進化
拠点で出来る事が一度落ち着いたため、カルーゼやエリナさんが育ててくれている作業を見学していた。
各自それぞれの場所で魔力を流すのだが、カルーゼの担当の場所が一番育っているのかと思ったらエリナさんの所が一番育ちが良く、その次にシュテーナちゃんの担当場所が育っていた。
どうやら魔力操作に関しては女性陣の方が得意のようだ。俺はエリナさんの担当場所にお邪魔して魔法を見学させてもらった。
俺は魔力の流れを見るために目に魔力を集めてエリナさんから放出される魔法を確認する。
エリナさんが地面に着いた手から扇型に流れていくのが見える。どうやら俺が城壁を作った時の様な流れと変わりはないようだ。ただ、エリナさんから流れる魔力の色が緑色の様に見える。
これが種族特性の色になるのだろうか?地面から流れる魔力が土と植物の栄養促進となっているようだ。確かに、俺が魔力を流しても此処までの効果は得られないだろう。
「エリナさん、俺も何か手伝えないですか?」
「そうですね。シュンさんの魔力を私を通して流してみましょうか。私たちもこの魔法を練習する時に魔力が多い方から魔力を貰ってやっていましたので、その応用で出来ると思います。」
「私がエリナさんに魔力を渡せば良いんですか?」
「はい。私が大地に植物を成長させる魔力を流しますので、シュンさんは私の肩に手を添えて私に魔力を流して下さい。」
「なるほど、了解しました。徐々に流して行きますので多すぎる場合は言って下さい。」
「わかりました。では、早速やってみましょう。私の肩に手を添えて魔力を流して下さい。」
そういうと、エリナさんは大地に手を付き目を瞑り魔力を流して行く。俺はエリナさんの肩に手を添えて少しずつ魔力を流していく。
「んっ、、、」「あっ、ああ・・・」
エリナさんが艶めかしい呟きを聞き赤面してしまう。ジロジロ見ているのも気まずくなるので植物の方を見ながらエリナさんに声をかける。
「大丈夫ですか?魔力を流す量を減らしましょうか?」
「ぃ、いえ、大丈夫です。シュンさんの魔力は暖かくてとても心地よいです。私は大丈夫ですので余裕がありましたらもっと流して下さい。」
「分かりました。もう少し強めに流しますね。」
そういうと俺は魔力を流す量を増やす。すると、植物が目に見える程勢いよく成長していく。
植物が成長していく様が嬉しく俺は魔力を流す量をさらに増やす。キャベツを付ける謎の木も大木と呼んで差し支えない程成長していた。
「んぁ、ああぁぁ・・・」
エリナさんの苦し気な声が聞こえ焦った俺は流す魔力量を減らそうとする。
【シュン、流す魔力をもっと増やして。】
「(何言ってるんだよ、エリナさんが苦しがっているだろ。)」
【大丈夫だから信じて魔力を流すの!】
「(何か思惑があるんだな?信じるぞ!)」
地球と会話をした後、魔力をさらに流すとエリナさんから艶めかしい声が聞こえる。暫くその状態が続いているとエリナさんが発光し始める。
「(え?なに?何が起こったのよ!)」
【やっぱり、シュンの魔力が原初の魔力だったからエリナって子が進化してるのよ。】
「(は?原初の魔力って何よ?進化って大丈夫なのか?)」
【安心しなさい。もっくん曰く、原初の魔力はこの世界に存在する魔力の事で人族やエルフ族、獣人族は原初の魔力をそのまま使う事が出来ないため、その種族に合うように変化させているの。でも、シュンが使う魔力は原初の魔力の為、エリナに流れる魔力が種族特性の範囲を超えたのよ。】
「(それは大丈夫なのか?聞く限り大丈夫じゃなさそうなんだが。)」
【簡単に言うと使える魔力の範囲が広がったのよ。レベルアップみたいなものね。】
「(で、俺はまだ魔力を流してていいのか?)」
【ええ、この光が収まるまで流しなさい。】
エリナさんが担当する範囲の植物の成長が凄まじいため、それに気づいたカルーゼ達がやってきた。
「シュンこれはどうなっているんだ?エリナはどこにいる?」
カルーゼがそう言ったタイミングでエリナさんの光が収まっていく。
光が収まるとそこにはエメラルドグリーンに光り輝く髪を持つ女性が立っていた。
「エリナさんなのですか?」
シュテーナちゃんが恐る恐る声をかける。
女性はゆっくりと目を開けて、シュテーナちゃんに優しく声をかける。
「ええ、シュテーナちゃん。私ですよ。」
「で、でもエリナさんその髪の色はどうされたのですか?そして、その魔力量は何ですか?」
「私にも分かりません。でも、とても爽快な気分です。」
「エリナ、その魔力量はハイエルフの様だぞ?一体何があったんだ?」
