない場所での師弟関係なので知る人もいない。
「その錬金術師であるバーカターさんは何しにギルドへ来られたのですか?」
「ふふふ、私はギルドからの依頼でポーションを作ってやっているのだよ!この町で最高の錬金術師であるからギルドからお願いされているのさ!そして心優しい私は快く引き受けてやっているのだ!素晴らしいであろう!」
「ふむ。で、そのポーションって見せて貰う事できますか?」
「ほう!中々よい心がけだな!私が作りしポーションを見て勉強したいとは!良かろう!こちらに持ってまいれ!」
バーカターは大きな箱を持った男に指示を出し、ポーションを取り出して高々と持ち上げた。こいつは何故毎回動きが演劇っぽいのだろうか。。。
「そら、これが高度な技術で生み出されたポーションだ!」
そう言って俺にポーションを投げ渡した。売り物なのに扱い悪くないか?俺はポーションを眺めながら分析を行うと〈ポーション、回復効果:並〉と分析結果が表示される。
「良く出来たポーションですね。回復効果も中々の物みたいですね。」
「そうだろう、そうだろう・・・うん?良くできたポーションだとぉ~!お前如きに何が分かると言うのだ!このポーションは何年も何年も錬金術を研鑽した者しか作り出せない物だぞ!」
バーカターが作ったポーションを馬鹿にしたわけではないが、俺の言い方も悪かったし錬金術を知らないと思われている俺が評価したのが気に障ったのだろう。
う~ん。これは素直に謝った方がいいかな。それともアリストテレス師匠の最後の弟子は俺って事を言った方がいいかな?
「え~っと、確かにあなたの言っている事は正しいです。何度も練習しないと作れないですから一生懸命錬金術を研鑽した人でないと作れないですね。でも、私も錬金術師なのでポーションは作れるんですよ。」
そう言って俺は師匠から貰った弟子の証を取り出した。俺の手にある証を見てバーカターは後ずさりして指さし「そ、それは・・・」と小さく呟いた。
「はい。アリストテレス師匠と蟲の谷で出会い錬金術を教わりました。そして弟子の証としてこれを頂きました。」
俺の弟子の証はバーカターの証と多少異なり、免許皆伝者にのみ付与される印が付けられている。それを知っていたバーカターは俺を睨みつける。
「に、に、偽物だ!その証は偽物に決まってる!どこでそれを手に入れた!アリストテレス様の最後の弟子は俺様だ!」
「えと、さっきも言いましたけど師匠が蟲の谷で錬金術の研究を行っている所で出会い、約3年位かな?一緒に生活して錬金術の研究を手伝っている時に習いました。その時に免許皆伝の証としてこれを頂きました。」
「ば、馬鹿な!そんな馬鹿な!」
バーカターは異常なほど取り乱し独り言をブツブツと呟いている。師匠の最後の弟子というのがバーカターにとって大事な事だったんだろう。
しかも、弟弟子である俺が免許皆伝を貰っているのが気に食わないみたいだ。
「ははははっハーハッハハーハ!貴様は錬金術師を名乗っているが、実際に物を作ってはいないではないか!師匠の手伝いをしていただけで貰ったのではないか?」
ん?こいつはイキナリ何を言い出したのだろうか?他人が何を考えているのかなんて分かるはずも無いが、どういう思考をして今の発言にたどり着いたのか・・・興味深いぞ。
俺がバーカターの発言を考察していると黙っていた事に気を良くしたバーカターが勝ち誇った顔をしだした。
「いや、どういう思考をしたら今の言葉が出てくるのか不思議だっただけですよ。」
「うぬぬぬぬっ!では今ここでポーションを作ってみよ!私は自分で見たものしか信用せん!さあ今すぐに!」
俺はやれやれと言う顔をして、アリテシアさんにポーションの素材があるか確認する。
「タポロス草、ミドキノコ、水ってありますか?」
「は、はい。あると思います。」
「すいませんが、それぞれ売って頂くことは可能でしょうか?」
「はい。大丈夫です。今から取ってきますので少々お待ちください。」
そう言ってアリテシアさんは小走りで素材を取りに行った。
「ぶっふふふ、ふはははははははっは!おい、お前ら聞いたかポーションの素材も知らないみたいだぞ!くはははは!」
「「「ワーハッハハハハハーー」」」
