異様と異常
唐辛子を殊の外気に入ったエルフの村人たちに連れられて森の奥へ行くと昨日とはまた違った素材が目に付く。
錬金術に使える素材が多く、一緒に来た村人たちに許可を取り何種類かの植物と石材を採取する。
暫く採取しながら歩いて行くと辺り一面赤い植物が広がる場所に出た。そう目的の唐辛子が群生する所だ。村人たちは歓声を上げ我先にと唐辛子を採取していくが、うん。どんだけ取るつもりなんだろう?そういえば何かデッカイ籠背負ってたな、あの籠いっぱい取るつもりなのだろうか?
・・・俺のエルフのイメージが崩れていくぜ・・・辛い物好きすぎるだろ・・・
「ぐわああああああああ」
急に叫び声が上がり、何かの襲撃があったのかと警戒しながら叫び声を上げた村人を見ると目を押さえて蹲ってる。よく見ると手に齧りかけの唐辛子と持っていた。多分だが齧って唐辛子の汁が付いた指で目を擦ったんだろう、その痛さで叫び声をあげたんだと想像できた。
何してるんだかと一安心していると何か嫌な感じが辺りを包み込む。唐辛子を採取している村人たちに向かって注意を促す。
「皆さん、何か嫌な感じがします。注意して下さい。出来ればこちらに集まって下さい。」
そう言った後すぐに
「キャーー!」
と叫び声が上がる。
俺は叫び声が上がった方を振り向くと木が動いて村人に襲い掛かろうとしていた。ダッシュで動く木に迫り右拳で思いっきり動く木を殴りつけると吹き飛び動いていない木にぶつかってその場に倒れて動かなくなった。
「ト、トレント・・・どうしてトレントがここに?」
「トレント?この動く木ってトレントという名前なのですか?」
「はい。魔物の一種で魔力の多い獣魔の森などの木に魔物の血を養分として与えると生まれると言われています。しかし、この地は魔力は余り多くないため魔物の血を与えても生まれないはずなのです。」
「とすると、動いて此処まで来たのかな?」
「判りません。しかし、トレントは種で種族を増やすと言われています。今この地に何体のトレントがいるのか・・・」
「とりあえず見つけ次第倒していかないと危険という事ですね。」
そういうと俺は殴り倒したトレントから種が出ない様にアイテムボックスに仕舞うと村人たちが集まってる場所に行き、次にどうするのか相談する事にした。
「村に戻ってカルーゼ達を連れてきてトレントを探しますか?」
「確かトレントは強い魔力に寄っていくという話を聞いたことがあります。カルーゼ達と合流して魔力が強い所を重点的に探せば見つかると思います。トレント自体はそんなに強くないらしいですし、シュンさんが欲しがっていた建材としても優秀です。」
「魔力に集まって、建材として優秀だと・・・」
俺は建材に使えると聞くと村人たちに此処から少し離れた箇所に罠を仕掛けておびき寄せる作戦を伝えると了承が得られたので、早速行動に移した。
トレントが見つかった方向に進み少し開けた場所に出ると地面に手を着き穴が開くイメージで魔力を放つ。すると俺のイメージ通りに穴が開いたことを確認すると手を空に向け放射状に魔力が飛ぶイメージで魔力を放出する。暫くそのまま魔力を放出し続けるとガサガサと何かが近づいてくる音が聞こえる。
魔力を放射状に放っているせいか、俺の周囲360度全ての方角から音が聞こえる。
トレント達は俺が放つ魔力に吸い寄せられるように集まってきた。トレントは魔力を放つ俺を見つけると枝を伸ばしてきた。さすがに全方向から枝が伸ばされてきたのでヤバイと思い、前方向にジャンプしてトレントを殴りつける。そのまま迫りくるトレント達をガンガン殴り飛ばしていき近くに迫った最後の一体を殴りつけ動いているトレントがいない事を確認すると、すべてアイテムボックスに仕舞う。ふふふ、これで俺の家を住みやすい住居にすることができそうだ。とニヤリとする。
