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ペンタグラム  作者: はるひぶ いえん
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未知との遭遇

「ガフッガフッ!(早く逃げろっ!)」


獣魔の森での闘争は日常の光景だ。


我ら牙狼族は100年前に獣魔の森で大いに繁栄したが、今や少数部族になっていた。


白虎族と肥沃の土地を巡り長年戦ってきたが、時勢には勝てず徐々に牙狼族の数が減り住みやすい土地を奪われ続けていた。そしてある季節の変り目を機と見た白虎族が一気呵成に攻めてきたのだった。


牙狼族は若者を先に逃がすために年老いた牙狼族が懸命に戦っていた。多勢に無勢なのは変わらないがワシら年寄りは一族を守るために傷つきながらも攻めてきた白虎族を地の利を生かして時間を稼いでいた。


皆が徐々に傷つき倒れていく中、若者が逃げる時間を稼いだのを確認し族長の撤退の合図が聞こえてきた。戦っていた年老いた牙狼族は土地を捨て逃走を開始した。


しかし、牙狼族の殲滅を決めていた白虎族は勇者を先頭に追いかけてきていた。




「(このままでは牙狼族は全滅してしまう・・・)」


ワシは傷ついた体に鞭打って最後の気を振り絞り反転して白虎族の勇者に向かった。


白虎族の勇者は年寄りと侮り一撃でワシを殺そうと牙を向けてきたが、ワシは直前で体を屈め白虎族の勇者の一撃を回避し首筋に噛みついた。

ワシの牙は白虎族の勇者の固い毛皮を微かに傷つけただけだった。



白虎族の勇者は口をニヤリと歪めワシを振り払おうとした次の瞬間、ワシは後ろ足に渾身の力を込め白虎族の勇者を咥えたまま走り出した。


戦場の近くには蟲が跋扈する谷がありワシはそこを目指して走りだした。白虎族の勇者はワシの考えに気づき驚愕の表情を表しながらもワシの牙から抜け出そうと暴れたが遅すぎた。



ワシは白虎族の勇者を道連れに蟲の谷に飛び込んだのだった・・・





□□□□□ □□□□□ □□□□□ □□□□□





ごぉおおおおおおおおおおおお---


谷に飛び込んだワシらは落下のため風の音が耳を覆う中、ガサガサと蟲達の動く音が微かに聞こえていた・・・



ブゥオオオオオォォォォォォォオン。



ワシらに向かってムカデに翅が生えた巨大な蟲が狙いを定め飛び立ってきた。



「(有終の美を飾るには良い相手じゃったが、あれに食われるのは嫌じゃのぉ~)」



白虎族の勇者は逃げ出そうともがいているが空中のためワシの牙から抜け出せずにいた。


ムカデ型の蟲が大きな口を開けてワシらを飲み込もうと迫る中、両足で白虎族の勇者の腹を蹴り蟲の口に放り込むとともにワシは空中で蟲に食われる事を回避する事に成功した。



しかし、ムカデ型の蟲は体を上下させながら飛んでおり、方向転換しようと体を捻ったところで空中にいるワシは蟲の尻尾で殴られてしまった。



「グゥッ!」びゅーーーーーーん!


谷を凄まじい勢いで水平方向に飛ばされながら谷壁が見えたワシは体を丸め次に来る衝撃に耐えようとした。



ドゴオオオオオオオオオン!


谷壁にぶつかった衝撃で意識が飛びかける中、ガボッという音とともに壁の中に入り込んだのであった。


谷壁は別々の岩壁が長い年月をかけて見た目上一つの壁に見えていただけだった。


谷壁の中は、傾斜になっており体を何度もぶつけながら何時までも何時までも落ちていくのであった。




どれだけの時間落ちていたのであろうか、ワシは体中からくる痛みのため意識を取り戻した。


辺りを見回すとヒカリゴケがあるのか微かに光る暗闇の中だった。


ワシは出口を探すために暗闇の中を体を引きずりながら暫く歩くとどこかで見たことがあるような遺跡が目の前に見えてきた。



目の前で聳え立つ遺跡が暗闇の中徐々に全体像が顕わになっていく・・・



ズキッ!


