ストラリク村
エリナさんとゴーレム馬の旅は順調に進み、夜には移動ドアを使って拠点に戻り村長とローラーンさんから報告を聞くが特に問題は発生していなかった。移動ドアは岩場の目立たない場所に設置し、ゴーレムを2体警護に配置して安全を確保した。
エリナさんから向かうのは街ではなく村で、ストラリク村という名前だそうだ。
エルフの村で採取した薬草と調味料を交換しているらしい。あまりストラリク村には滞在しなかったため交易する以外何があるか分からないらしい。
エルフ村からストラリク村までは徒歩で2ヵ月掛かるらしいが、ゴーレム馬での移動だと7日ほどで村まであと少しという所までたどり着いた。
ゴーレム馬で村の前まで行くと警戒されると思われたので、村から見えない位置で移動ドアを使いゴーレム馬を拠点に戻してから徒歩でストラリク村へ向かった。
「エリナさん、ストラリク村へ入るには何か手続きが必要なのですか?」
「はい。出身村と名前を門番の方に伝える必要があります。シュンさんは私たちの村出身としておけば問題なく入れますのでそう言って下さい。」
「なるほど。分かりました、エリナさんと同じ村出身と言わせてもらいますね。」
エリナさんと雑談しながら歩いていると程なくしてストラリク村へと到着した。ストラリク村は柵で囲われただけで門らしき場所に槍を持って皮の鎧を着た門番が2名ほど立っていた。
「おはようございます。二クスティの森のエルフでエリナと言います。目的は交易と情報交換です。」
「「は、ハイエルフ様!!ははぁ」」
そう言うと門番2人は槍を置いて土下座し始めた。
「あ、あの。。え~っと。。。」
門番の急変した対応にエリナさんは何て言葉を掛ければ良いのかわからずにアタフタと慌てていた。
俺はそんなエリナさんの姿が可愛らしいなと思いながら見ていると、
「シュンさん、ど、どうしましょう・・・」
困り果てたエリナさんが俺に助けを求めてきた。
「あの、エリナさんがお困りの様です。顔を上げて話を聞いていただけますか?」
と声を掛けると、門番たちは恐る恐る顔を上げた。
「申し訳ありません。今すぐ村長をお連れします。少々お待ちください!」
そう言うと門番二人はダッシュで村の中へ走って行った。
「門番が二人ともいなくなって大丈夫なのか?」
エリナさんと見つめあいながら苦笑をしていると真っ白い顎髭を生やした老人が杖を突きながら大急ぎでやってきた。
「はぁはぁはぁ。ハイエルフ様、私がここの村長でマランダと申します。この度は私たちの村にお越しいただき誠に光栄に存じます。」
「は、はい。二クスティの森のエリナと申します。」
「ご丁寧にありがとうございます。ささ、長旅でお疲れで御座いましょう。我が家で旅の疲れを癒して下さい。」
そう言うと村長はエリナさんを案内し始め村の中へ入って行く。エリナさんは困惑しながらも村長の後に付いていくので、俺も一緒について行こうとすると門番が槍を向けてきた。
「止まれ!お前は何者だ!」
「えっ?え~っと、エリナさんと一緒に旅をしているシュンと申します。二クスティ村出身です。」
俺がそう言っても門番は槍を向けたまま疑惑の目を向けている。
「お前は人族だろう。ハイエルフ様が住まわれている場所に人族が住んでいるはずが無かろう!怪しい奴め!我が村に押し入ろうとする盗賊の類であろう!痛い目に合う前に去れ!」
門番が俺に向かって去れと言っている時にエリナさんが騒動に気づき急いで戻ってきた。
「あの、シュンさんは私と一緒に旅をしてきた方です。シュンさんは入れないのでしょうか?」
エリナさんは困惑顔で門番に確認すると、門番は自分の間違いに気づいたらしくエリナさんに土下座した。
「も、申し訳ありません。ハイエルフ様の従者の方とは知らずにご無礼を致しました!」
いや従者じゃねーし、俺に謝れよと思っていると村長がまた大急ぎで戻ってきた。
「ハイエルフ様、こちらの不手際大変申し訳ございません。従者の方もご一緒にお越しくださいませ。」
