解体所パニック
ギルドに登録に来た俺たちは受付嬢のアリテシアさんに手続きをして貰っている時にお約束の新人が絡まれるを体験した。
その時に騒ぎを聞きつけたギルドのお偉いさんが登場し、アリテシアさんに状況を確認し絡んだバッテスの悪行を報告した事でバッテスが激情しアリテシアさんに切りかかろうとした。
ギリアムドは「チッ!」と舌打ちして大急ぎで階段を飛び降りるが距離があり間に合いそうもない。
それを見て俺はバッテスが握っている手を掴み振り下ろしを止めてから殴りつけて止めようと手を出そうとした瞬間、エリナさんが腰にかけてあった弓を取り出しバッテスの剣を弾き続けて左上段蹴りを放った。
綺麗にバッテラの顔に蹴りが入り、バッテラは膝から崩れ落ちていった。
エリナさんは蹴りを放った時にフードが外れ顔を出していたが気にしていないようであった。
アリテシアさんは華麗にバッテラを倒したエリナさんに心を奪われたようで目がハートになっていた。
ギリアムドは瞬く間の出来事に呆気にとられて動きを止めていた。俺はギリアムドに向かって「あの、どうすればいいですか?」と声を掛けるとギリアムドは再起動して動き出した。
「まずは、そこの迷惑をかけた奴らを縛り上げよう。おい、近くにいる教導員たちを数名連れてきてくれ。」
「はい!」
ギリアムドはギルド職員に支持を出して教導員と呼ばれる人を連れてくるように指示をだした。
教導員と呼ばれる数名が到着するとバッテラ達を拘束して連れて行った。ギリアムドはそれが終わるのを見届けると俺たちに声をかけてきた。
「ギルド員が迷惑をかけてすまないな。新人さんか?」
「はい。今登録しようと手続きをしてた所で絡まれまして。」
「そうか、あんな奴らばかりでは無いのだがな。ところで、そちらの方はハイエルフ様なのか?」
俺はエリナさんの方を振り向くとエリナさんのフードが下りていて顔を出した状態だった。もう周りの人も見ているのでどうしようも無いかと思いそのまま頷いておいた。
「ハイエルフ様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。あなたが助けて下されなければアリテシアは切られていたでしょう。」
ギリアムドはそう言って頭をさげた。その言葉と行動にアリテシアはハッと気づき慌てて頭を下げた。
「頭を上げて下さい。私たちは出来る事をしただけですので。」
「ありがとうございます。ところで、何故ギルド登録をされているのかお伺いしても?」
俺たちはエルフ村で起こった魔物襲撃事件で聖水が必要になり手に入れるためにコッフェロ辺境伯領まで来た事、ここに入るために身分証が必要になったためギルドに登録に来たことを伝えた。
「事情は理解しました。ギルドの登録を大急ぎで行います。アリテシア大至急ギルド登録を行ってくれ。」
「はい、ギリアムドさん。」
アリテシアさんは俺たちのギルド登録を行ってギルド証を持ってきた。
「では、こちらの針を使ってギルド証に血を一滴垂らして下さい。」
俺たちは各々のギルド証に血を垂らすと軽くギルド証が光った。
「ありがとうございます。ギルドの登録が完了です。お二人はギルドレベル1になります。続けてギルドの説明を行ってもよろしいでしょうか?」
「「はい、お願いします。」」
「ギルドはバルッサ王国が運営しております。ギルドでは王国から市民まで幅広く依頼を受け付けており、ギルド員がそれぞれ自分にあった依頼を受けて依頼を解消しております。各種依頼は難易度をレベルで現わしており自分のレベルにあった依頼を受ける事をお勧めしております。」
「私たちだと、レベル1の依頼がお勧めって事ですね。」
「はい、その通りです。ギルド内は「討伐」「護衛」「傭兵」「素材採集」「雑事」の5種類に分かれておりますので、自分が受けたい依頼を探す時の目安にして下さい。依頼を何度か達成されると功績が認められギルドレベルが上がります。ギルドレベルは1から10まであり、現在レベル9、10の方はおらず最高レベルが8の方が4名おられます。」
「へ~、なかなかレベル上げるのが厳しいんですね。」
「規定で決まっていますが、レベル9や10になると国家の危機を救った位の功績を上げないと認められませんから。」
「はは、そりゃ無理ですね。」
