表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅と蒼の魔法使い【改訂版】  作者: 春夜 零桜
3/3

第一章 2話 冬の夜の蒼い月

2話投稿!

短いけれど宜しくお願いします!


蒼月side―



静かな部屋の中にコトコトという鍋を湯掻く音がする。

少し薄いけどいい匂い…いい匂い…?


そこで夢現だった僕の意識は一気に目覚めた。

あまりの失態に僕は飛び起き、その時に何かが落ちたのかカタンと音を立て床に落ちた。


「コレは…?」


その落ちたものは1枚の家族絵のようなもの…―


「起きたのか…お粥、食べられるか?」


突然話しかけられて僕は驚いていつもの癖で攻撃魔法を使ってしまった。

相手は僕のことも魔法のことも知らないただの人なのにやってしまった。


「《絶対障壁(ゼルフェクト・ウォール)》」


なっ…なんで!こっちの世界の人は魔法のことを知らないんじゃなかったのか!?

まさか僕に対する追っ手?

違うな…僕の軍の知り合いには黒魔法を使う魔法騎士はいなかった…。


「全く…いきなり《能力(アビリス)》使うなよ…驚くだろ?」


「…アビリス?」


アビリスって何だ…?

もしかして今の彼が使った魔法…彼にとっては当たり前のことなのか?


僕がそう考え込んでいると僕とあまり年が変わらないように見える少年が僕の顔を覗き込んでいた。


「どうしたんだ?あーもしかして《能力(アビリス)》のこと知らなかったのか?」


「…うん、そのアビリスってなんなの?」


僕はできるだけ情報が欲しくて彼に疑問に思ったことを聞いた。


「うーん…説明しにくいなぁ…簡単に言えば小説とかマンガで言う特殊能力かな?」


本人でもよく分かっていないらしい…でも彼の力は確かに魔法界の第一都市【紅玉都市(ルビリアル)】で使われている黒魔法だ。


「…そう、ところでここはどこかな?」


1度考えることをやめて僕は彼に疑問を投げかけた。

彼は1度面倒くさそうな顔をしたあとため息を吐いて質問に答えてくれた。


「はぁ…ここは俺の家、お前は俺の部屋の中で血濡れで倒れてたんだよ」


僕はその言葉に少しばかり考え込んだ。

確かに僕はここに来る前に色々あって重症でここに転移してきたけど…転移先が彼の部屋だったのか…あの時は意識も朦朧としてたし転移先を絞る余裕はなかったから…―


「考え事するのもいいけど…後にしてとりあえずお粥食えるか?」


僕の思考を遮り彼は呑気にもそう言った。


「ねぇ…ひとつ聞きたいんだけど君はどうして僕にそこまで優しくするの…僕は」


僕は彼が僕に優しくする理由がわからなくて聞こうとした余計なことを言いかけた僕を彼は止めるように言葉を発した。


「人に優しくするのに…理由なんているのかよ…」


ぶっきらぼうだけど優しい言葉だった。


「それに1度助けたのに助けてあとは勝手にしろってのは無責任だからな…お前の面倒事が片付くまで俺が手伝ってやる」


「…何も知らないのに自信満々だね、君が解決出来る問題かどうかも分からないのに―…」


彼の言葉は正直嬉しかった…でも…―


「初めて会ったけど…君のことは巻き込みたくないんだ」


僕が目を背けて言うと彼は呆れたように笑った。


「なっなんで笑うの!?」


「いや、だって…お前こっちの世界の常識とか価値観とか分かんのかよ?」


クスクスと笑いながら彼は僕に問うてきた。

図星を指された僕は黙り込むしかなくてその様子を見て彼はさらに笑いだした。


「あははっ俺は紅月(こうげつ) 春夜(はるや)能力(アビリス)持ち!これから宜しくな!」


彼、紅月は僕に微笑みかけながら手を差し伸べた。

僕は無意識のうちに彼の手を取り顔を合わせた。


「僕は蒼月(そうげつ) 冬夜(とうや)、君で言う能力(アビリス)持ち…しばらくの間世話になるよ」


きっとその時は自然な笑顔で僕は笑えていたんだろう。

また笑える日が来るとは思わなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