とりあえず、枝があんなにも伸びる事を知らずに何の役にも立たなかった罠の穴を元に戻してから村人たちの元に戻り、トレントをおびき寄せて倒した事を伝えた。
「一応、寄ってきたトレントを倒したけど何度か見周りはした方が良いかもしれませんね。」
「シュンさんトレントは何体倒したのですか?」
「え~っと、100体以上?」
「えっ!?ひゃ、100体ですか!」
「ええ、出しましょうか?」
「いえ、そもそもトレントがそんなに強くないというのは火に弱いという理由なんですが。。。シュンさんが向かった所から火の手が上がらなかったのですが何で倒したのですか?」
「殴りで?」
「はああああ?殴ってトレント倒したのですかぁ!」
「は、はい。殴って倒しましたが・・変ですか?」
「殴って倒す方初めてみました。。。」
「は、はは・・」
そっか、殴ってトレント倒すのは普通じゃないのか。これから何か倒す場合武器を使って倒す様にしないと目を付けられるかな。気を付けよう。
「ゴホン。え~っと、結構採取出来たようですからそろそろ戻りますか?」
「そうですね。取りすぎも良くないですしね!」
いや、その背中の籠の中凄い事になってるけど・・・それだけの唐辛子を消費するのってどれだけ掛かるんだろうか。
採取に来た村人全員がすごい量の唐辛子を背負って歩いている異様な光景の中、手ぶらで歩いていると前方からカルーゼとテイルが歩いてきた。
「やあ、採取の成果は良かったかい?」
「ええ、シュンさんが採取した場所を教えてくれたので沢山取れましたよ。ほら見て下さい。」
「おぉ~、これは大量に取れたね。村でも栽培する様にしようか。」
「そうですね。ところでカルーゼとテイルは、何故ここまで来られたのですか?」
「うん、君たちが向かった方向から凄まじい魔力が溢れてきたのを感じて様子を見に来たのだよ。」
「あ、その件で来たのですか・・・、それシュンさんの仕業です・・・」
「え?シュンの仕業?」
「私たちが採取をしていたらトレントに遭遇しまして、トレントをおびき寄せるためにシュンさんが魔力を放って集まったトレントを殲滅したのです。」
「シュン・・・トレントを倒してくれた事は感謝する。しかし、あの魔力は異常事態が発生したと思われるから自重してくれるとありがたい。」
「ア、ハイ・・・」
「それでシュン、トレントは何体倒したのかね?」
「え~っと、100体以上?」
「そこまでか。。。いや、また我々の村に近づく問題を解決してくれたのだ、素直に感謝を。ありがとう。」
「いや、建材に使えるって聞いたし、俺のためでもあるから感謝不要だよ。」
「相変わらずだな、それでこそシュンか。」
「ただ、魔力でおびき寄せて近づいてきたトレントを倒しただけだから、まだいるかもしれない。」
「判った。テイルと一緒に周辺を調査しておこう。」
そういうとカルーゼとテイルは唐辛子の群生地に向かい歩いて行った。
カルーゼ達と別れた俺たちは村へ帰りつき、村人たちに唐辛子の保存方法を伝授する。採取してきた唐辛子を乾燥させるために株ごと引き抜いてきた唐辛子は蔓を乾燥させた蔓を使い家の軒下に吊るして干す。1本1本摘み取って収穫した唐辛子は風通しのよい場所で自然乾燥させる。
村人たちは分担して各家の軒先に唐辛子を吊るしていくが殆どの家の軒先が唐辛子だらけになっていた。ちょっとエルフ達を説教したくなってきた。。。
村人たちは土ごと採取してきた唐辛子を村の畑に植え、種を取れるようにしていくらしい。
うん、自分が欲しかったとはいえ、エルフ村に唐辛子を流行らせたのは失敗だったかもしれない・・・