バーカター達の馬鹿にする笑い声を無視しながらアリテシアさんが素材を持っているのを待っていると程なくして素材を抱えて帰ってきた。
「お待たせしました。こちらが素材になります。」
そう言って持ってきた素材を俺に手渡した。
「ブッ!グフフフフ、さあ、それでポーションを作ってみたまえ。ぶはっははは・・・」
アリテシアさんはバーカター達が俺を馬鹿にした様に言っているのを聞き困惑した顔をしていた。
俺はそれを気にせず、魔力で魔法陣を描き始める。それを見たバーカター達は何が起こったのか分からないながら驚きを顔で表現していた。
アリテシアさん達も口を手で押さえながらも目を見開き固まっていた。
時間をかけずにサクッとポーションを作成すると、エリナさんがポーションを入れる瓶を差し出してくれた。
俺はその瓶にポーションを入れてアリテシアさんの前にコトッと置いた。
「はい。ポーション作りましたよ。」
バーカターは俺の言葉でハッと意識を取り戻した。
「い、い、今のは何だ!それは何だ!」
「え?錬金術でポーションを作っただけだよ?」
「そんな嘘を言うんじゃない!ありえない!ありえない!ありえない!魔法陣を使わずして出来るわけがないだろぉ!!!」
「いや、実際にポーションがそこにあるじゃないですか?」
「ぐぬぬぬぬ!いや、まだポーションと決まったわけじゃない。私が直々に分析してやろう。」
バーカターは分析の魔法陣を取り出しアリテシアさんの前に置いたポーションを分析にかけた。
分析すること数十秒、バーカターがガクガクと震えだし膝から崩れ落ちた。
〈ポーション、回復効果:最上級〉
騒ぎで集まってきていたギルド職員の錬金術アイテム買い取り員が分析の魔法陣を持ってきて俺のポーションを分析にかける。
「そ、そんな、公開されている素材じゃないのに最上級のポーションって・・・」
ギルド職員も驚愕で顔が強張っている。
「き、君、これはどういう事なのか説明してくれないか。」
「錬金の技術は個人の極秘事項です。でも、少しだけ言うならば錬金術師に公開されているレシピはある程度簡単に作れるように考えられているものです。例えばポーションなども公開されているレシピ以外でも作成できるのです。ちなみ、今私が作成したポーションは錬金レベル4位の難易度です。」
「ば、馬鹿な!錬金レベル4だと。。。通常ポーションが錬金レベル2だぞ・・・今の私では作成できないものだと・・・」
バーカターがそう呟きながら後ずさりしてから振り返りダッシュでギルドから出て行った。
バーカターの取り巻き達は置いて行かれた事に気づき慌ててバーカターを追いかけて走り去って行った。
「あの、シュンさんご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」
そう言ってアリテシアさんは頭を下げた。
「いえ、アリテシアさんはあの人に迷惑をかけられている被害者じゃないですか、私は何もしてないので頭を上げて下さい。」
俺とアリテシアさんのやり取りが落ち着くと錬金アイテム買い取り員のギルド職員が声をかけてきた。
「君、シュン君というのかね。その、君は錬金術師なのか?」
「ええ、錬金術を多少ですが嗜んでいます。」
「おお!シュン君が作ったポーションは品質が最上級と分析結果が出ている。ギルドではポーションなどは常に品薄で困っているんだが、定期的に納品してくれないか?」
う~ん。これはある意味では良い提案なんだけど拠点に戻るし、色々な所を見て回りたいからなぁ~。
どうしようか・・・と俺が悩んでいると、エリナさんが小声でどこかに移動ドアを設置出来れば何とかなるんではないですか?と提案してくれた。
確かに辺境伯領に移動ドアを設置してある程度の品質があるポーションで良いのならエリナさんやシュテーナちゃんが作ったポーションを収めれば、エルフさん達の収入にもなるから良いか。と考えをまとめ上げた。
移動ドアを設置できる場所って宿とかだと無理だし、そこら辺に設置する訳にもいかないよな~。
そう言えば大金を手に入れたし、家って買えるのかな?そこら辺を確認してから回答するかぁ~。
俺は手に入れた大金の使い道が見つかりどことなくホッとした気持ちになった。