村長はそう言って頭を下げてきた。エリナさんは俺が従者と言われた事を訂正しようとしていたが、面倒くさいのでエリナさんと目が合うと首を左右に振り訂正を拒否しておいた。
村長は再度案内を開始し、俺とエリナさんは村長の家へ向かった。
村長宅に着くと、広めの部屋へ通され村長から再度挨拶をされこちらの目的を語った。
「聖水ですか。大変申し訳ありませんが私たちの村には教会がございません。聖水は辺境伯様のご領地へ行かなければ手に入らないと思います。」
「辺境伯領ですか。どの様に向かえばよいのでしょうか?」
「ご安心下さい。馬車はございませんが、牛車でお送りいたします。」
「あ、いえ、道を教えて頂くだけで。。。」
「いえいえ、ハイエルフ様を歩かせるなんて出来ません。牛車と案内の者を準備いたしますのでお待ち下さい。」
そういうと村長は大急ぎで部屋を出て行った。
「ハイエルフってだけで、こんな扱いになるのか・・・」
「そうですね、私もビックリしています。前に来た時は普通に接して頂けたのですが、ここまで対応が変わるとは思いませんでした。」
「しかし、牛車が準備されると拠点に戻れなくなるね。一応カバンを持ってるので、こっそり拠点に戻って毛布とかを入れてくればある程度誤魔化せるとは思うけど、移動に時間がかかっちゃうね。」
「はい。でも村長さんの好意ですから断り切れないので仕方ないですよね。」
「ちょっと、トイレに行くふりして拠点に行ってきます。戻れない事を伝えるのと野営に必要そうな物を持ってきますので少し待っていて下さい。」
「分かりました。父にも伝えて貰えますか。」
「了解です!」
そう言って、俺は部屋を出て村長の奥さんにトイレの位置を聞いて移動ドアでこっそり拠点に戻り、エリナさんの父親とローラーンに状況を説明して必要そうなのを持って戻った。
部屋に戻り暫く待つと、村長が戻ってきて案内人が明日からなら案内できるとの事で今日はこちらに泊まって下さいと頭を下げた。
エリナさんと目があい頷くと「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」とエリナさんが答えた。
村長は笑顔満面で再度頭を下げ、奥さんの元へ走って行った。こんなに落ち着きが無い村長で大丈夫か?と心配になってしまう。
ストラリク村は、農業で成り立っている村でお店は無く行商人から必要な物を入手するエルフ村とあまり変わりがない村だった。
その為明日の出発までやる事が無いが、村を散歩しようとすると村人が拝みだすのでエリナさんが外に出る事を嫌がった。
エリナさんは俺が拠点に戻った時に持ってきた錬金術の本を読み始め、俺はガラスの塊と魔石などを錬金術で融合させ色ガラスっぽい物を作って時間を潰していた。
夕方になり、村長からの夕食をご馳走になったが主食のパンが師匠の所で食べた黒パンよりマシな程度の食感だった。
前世のパンがとてもとても懐かしく感じ、聖水を手に入れたら小麦なども色々と手に入れて拠点の食生活をさらに向上させようと心に誓った。
夜が更け暗くなると寝るのが村人の生活で、俺とエリナさんは隣あう部屋でそれぞれ眠った。
翌日、村民に見送られ牛車に乗りのんびりと辺境伯領へ向かって出発した。
辺境伯領の正式名称はコッフェロ辺境伯領という名前で、ストラリク村から3日ほどでサーンツル村、そこから4日ほど行くと到着する距離にあるらしい。
案内してくれたハチャーエさんと話を聞くといつもなら何度か魔物を見る事もあるそうだが、ここ数日魔物が南の方へ行ったため見る事が少なくなっているらしい。
たぶん、あのエルフ村を襲った軍勢の事だろう。何であんな行動を取ったのかはいまだに不明だ。
辺境伯領の近くは特に安全に注力しているらしく、兵士が領地近辺の魔物を相手に実践訓練を行っているそうだ。
道中何度か野営を行ったが、魔物が出る事もなく無事にコッフェロ辺境伯領へ到着した。
さて、ここで聖水が手に入ればいいんだがどうなることやら・・・。




