こぶたが完璧淑女な悪役令嬢になって婚約破棄を成功させるまで。
私がこの国、レトの二番目の王子である、アルバート殿下と婚約したのは5歳の時でした。彼は当時8歳でした。
私が婚約者に選ばれたのは、
お父様と国王陛下は大の親友だったからです。
小さい頃はよく遊びました。アルバート殿下のお姉様である、ビクトリア王女殿下がみんなのボスで、私のお兄様、アルバート殿下、私でかくれんぼうや、鬼ごっこや、お絵かきなど、お城で、なんでも一緒に遊んでいました。みなさんは年下の私に、とっても優しくしてくださいました。
ところが、13歳になり、貴族が通う、学院に通いはじめると、私はいじめの対象になりました。太っていて、気が弱くて、運動神経が悪かったからです。アルバート殿下はあんな豚と婚約なさっていて本当にかわいそう、という陰口をよく聞きました。しまいには、アルバート殿下までも私の陰口を叩いているのを聞いてしまい、ショックで私は不登校になりました。
あるとき、家に篭っていると、ビクトリア様が訪ねて来てくださいました。
大好きなソフィア。いじめられていたのね。気付かなくてごめんなさい。アルバートが加担していたことは、本当に申し訳なく思っているわ。私が側にいれれば。相談にのるわ。
その頃、反抗期だった私は、失礼にも、
ビクトリア様はお綺麗で、しっかりしていて、運動神経も抜群で、私なんかの気持ちなんかわからないです。
と返しました。
ソフィア。それは違う。だったら、自分に自信が持てるよう、努力なさい。
と、ビクトリア様には珍しく、ピシャリとおっしゃられました。
私はびっくりして、しばらく落ち込みました。けれども、ビクトリア様の言ったことは全く正しいと思いました。このままではダメだと思い、当時の私にしては思いきったことに、留学を決めました。寄宿舎のある、上流階級のお嬢様のみが通う、隣国マシェの学校です。
そこで勉強はもちろん、マナー、ダンス、歌やピアノ、お菓子作りなど、才女、淑女になるためのことをなんでも叩き直されました。女子しかおらず、たまには揉め事もありましたが、さっぱりした女の子が多く、過ごしやすい所でした。私は同時にダイエットもしました。
初めは言葉も分からず、ホームシックになったりもしましたが、親友もできて、充実した日々を過ごしました。帰国するのが嫌になり、そのままマシェの大学まで進学しました。ただ、レト国王陛下の生誕祭など、帰らなければならない行事のみ参加はしていました。アルバート様のお顔は拝見したくありませんでしたので、なるべく避けました。あの方はどうしても許せないのです。
あるとき私は、マシェ大学で同じ講座をとっていた男の子とふとしたきっかけで仲良くなりました。
その本って面白い?
ええ、面白いですわ。私、この大陸の古代史に興味があって。よかったらお貸ししますよ。
確か、こんな他愛もないことでした。それから、だんだんと仲良くなりまして。まあ、端的にいうと、私たちは恋に落ちたのです。いつしか、人生を共にしたいとまで考えるようになりました。私はアルバート様との婚約を解消するため、作戦を開始しました。
アルバート様と結婚したいと思う知り合いはたくさんいました。そこで、彼を誰かに凋落してもらおう、と思い付いたのです。ずる賢そうな女を選び、私は彼女に手紙を送り、アルバート様に近づくよう、誘導しました。考えていたよりもうまくいき、影から、順調だと報告がありました。
今日は国王陛下の55歳の御祝いのため、レト王国に戻っています。私が深くベールを被り、兄のエスコートで入場すると、アルバート様は、傍らにかわいらしい女性を連れてこちらに歩いてきます。
アルバート様、ごきげんよう。お久しぶりでございます。
ああ、久しぶりだな。急なんだが、君と婚約破棄させてもらいたい。
な、なぜです?(泣くふり)
私には本当に大切な人ができたからだ。申し訳ない。
わ、わかりました。私はちっとも美しくないですし、そのかたの方がお似合いでしょう。どうかお幸せに。
成り行きを見ていた国王陛下が、わなわなしている。
その瞬間、後ろからベールを無理矢理外されました。驚いて振り向くとなぜか、大好きな彼が立っていました。
君が美しくないだと。僕の目には世界一美しく映っているよ。今し方、婚約破棄されたよね?代わりに僕が君に求婚させてくれ!絶対、絶対に幸せにするから、結婚しよう!
はい、喜んで。でもなぜ、あなたがここにいるの?
招待されたからだよ。ずっと黙っていたけれど、僕はマシェ国王の歳の離れた弟なんだ。まあ、どうでもいいけれど。レト国王陛下、僕達を祝福してください!
ごほっ。ここに祝福…しよう。
ありがとうございます!彼女のことは大切にします。これからもマシェとよい関係を結んでください。
そこに、ビクトリア様が現れました。
アルバートにはいろいろがっかりしたけれど、ソフィア、あなたは本当に美しくなったわ。目がキラキラして、自信に溢れているわ。あなたはこの国の誇りよ。