カルーゼが驚愕しながらエリナさんに何があったか事情を確認する。
エリナさんと俺はさっきあった出来事を説明する。
「はぁ~。またシュンか・・・」
「いや、確かに俺が原因かもしれないけど、こんな事になるなんて思わないだろ!」
「でも、エリナさん体は大丈夫なんですか?」
「ええ、まるで生まれ変わった様な感じで体調はとても良いです。」
「しかし、エルフがハイエルフに変わる事は初めての事だぞ。実際ハイエルフは生まれた時に異常な魔力を持つエルフの事を指して言われるが、エルフがどう頑張ってもハイエルフ並みに魔力を持つことは出来なかったと言われていたはずだ。」
「ほう、なら世界初の後天的なハイエルフの誕生って事なんだな。」
「そうなるな、昔に一度だけハイエルフに会ったことがあるが、今のエリナはあの時のハイエルフ以上に魔力を持っているみたいだ。」
暫くエリナさんの様子を見ながら話しこんでいたが、特に異常も見られなかった事からカルーゼも試してみたいと言ったのでカルーゼの担当エリアに向かった。
どうやら、エルフ達にとってハイエルフは憧れの存在らしく可能性があるならなりたい存在らしい。
あのカルーゼにもそんな思いがあったんだな。
カルーゼの担当エリアに到着するとエリナさんのエリアと比べて植物の成長が遅いのが一目で分かる。まあ、今のエリナさんの担当エリアは凄い事になっているけどね。
エリナさんにやった様にカルーゼにも魔力を流すと植物の成長がエリナさん程ではないがグングン成長していく。暫く流しているとカルーゼが光りだしエリナさんは自分がこんな感じになっていた事にビックリしていた。
光が収まるまで魔力を流しているとやはり植物が凄まじい勢いで成長していくのだが、これ大丈夫なのだろうか?
暫くすると光が収まり一回り体が大きくなったカルーゼがいた。髪の色も明るい赤色になっておりイケメンさ加減も上昇していた。
く、悔しくなんてないんだからね!
カルーゼはゆっくりと目を開けると自分の体に異常がないかを確認した後、身体能力がどこまで上がっているか確認を始めた。
何時ものカルーゼに比べて動きのキレが格段に上がり、力も大分上がっているようだ。
「凄いぞシュン。今ならゴブリンも一撃で倒せるだろう。ありがとう。」
そう言ってカルーゼは俺に頭を下げた。
「いやいや、そんな気にしなくてもいいって。俺も植物が成長してありがたいし。」
「「シュン兄ちゃん(さん)、私たちもお願いしていい?(ですか?)」」
やっぱり、アロン君もシュテーナちゃんもハイエルフに憧れている様でお願いしてきた。俺は了承し、ここから近いアロン君のエリアに皆で向かった。
アロン君、シュテーナちゃんとそれぞれ無事にハイエルフになりとても喜んでいた。
午後からカルーゼ達は自分の身体能力がどこまで上がっているのか確認するらしいので、俺は夕飯の食材を集めに海に行った。
海に出ると、遠くで魚がバシャバシャ飛び跳ねているのが見えた。気になってそちらを見ると小さい魚だけでなく大き目の魚までバシャバシャ飛び跳ねているのが見える。
「ん?なんだあれ?」
魚達の後ろに巨大な山が動いている様に見える。徐々にこちらに近づいている様に見えたその時、巨大な山がバカッ!と開いた。
山と思ったそれは巨大な魚で大きな口を開いて自分の前の水を吸い込んでいるようだ。
巨大な魚は食事をしているようで、小魚達はあの巨大魚から逃げているようだった。
巨大魚は2~3回ほど口を開けると満足する量を食べたのか反転して海の方へ向かって泳いで行った。
水中であんなのと遭遇したら確実に食われるな。と思いながら何時もの通りに海に入ると弾丸の様な物が俺にドン!ドン!ドン!とぶつかってくる。
俺は体勢を立て直し、何がぶつかったのか見てみると水中を高速で移動する魚だった。
前世で見た事ある魚で俺の記憶にあるより大きいかった。たしか、前世では時速30キロで泳ぎ最大速度が80キロだったはずだが、あの速度100キロ位出てないか?
あの巨大魚から逃げてきたのかカツオに似た魚が俺にぶつかって来ていたのだ。
俺を獲物と判断したのかカツオの大群は旋回して俺に体当たりを繰り返してくる。俺は慣れたものでタイミングを見計らい自爆覚悟の全力雷を発生してカツオの大群を殲滅した。
自爆攻撃も覚悟を決めれば耐えられるものだが、もっと安全に魚を取る方法を検討する必要があるな。
まぁ、とりあえず丁度良い新鮮な魚が大量に手に入ったから、カルーゼ達が新しく生まれ変わった記念に美味しい料理を考えなければな。