頭が割れそうな痛みが走り、目の中に何か懐かしい光景が頭の中を過ぎて行った。。。




□□□□□ □□□□□ □□□□□ □□□□□




「人類は終わりだぁぁぁ!」


「神は我々をお見捨てになったのだ!」


世は絶望の中にあった。2038年突如として土星が超新星を起こしその後ブラックホールが生まれた。


ブラックホールは徐々規模を拡大しており地球に近づいてきていた・・・




ニュースでは胡散臭い評論家達が何処で仕入れた情報か分からない世界各地でお偉いさんが宇宙船を開発しているや、宇宙人が助けに来てくれるなどの阿保らしい会話がテレビから流れていた。


世界各地で暴動が起こり漫画の様な世紀末状態の中、俺はぼんやりとやり残した事がないか考えていた。


とりあえず、折角なのでブラックホールに飲み込まれて死ぬまで生きようと思い、買いだめしていた食材の確認をしたあと買うだけ買って作っていなかったプラモデルを作って飾っていった・・・



プラモデル作りにも飽きて折角なのでブラックホールに飲み込まれた後どうなるかわからないが、もし、、、俺らが死んだ後何万年、何億年か後に地球がどこかで復活したと過程して後々遺物として何かが残るかもしれないと考えつき鉄板で箱を作り、色々な種や歴史の資料(オタク的なものも多数)などを入れ完全に溶接して未来に残るかもしれないとワクワクしながら部屋に置いておいた。



この鉄の箱を開く人が現れる事を祈って。。。



そんなアホな事をやっているとあっと言う間に時が過ぎブラックホールに地球が飲み込まれて行くときが来た。


まさしく空を埋め尽くす真っ黒な何かが迫ってくる光景・・・まさに絶望しかない景色だった。


ブラックホールに飲まれる中、何の力が働いているのか理解できないが様々な物が混ざる。まさに融合していると言っていい光景がそこかしこで見られた。


人と犬などの生物同士の融合だけではなく、岩や木などの自然物、自動車などの加工された製品などと融合している本当に不気味な光景が広がっていた。


そういう俺も意識が薄れていく時に自分の中に異なる生命体が入っていく感覚がありながら意識が途切れていくのであった・・・



□□□□□ □□□□□ □□□□□ □□□□□



「....グルゥ。(....思い出した・・・)」


俺は、頭の痛みが収まると一言そう呟いた。


そう、俺は今は狼の姿をしているが前世は人間だった。そして今目の前の家で死んだのだった。


何千年、何万年経っているのか知らないが、前世の家が残っているのがおかしい。しかし俺はその疑問が頭を過ぎるが懐かしさのあまり深く考えずにいた。



前世の記憶が戻った俺は痛む体を引きずりながら前世の自分の家に入ろうと玄関に行くが扉は閉まっていたが横のガラスが割れておりそこから入り自分の体があまり持たない事を理解しているため折角だから前世の俺が死んだ所で死のうと2階へと上がっていく。



「(しかし、何か変な気分だな。。。前世の俺が死んだ所で死のうとしてるなんて。。。)」



前世の記憶を思い出した事で気持ちが若返り一人称が変わってしまったが死ぬ場所に向かっているにも係わらず何となくワクワクしながらブラックホールに飲み込まれる前に作った鉄の箱が残っているか確認したい衝動に駆られながら自分の部屋に向かい扉が壊れており何の抵抗も無く部屋に入ることができるのであった。



部屋に入ると前世で作ったプラモデルなどが散乱していたが、俺が置いていた位置に錆びているが鉄の箱らしきのが残っていた。が、その隣に青く光る謎の球体があった。俺は自分の目がおかしくなったのかと思い前足で目を擦って再度見てみるがハッキリと青い球体は俺の目に映っていた。



「(な、なんだあれ?)」



懐かしい気持ちで入った部屋で未知との遭遇。。。前世では幽霊やUMAとの遭遇はなかったが今世で不思議と遭遇するとは思わなかった。



ここは多分地中深い場所だ。なので日の光は当たらない。家の外にはヒカリゴケがあり多少周りが見えるが家の中にはヒカリゴケが無い。暗闇そのものだ。俺は牙狼族で夜目が結構利く種族のため微かにだが家の中で周りが見えているが、その青く光る球体はそれ自身が光っていた。



好奇心に駆られた俺は鉄の箱よりも青く光る球体に興味が移り恐れながらもドキドキしながら前足で青い球体に触れると頭に声が響いた。。。

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