エルフ村の危機
エルフ村では現在魔物の群れが村に向かっているのを発見し、大急ぎで防衛対策を行っていた。
村全体を防衛するのが厳しいが、村の外側を第一防衛線、家と家の間に柵を設け第二防衛線、村長の家周りを第三防衛線として戦えない者を村長の家に避難させた。
魔物の群れを発見したのが夕暮れで、村を捨てて移動するのが危険と判断したのだった。
テイルは第一防衛線の指揮を執っていた。魔物の群れが到着するのは夜になった頃の予定のため出来る限り防衛力を上げる手を打っていた。
落とし穴を掘り、柵を設置して魔物が分散しないようにして、矢の雨を降らす準備を行った。
第二、第三防衛線が完成する頃、夜も更け緊張感が増してきた。魔物の進行方向が変わる可能性を考えて、目印とならない様に火を焚かずにエルフの戦士たちは息を潜めて身を隠していた。
「ギャギャギャ!」「ギャギュー!」
魔物の声が聞こえてきたことによりテイル達の緊張が一気に上がる。
「はぁはぁはぁ。」若い戦士たちの息が荒くなり、喉が渇き、額から汗が流れる。
「「「ギョワァァァァァァ!」」」
魔物が一斉に声を上げた!やはり魔物が進行方向を変える事は無くエルフの村に突撃してきた。
テイルは魔物を引き付けてから矢を放つつもりだったが、若い戦士が緊張が耐え切れずに矢を放ってしまった。
「うわぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁっぁ!」
若い戦士が放った矢はゴブリンの腕を掠めて飛んで行った。
「「ギャギャギャ!」」
ゴブリン達は矢を放ったエルフを目指し走り出した。
「クッ!落ち着け!弓構え!まだだ!まだぞ!」
ゴブリン達が弓の射程圏内に入ったのを確認したテイルは「放て!」と合図を出すと一斉に矢が放たれる。
戦士たちが放った矢は、ゴブリン達に降り注いていく前面に居たゴブリンは矢が数本差さるとふらつきながら倒れる。
「どんどん矢を放て!」
テイルは戦士たちに指示を出しながら自分も矢を放っていく。ゴブリン達は矢を受けながらも前進してきており徐々に間を詰められる。
エルフ達との距離が大分縮まった頃に更にスピードを上げて突撃してくる。
「ギャギャッギャー!」
ゴブリンが手に持つ錆びた剣や棍棒を振り上げ攻撃を加えようとした時、ゴブリン達の足が沈み込み落とし穴に落ちていく。
「やった!成功しましたよ、テイルさん!」
若い戦士が完成を上げた瞬間、飛び掛かってくる黒い影が見えた。ハウンドが牙を剥き若い戦士の腕に齧りつく。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
パニックに陥った若い戦士はハウンドの顔を掴んで外そうと試みるが咥え込んだ牙が外れずにいた。
近くにいたエルフの戦士がナイフを出してハウンドの首に向かって一撃を振るいあげる。
「キャィン!」
ハウンドを倒すことは出来なかったが重傷を負わせることが出来た。しかし、若い戦士の腕は弓を弾くことも出来ないほどの傷を負っていた。
テイルは若い戦士に後方へ下がるように指示し、ハウンドに向かって矢を放つ。テイルが放った矢はハウンドの口に吸い込まれ喉の奥を貫く。
その一撃でハウンドの命は刈り取られてその場で倒れ込んだ。
ゴブリン達と同時にハウンドの群れが迫ってきていた。エルフ達は矢を放つがハウンドの速度が速いため中々当てられずにいた。
第一防衛線に保持していた矢の弾数が心もとなくなってきたのを確認したテイルは後退する支持を出し、自分は殿を務め被害が広がるのを抑えていた。
第二防衛線に到着したテイルは民家の屋根に上がり、弓を構えるが第一防衛線での戦闘で体力を使っていたため息が上がっていた。
民家を防衛拠点としたため、魔物が通る道が制限されたことによる事と、上段から矢を放つことで命中制度が上がりハウンド達にも矢が当たるようになっていた。
防衛策が当たった事により魔物を抑える事ができ余裕が出てきた時に、魔物たちが来た方向から何かが腐った様な匂いが漂ってきた。
「なんだこの匂いは、嫌な感じがする。」
「テイル、あれを見ろ!ゾンビだ!ゾンビが居るぞ!」
「ゾンビだと!くそっ!何故こんな所にゾンビが居るんだ!」