「ふふ、ですがレベル8でも人外の強さが無いとなれませんので。そして依頼を達成すれば問題ありませんが、依頼失敗を失敗すると依頼料の30%をお支払い頂くことになりますのでご注意下さい。」
「なるほど、自分に合っていない依頼を受けて失敗させる機会を減らすための仕組みですね。」
「はい。その通りです。高レベルの依頼は報酬も高いですが、その分難易度も高いため過去に何度も依頼失敗がありペナルティ制度が作られました。」
「ふむ。討伐などの場合、受けた人が死ぬ可能性も高そうだからね。」
「当ギルドでは、お金はかかりますが新人さんが実力不足で死ぬことが無いように実技訓練を実施して頂ける様、ギリアムドさんの様な教導官が在住しておりますので自分の実力に自信が付くまで実技訓練を受ける様にお勧めしております。」
「ほ~、雑事の様な危険度が少ない依頼でお金を貯めて実技訓練で実力を上げて討伐などを受けるって流れか、きちんと考えられていますね~。」
「その通りだ。今言った通り筋道を作っているのだが、如何せん己の実力を過信する輩が多いのが実情だ。」
「教導官も苦労されているんですね。」
「全くだ。先ほどのバッテスの様に実力に見合わない依頼を受けて失敗するを繰り返す馬鹿者が多いためギルドの評価自体も芳しくないのだよ。」
俺とギリアムドは二人して苦笑してしまった。
「ギルドの説明は以上ですか?」
「はい、あ、いえ、ギルドでは討伐された魔物の買い取りも行っております。討伐依頼以外の魔物も買い取り出来る物がありますので、もし依頼中に魔物を倒した場合はお持ち下さい。解体が苦手な場合は、そのままの状態で持ってきて頂いて問題ありません。」
「なるほど。ちなみに今何体か持ってますが、買い取りして貰えるのですか?」
「え?え~っと、何も持っていなさそうですが・・・」
「あ~、このカバンのにあるんですが、ちょっと特殊なカバンで結構な物が入るんですよ。」
そう言って、俺は肩から掛けているカバンをパンパンと叩いた。
「ほう、迷宮産のカバンか高レベルのギルド員が持っているのを見たことがあるが、登録したばかりの者が持っているのは珍しいな。」
「ま~、色々ありまして、それでどちらに行けばいいんですか?」
曖昧な返事をしてカバンから意識を反らすように誘導するとギリアムドが案内を申し出てくれた。
ギリアムドについていくとエプロンをした大柄な男がいる受付に案内された。
「ここが買い取り窓口だ。ここで魔物を出すと査定してくれるぞ。」
「なるほど、案内ありがとうございます。でも、ちょっとここに出すのは難しいですが倉庫かどこか広い場所はありませんか?」
「そうか、このカウンターには乗らない位大きいのか・・・ガニーオ、解体所は今開いているか?」
「おう、今は昼過ぎだから開いてるぞ。大物の買い取りか?」
「そうみたいだ、おれも一緒に行くから案内してくれ。」
「了解だ。こっちだ付いてこい。」
ガニーオは買い取り窓口の横にあるドアを開けて解体所まで案内を始めた。俺たちは案内されるがまま解体所まで行くと大型スーパー位の広さがある建物へとたどり着いた。
「ここが解体所だ。この広さなら大丈夫だろ。」
「うん。十分ですね。では、ちょっくら失礼して・・・」
そう言って俺はアイテムボックスから頭が3つあるボス羊と、頭が2つある羊を100体取り出した。
「「な、なんじゃこりゃあああああぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁ!」」
「こ、こいつはトリプシルプとツイシルプじゃねーか!」
「なにぃィィィ!魔鳥山の裾野にいる討伐ランク6と3の魔獣か!」
「・・・そうだ。こいつらは集団で行動するため実際には大人数で討伐するしかない魔獣だ。ここ数年は討伐された記録がないはずだ・・・」
「くっ!大物すぎるだろ・・・しかし、この素材は貴族たちがここぞとばかりに買い取るだろうな。」
「ガニーオ、休んでいる解体メンバーを全員集めてくれ。シュン、全て買い取らせて貰うが査定に時間が掛かる、済まないが明日もう一度ギルドに顔を出してくれるか。」
「分かりました。大量に持ち込んで申し訳りませんが買い取りをよろしくお願いします。」
そう言って俺とエリナさんは解体所からギルドに戻って城門へ向かって行くのであった。




