妹さんの実家
よっしゃあ! このまま魔王を倒してハッピーエンド直行してやるぜ!
「勇者様は狐族が何か知っておりますか?」
イヴが喜んでいる俺に質問を繰り出してきた。
狐族にはついて聞けばどうしてイヴが勇者のことが好きなのかわかるだろうか?
とりあえず俺は狐族のことについて聞いた。
「狐族ってなんだよ」
「フフフ、狐族っていうのはですね私のように狐子種族のことなんや! 詳しいことはやなあ!……」
長ったらしい説明を聞いて思ったことは狐族はとても複雑でよくわからなかった、ということだけだった。
「分かった?」
「あれだろ、成長すると金髪になって髪が上に上がるんだろ」
「全くわかってないなあ、簡単に説明するとな、狐族は人間に滅ぼされそうなところに勇者に助けられ、狐族は勇者を崇拝対象としたんや」
なるほど、つまりイヴは崇拝対象との出会いでついて行こうと、そういことか。
「むしろ俺は大歓迎だけど、イヴさんは魔王を倒すことに賛成なの?」
「魔王を倒すなんてとんでもないで!」
は? どういうことだ? なぜ魔王を倒すことがとんでもないことなんだ?
魔族? は全種族に害を出すものじゃないのか?
「どうして魔王を倒したらダメなんだ?」
「魔王のおかげでこの他種族が平和に暮らせてとーのになんで魔王を殺すんや!?」
両手を激しく振りながら俺に抗議してきた。
どういうことだ? なぜ魔王のおかげで他種族に生活できているんだ。
「魔王は力でその他の種族に威圧をかけることで革命などを起こさないようにしているんやで!」
イヴが空中に手で他種族の交友関係を書きながら説明している。
が、早口で言ってることが原因で何を言っているのか分からない。
だが恐らく魔王のおかげて平和みたいなことを詳しく説明しているのだろう。
「馬鹿かお前は、もしかしたら他種族を抑えて戦力がなくなってから殺すかもしれないだろ、ちゃんと食べてるのか?」
「な、私はその辺は大丈夫だや!」
声を震わせて抗議するがちゃんと食べてないから倒れていたんだろ。
俺の途中で採取した木の実を全部食べたくせに。
「つまりだ、魔王のおかげという考え方はやめた方がいいぞ」
「それは人間のエゴや!」
さっきまでの「わわわわ」というようなというような抵抗だったのに、魔王を否定するとさっきまでとは比べ物にならないくらいの威圧を見せた。
「わーお」
「あ! ごめんなさい!」
「気にするなよ大して怖くないし、でも魔王討伐に反対ならついてくるなよ」
俺としては残念だがもし少女を敵に回すくらいなら敵に回さないようにする。
一緒に冒険することを臨むがそれは無理のようだ。
「じゃあな、俺はこのまま進むからな」
「待って! えーと、ここから次の町へは最低でも二週間はかかるはず! やから、その………」
ん、何が言いたいのか分からない。
どうしてこの世界のお住人は言いたいことをはっきりと言わないんだ。
俺の世界の住人は言いたいことは嫌味も含めてなんでも言うぞ。
「だから、私達の隠れ家で装備をそろえてからでもええんやない、か……な?」
イヴが胸の前で両手を組んでお願いのポーズ。
折角のだからお邪魔しようか……
いや、昔何かの本で読んだことがある……千年生きた生きた狐は天狐となり神通力を手に入れる、と、狐の隠れ家、天狐ぐらいいるかもしれない、魔王を倒すと言ったから殺されるんじゃあ……勇者でも覚えたての魔法で神通力にかなうはずがない。
「悪いけど遠慮させてもらうよ……ハハハ」
「そ、そんなぁ」
耳と尻尾をを垂れて残念がっている。
これはもしかして本心だったのか?
とても悪いことしたなぁ、行くべきなのだろうか?
「ごめんって、行くよ、行くからそんなに落ちこまないでくれ」
「ああ! ありがとうございます!」
ひまわりのような笑顔に戻ったイヴは耳と尻尾を振りながら案内してくれた。
「ここや!」
嬉しそうに指を指した先はただの谷だった。
「ここから落ちろと……」
俺が苦笑いで冗談を言うと、イヴは「何を言っているの?」という顔でこちらを見ていた。
「ここだよ、ほらきて」
助走をつけたイヴが俺の手を思いっきり引っ張って俺と一緒に落ちる。
俺の意識は谷の中間あたりで途切れた。
途切れた意識の直前に聞こえた言葉はイヴの「おねーちゃーん!」という嬉しそうな声だった。
「う、ああ、おおお」
「あ、おねーちゃん、勇者さんおきたで!」
起きて最初に聞いた声はうるさく、おねーちゃんという人物を呼ぶイヴの声であった。
「ごめんなさいうちの妹が迷惑かけて」
謝っているのは恐らくイヴの姉だと思われるが、視界がまだぼやけるせいでどんな顔なのかわからない。
「あー、だんだん見えてきた」
「ごめんなさい、勇者様」
起き上がって声のした方向をみると耳と尻尾をしょんぼりと下げているイヴがいた。
恐らくおねーちゃんという者にしごかれたんだろう。
「大丈夫だ、まさか勇者があんなので失神するとは思わなかったんだろ?」
「いえ、あれは偶然開いた穴なんです」
恐らくおねーちゃんであろう者から訂正が入る。
「そうなのかよ……ところであんたは誰なんだよ」
「フェネックイヴの姉のフェネックアカと言います」
アカは能天気っぽいイヴとは違いしっかりしている印象を持つ、イヴと同じ位の背丈でピンクの髪のイヴとは違い、アカは水色の髪である。
イヴは巫女装束から着替え黒のワンピースを着ており、アカは水色のワンピースを着ている。
「それではイヴのことをよろしくお願いします」
「よろしくお願いします、あ・な・た、キャ!」
「は?」