「どうする、弓ではダメージを与えにくいぞ。」
「とりあえず、ゴブリンとハウンドに集中して矢を射るんだ!」
ゴブリンとハウンドの数を減らす事を優先しゾンビは牽制に止め、敵戦力を削る事を優先した。
戦線が膠着状態に陥った時に、夜が明け朝日が差し込むことで魔物の群れがどの程度か把握できてしまった。
正しく絶望的な戦力差だった。ゴブリンが300以上、ハウンドが100前後、ゾンビに至っては1000以上いた。
ゾンビは移動速度が遅いため、まだ遠くに居たがこちらに向かっているのは確定だった。
テイルの意識がゾンビの群れに向き、隙を見せた時建物の影から回り込んだハウンド2匹がテイルの首筋に向けて牙を剥き飛び掛かった。
まさに、エルフの村は全滅の危機に瀕していた。
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シェリアリアスからエルフの村が魔物の群れに襲われているかもしれないと話を聞いたカルーゼ達は慌てて走り出そうとした。
「カルーゼ待って!走っていくつもりか?」
「シュン止めるな!ハイエルフになった俺なら走って行ったら2~3日でいけるはずだ!」
そういうと再度走り出そうとするカルーゼの肩を掴む。
「だから落ち着け、村長の家に移動扉を置いて来てある。扉を出すから戦闘準備を整えてくれ。」
「ああ、すまん。村に居ないときに魔物の群れに襲われていると聞いて動転してしまった。」
「扉はすぐに出すから、村の現状が分からないため向こうからこっちに来れる扉も作る必要がある。まずは、カルーゼとエリナさんが最初に向こうに行ってくれ。俺は扉を作り次第向かう。」
「シュンさん、僕とシュテーナは行ってはいけないのですか!」
「アロン君も落ち着け、俺の移動扉が出来て行き来が出来る様になった時に一緒に向かおう。」
アロン君とシュテーナちゃんは少し残念そうな顔をしたが、俺の意見に従ってくれた。
俺は移動扉を設置して、カルーゼとエリナさんが向こうに向かうのを見送りすぐに移動扉の作成に取り掛かった。
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村長の家に移動したカルーゼとエリナは、村長の家に避難していた村の人達に状況を確認していた。
「シュエツさん、今どの様な状況ですか?」
「カルーゼ?かい?その姿はどうしたんだい?」
「すいません、気になるでしょうが状況を教えて貰っていいですか?」
「ああ、すまないね。いまは魔物の群れが村を襲ってきていて、村の中に防衛網を引いて戦っている最中だよ。でも戦っている者たちが傷ついて退避してきている人数が増えてきて、私たちも手当などやってるところだよ。」
「シュエツさんありがとう、私もテイルたちと合流して防衛戦に参加してきます。」
そういうとカルーゼとエリナは外に出て前線を探し、テイルを見つけた時ハウンドに飛び掛かられている所だった。
二人は即座に弓に矢を番え、狙いを付けずに矢を放った。
「すまん、カルーゼ。俺はこれまでのようだ。お前たちは生き残ってくれ。」
テイルは自分の命運が尽きたと覚悟を決めた時、風切り音が聞こえ2匹のハウンドの眉間を矢が貫いた。
テイルはハウンドの状況を確認した後、矢が飛んできた方向を見るとカルーゼとエリナを発見した。
カルーゼは、テイルの元へ向かいエリナは父親である村長の元に向かった。
「大丈夫か?テイル」
「カルーゼなの、か?」
カルーゼは苦笑して「ああ、私の姿についてはこれが収まってから話をする。まずは魔物の群れを何とかするぞ!」
そう言って、カルーゼは弓に矢を番えドンドン矢を放って行く。正に一矢一殺の射撃だった。
エリナは、村長を見つけると駆け寄りシュンと打合せした内容を告げ、シュンが来ると同時に村長宅にいる村人を避難できるように手配してもらうよう依頼した。
「分かった。シュン君には迷惑を掛けるが好意に甘えよう。さっそく家に戻って手配しよう。」
そういうと村長は家に向かって走ろうとし立ち止まり。
「エリナ、シュン君との出会いは森の精霊たちの導きかもしれないな。この出会いを大切にするんだぞ。」
そういうと村長は走り出した。エリナは頬を赤く染め頷くのだった。




