特殊種
ガルルスの住処へと通じた通路は合計で8つ。
俺とエリナさんが3つの通路を踏破し、残り4つを男性チームと女性チームで2つずつ踏破した。
最後の1つを全員で向かい多分だが全ての通路を通ったと思われる。道中の罠もデスロックバイパーが通った跡がなかったので撃ち洩らしは無いだろう。
最後の穴という事で結構深い穴のようで8人で暫く歩いていると大きく開けた場所に出た。
「エリナさんと行った最初の穴より大きそうですね。」
「はい。今回は慎重に行動しましょう。先ほどシュンさんが口の中へ入って行かれた時は心臓が止まりそうになりましたから。」
「は、はい。ごめんなさい。」
エリナさんが俺に注意喚起するとギルデイさん達が少し噴き出していたので皆の緊張が解れて良かっただろう。
ただし、俺の人望が落ちたのは言うまでもない。
「よし、ではまずは光球を幾つか飛ばすので、ここから中がどうなっているか確認するよ。皆準備はいい?」
「「「はい。」」」
皆の返事を聞いた俺は前方に光球を何個か飛ばして広場を照らすとバクバクバクとデスロックバイパーが光球を食べてしまうので俺は食べられるたびに光球を飛ばしていった。
エリナさん達は遠隔武器で光球を食べようとするデスロックバイパーを射抜いて行くが思ったよりも数が多い。
しかも、デスロックバイパーのサイズが小さいように見える。
もしかして、巣なのかもしれないな。
何度も遠隔攻撃を行いデスロックバイパーを仕留めて行くとやっと光球を食べようとするデスロックバイパーが居なくなった。
光球が燦燦と広場を照らしているが、ここから見える範囲で動いている物はいない様に見える。
動きは素早く慎重に行動が出来るラムさんがゆっくりと通路を進んで行き慎重に広場を確認する。
ラムさんは俺たちを手招きしたので足音を立てずに広場へと向かって行き、広場を覗き込むと床面には何匹ものデスロックバイパーの死体が倒れていた。
床面だけでなく壁側も確認してみたが動いているも物は何も見当たらなかったので広場へと慎重に一歩を踏み出した。
俺が広場へと入りデスロックバイパーをアイテムボックスに仕舞おうとした瞬間、広場の上部が崩落してきたように見えた。
実際には広場の上部にデスロックバイパーの色違いが居たみたいで俺を食べようとしたのだった。
「お、おぉぉぉぉおおぉ!」
俺は焦りながらも先ほどと同じように蛇の牙を掴もうとしたが先ほどと違って牙がギザギザというかブツブツというかしていたので掴むのを躊躇してしまった。
その隙を付かれて俺はバクッと口の中へと取り込まれてしまった。
流石に口の中に取り込まれる前に牙に刺さらない様に自分から入ったので神経毒を食らわずに済んだが、デスロックバイパーの口内は蛇だけあって力強く伸縮性にも優れ取り込まれてた時の体制を変えることが出来なかった。
まあ、少しすれば皆が助けてくれるだろうと高を括っていると蛇の舌が鞭の様に俺を打ってきた。
これが思ったよりも痛く「くっそー」と思っているとどことなく自分の体が痺れてくる感じがしてきた。
「あれ?牙は刺さってないぞ?」と思っていると蛇が舌で自分の毒を掬いあげて俺を叩くと同時に神経毒を俺に被せてきてたのだ。
あっちゃー、めっさピンチ!と軽く考えていると少しだが外からの声が聞こえてくる。
どうやら俺を救出しようと全員で色々と攻撃しているようだが、この蛇どうやら俺を取り込んだあと体を丸めて防御態勢を取ったみたいで外からの攻撃を受け付けないみたいだ。
珍しくエリナさんが焦りながら全員に指示を出しているが効果が出ていないようだ。
あ、あれ?もしかして冗談抜きで大ピンチなのか、おれ?
状況が思った以上に悪い事に気づいた俺は片手で支える様に体全体に力を入れて空いた手でアイテムボックスから剣を取り出す。
刺突で蛇の上顎部分を力いっぱい振り上げるも筋肉が発達しているのか鱗があるのか分からないが剣が突き刺さらなかった。
「え~、どんな肉体なんだよ。」
こんなに尖った鉄製品が刺さらないってよっぽどだぞ。ってか、ここに来るまでに戦ってたデスロックバイパーってエリナさんの矢で突き抜けてたじゃん!
確かに俺の剣のスピードとエリナさんの矢のスピードは全然違うけど刺さるぐらいの力と勢いはあったぞ。
こいつって、ボス的な何かなのか?
