どこでも特訓
エルフ村の危機を知った俺たちはカルーゼとエリナさんを送りだすと、移動ドアの作成を行っている時にシュテーナちゃんが村の人が来た時にどこに避難してもらうか確認してきた。
確かに俺の家では村の人全員を避難させることが出来ないが、城壁で囲っているとは言え外に居て貰うのは心苦しい。
「アロン君、シュテーナちゃん、二人でエルフ村の人が住みやすい場所を選んでくれる?そこに家を作るから。」
「「はい!すぐに決めてきます!」」
二人はそういうとダッシュで自分たちが育てた木々の所へ走って行った。
俺は移動ドアを作り上げると、エリナさん達が入って行ったドアと新しく作ったドアの系3ドアを持ってアロン君達の方へ向かって走った。
シュテーナちゃんを見つけるとアロン君と真剣に話し合っていた。
「木々の育成を考えるとこの辺りが一番良さそうだよね。」
「そうだな、みんなが一時的に避難してくるとしても木々があった方良いと思う。」
二人に近づいていくと俺に気づいた二人がこちらを向き、両手を上げて大きき手を振ってきた。
「この辺りでいいの?とりあえず、大きい建物を作るから村人は何人くらいいる?」
「え~っと、200人位いると思います。」
「了解!」
俺は多めに考えて300人位入る建物をイメージして魔法を発動させる。
「アースクリエーション!」
大地が盛り上がり、家というかマンションというか分からないけど、とりあえず家族別に住めるように部屋を区分けして作り上げた。
「とりあえずの急増だから一時的に、ここに避難してもらおう。」
「はい。避難場所としては十分すぎだと思います。」
「よし!では、移動扉をここに設置して、皆の所に向かうけど準備はいいかい?」
「「はい!」」
二人の準備が出来ているのを確認して、移動ドアを潜りエルフ村へと移動した。
扉を抜けると数人の村人が迎えに来ており、現在の状況を教えてくれた。
状況を教えて貰っている時に村長がやってきて、エリナさんから今後の話を聞いたと教えてくれた。
俺は拠点へと行ける移動ドアを設置して、村長に村人たちの指示をお願いした。
「シュテーナちゃん、拠点側に戻って皆さんの誘導をお願い。」
「はい!わかりました。先に向こうへ行っておきます。」
シュテーナちゃんはそういうと移動ドアへ潜っていった。村長は村人達に説明を行い移動ドアへ誘導していった。
俺とアロン君は、村長宅から出て外の状況を確認する。
防壁としている家の上にカルーゼとテイルがおりゴブリンやハウンドに向け矢を放っていた。そのまま辺りを見回すとエリナさんがこちらに駆け寄ってきているのが見えた。
魔物の群れは、ゴブリン、ハウンド、ゾンビという構成らしく、足の遅いゾンビだけまだ到着していない状況みたいだ。
とりあえず、防衛線の近くに来ているゴブリンとハウンドを先に倒す必要があるが村の各所から魔物の声が聞こえている。
俺は周りを見渡してから村長宅の上を確認した後、アロン君に向き頷くとアロン君は俺が考えていることを理解したらしく俺から距離を取ってこちらを向いた。
俺は左足を前に出し両手を膝の上で組むとアロン君が俺に向かってダッシュして、俺の手に片足を踏み込むと俺は力いっぱい上空へ投げ上げた。
「あ、投げ上げすぎちゃった。。。」
「うわぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁっぁ!シュンさん投げ上げすぎだよぉぉぉぉぉ!」
叫びながらもアロン君は風魔法を使って落下速度を緩やかにしながら弓を構え、上空からゴブリンとハウンドに向かって矢を射ていた。
「お~、数日の訓練であそこまで出来る様になるのは才能があるんだね~。エリナさんもそう思うでしょ?」
俺は上空を見ながらエリナさんに相槌を求めた。エリナさんは苦笑しながらも「そうですね。」と回答を返してくれた。優しい人だ。
アロン君は、なるべくゆっくりと村長宅に降り立ったので俺は矢筒を何個か投げ上げた。
アロン君も慣れたもので矢筒を自分の近くに置くと戦況が悪い場所を確認して矢を放ち続けた。
俺はエリナさんと一緒にカルーゼ達の方へ行き、テイルさん達の傷の手当てを行った。
手当てが終わり次第弓矢でゴブリンとハウンドの掃討戦を行うと30分程で全滅させた。
ゾンビが第二防衛線に来るまであと10分程位の時に避難が完了したと報告しにシュテーナちゃんがアロン君と村長を連れて合流してきた。