あ゛~!段々と痺れが強くなってきた。
くっそ、どうするどうする。何か策はないか。
そういや、こいつ俺を押さえつける力は結構強いけど蛇って何か食べる時は丸のみで徐々に溶かしていくって話だったはずだ。
自分より大きい獲物でも口の中に入れることが出来るくらい伸縮性があるって話を聞いた事がある。
ってことは、今こいつの口に大質量の物を出せばいけるのでは?
俺は思い付きを実行に移すべく、ここに来るまでに何体もアイテムボックスに仕舞い込んだデスロックバイパーを俺を飲み込んでいる蛇の奥側へ出す。
俺を飲み込んだ蛇は予想外の質量が急に現れた事で口が多少開かれたようだ。
しかし、ここで俺の大誤算!こいつ口が縦に伸びて今まで上下で潰されてたのが左右で潰されるようになってしまった。
このままでは脱出もままならないので、もう一体反対側にデスロックバイパーを出すことで微かな隙間が産まれた。
痺れる体に鞭打ってデスロックバイパーの間に作られた隙間を這って俺を飲み込んだ蛇の口側へと進んで行く。
蛇の舌からの攻撃を我慢しながら入り口に到着すると少し体を動かしやすい幅があったためアイテムボックスから麻痺解除薬を取り出し口に含む。
う~ん。不味い!もう一杯!
この麻痺解除薬は素材となる薬草が物凄く苦い。その苦みが強い程麻痺が早く治まるらしく師匠からは苦みを強く出すように教えられた。
ただ、この苦みを強めるだけならば意外と簡単に出来てしまうため一度どれだけ苦くできるか試したところ、とても人間が飲めるものではない物が出来上がってしまった。
それを飲んだ俺は二十日ばかり何を食べても味がしなかったほどだった。
今もっている物はある程度の苦みがあるものの痺れが早く治るように微調整した解除薬になっている。
でも、苦いものは苦いのである。
体の痺れが楽になったのだが口の中が痺れているように思える。
体の動きが戻ってきたので蛇の口の隙間から外に出ようと思うが、ちょっと幅が狭い。
さらにもう一匹を出そうとした時、この蛇の舌が近寄ってきているのが見えた。
えっ!?そう言えば蛇の舌ってさっき俺がいた奥にまで届くのだっけか?こいつが特殊なだけなのかよく見たら舌が人の腕位に太い。
こんなのに打たれていたのか。そりゃ痛いはずだわ。
とりあえず、蛇の舌を足で押さえアイテムボックスからデスロックバイパー3匹目を取り出した。
3匹目は丸めた状態で取り出したので俺を飲み込んだ蛇の口がグワッと開いた。
俺は腰を屈めながら蛇の口から外に出るとエリナさんが抱き着いてきた。
「シュンさん、ご無事ですか?体に異常はありませんか?」
「はい。ご心配お掛けして申し訳ありませんでした。少し毒を食らって痺れてましたが薬を飲みましたので大丈夫です。」
俺がそう言うとエリナさんはギュッっと腕に力を入れて俺の無事を体全体で感じているようだった。
俺はそれに答えるようにエリナさんをぎゅっと抱きしめた。
俺たちが感傷に浸っていると俺を飲み込んだ特殊種の蛇がデスロックバイパーを吐き出そうと頑張っていた。
ギルデイさん達は俺たちに気を使って見て見ぬふりをしていたが特殊種が動き出したので再度戦闘態勢を取り出した。
それに気づいたエリナさんが赤面しながら俺から離れ髪を整え始めた。
ふ~、せっかくエリナさんとの感動的場面を邪魔しおって。。。
「シュンさん、このデスロックバイパーですが体に張り付いている石も硬く外側からの攻撃が通じません。口の中に攻撃するしか方法が無さそうです。」
「口の中に入ってた時に中を攻撃してみましたが、弾性があって攻撃を弾かれましたので弓での攻撃でも同じだと思います。」
「そうでしたか。外側からも内側からも攻撃が通じないのであれば一時撤退しますか?」
「いえ、対策は考えてます。皮膚に岩が張り付いていますが種類的には爬虫類で変温動物です。この穴は温度が一定で蛇が活動するには問題ありませんが、温度が下がると蛇は活動が鈍くなります。ですので、この様に・・・」
そう言って俺は白鳥座の聖なる闘士が必殺技を放つ動きをし氷結系の魔法を放つ。
この世界の魔法はイメージが強ければ強い程思った通りに発動する。
氷系の魔法・技を使うイメージは聖なる闘士が一番よく見たのでしっかりと再現できる。
「だい〇もん〇だすとぉぉぉぉぉぉ!」
俺が氷結系の魔法を放つとメフィアさん達女性陣がキラッキラした目で見つめているのだった。
反対に男性陣は可哀想な者を見る目だった・・・。