「シュンさん、皆の避難が完了しました。」
「シュテーナちゃん、報告ありがとう。」
「シュン、もうすぐゾンビが来るがどうやって戦えばいいか知っているか?」
「師匠が残した資料に書いてあった事だけど、火で燃やす。ハンマーなどで叩き潰す。ゾンビの体を維持している体内のどこかにある魔石を破壊する。この3種類が一般的らしい。」
「火は出来れば使いたくないな。ゾンビは1000体位いるそうだから火を使うと、この森が全て焼き尽くされそうだ。」
「そうだね、火は最終手段と考えると魔石を破壊するしかないね。ハンマーとか無いから。」
そういうと俺は4人に向かってニッコリ微笑んだ。
ハイエルフの4人は俺が考えた事を理解したのか少し後ずさった。
「では、折角なので訓練として一矢一殺で1000体のゾンビを倒そうか!」
俺は元気よく4人に向かって訓練内容を告げると、4人はやっぱりかという顔をした。
「シュン、分かっていると思うがこれは実戦だぞ。」
俺は頷き、「ああ、分かっているよ。ゾンビは足が遅いので狙いが付けやすく、魔石の位置を把握する必要があるため集中力を高める訓練になるし、一撃で倒すことが出来るはずなので思ったほど危険はないはず。」
簡単にだがゾンビの弱点を説明すると4人とも納得したのか諦めたのか頷いた。
村長は俺たちの話についていけず茫然としていた。
俺は村長に防衛戦に回っていたエルフの戦士たちを集めて貰いゾンビが近づきにくいように矢を放って貰うように依頼してから、カルーゼ達とゾンビが見下ろせる家に登った。
俺は4人に約300矢を渡し、それぞれ配置についてもらい各自の判断でゾンビに矢を射るように打合せを行った。
ゾンビが来るまでの時間で4人は打合せを行って精神集中を行っていた。俺は村長たちがやってきたので家から降りて、矢の雨を降らす場所へ移動して射る矢を土魔法で生産していった。
ゾンビの呻き声が聞こえてくると精神集中していた4人は弓を構え各々ゾンビに向かって矢を放った。
ゾンビに矢が刺さるとゾンビは一、二歩歩くと電池が切れたように崩れ落ちた。
それを見ていたエルフの戦士たちは感嘆の声をあげ自分の目が信じられない物を見たような顔になっていた。
4人は集中を切らさずに淡々と矢を射ながらゾンビたちを倒して行くが、ゾンビの数が多いため徐々に近づいてきていた。
エルフの戦士たちは矢を構え矢の雨を降らせ始めた。ゾンビは矢の雨をものともせずに向かってくるが矢が刺さるとその衝撃でゾンビが倒れたり足に刺さったりして近づかせなかった。
ゾンビとの攻防を続ける事1時間強でゾンビは残り数体まで減っていた。
額に汗を垂らしながら集中力が切れたアロン君とシュテーナちゃんは弓が弾けないほど肩で息をしながら座り込んでいた。
カルーゼとエリナさんは、肩で息をしながらも狙いを付けながら最後の一体まで矢を射掛けゾンビを殲滅した。
流石に4人は精神的にも肉体的にも疲れ切っておりその場に座り込んだ。
村長はエルフの村が守られたことに感動していたが、俺は師匠の本で読んだゾンビを倒した後の問題があることを報告した。
「村長、ゾンビは倒した後も厄介で腐敗した肉体が毒素を持って大地に吸い込まれると毒の沼地になるらしいので早急に対策を打つ必要があります。」
「ど、毒の沼地!」
「ええ、私も資料で読んだだけですが、そのまま放置するとこの辺りの木々が腐っていくと思います。」
「ど、ど、どうすればいいのかね?」
「聖水があれば浄化できるらしいのですが、エルフの村に聖水はありますか?」
「い、いや、聖水は神殿が管理していて多額の寄付と共に貰う事が出来ると聞いているが、我々には必要が無かったから・・・。」
「まあ、普通はそうでしょうね。う~ん、どうしようか。。。まずは地面に吸い込まれない様にあの辺りの大地を高質化して風で吹き飛ばない様に囲うか。」
そういうと俺はゾンビの残骸がある大地を高質化して、さらに石の棺(巨大すぎるが)の様に囲うイメージで魔法を発動させた。
ゾンビの残骸が巨大な棺に隠れたのを確認すると村長の元に向かい報告を行った。
その頃にはカルーゼ達の体力も多少なりとも戻っており、村長の元へ集まっていた。
ふ~、事後処理があるけど一旦はこれで落ち着いたかな?でも、聖水が手に入るまでは此処に住むのは危険だろうな~。




