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picture4〜二重の輪〜

僕は汚い大人になってしまった。昔は絶対なりたくないと思っていた大人に、やはり結局みんななってしまうのだろうか…。

最近、岩手の出版社から、雑誌の連載に誘われた。ずっとやりたいと思っていたものなのに、なぜこうも心が決まらないのだろう…?

「洋さん?どーしたの…?眉間にしわ寄ってるよ!?」

君の心配そうな声でふと我に返った。

「あぁ、ごめん…。大丈夫だよ。」

今日君と会う事になったのは、僕が呼び出したからだった。大切な事を伝える為だ。

「あっ、そろそろ帰んなきゃ。」

それは伝えられなかった。ただ、どうしても渡さなければいけない物があった。

「何、これ?」

君に渡したのは、小さな小さな袋。それを君が開ける頃には、僕はちゃんと覚悟を決められているだろうか?

「じゃあ、またね。」

「えっ?ちょっと待ってよ!何これ!?」


中に入れた指輪に込めた想いはただ一つ、『結婚』だった。二つ入れた筈だけど、僕の指輪の内側には、『N』を彫った。君の指輪には、君がこれから共にしたい人のイニシャルを彫って欲しかったんだ。



それから僕は、岩手の出版社に出掛けた。どうしても自分の夢を諦められなかった。君からは、何度も留守電が入っていた。

『洋さん?どこにいるの?すっごく心配してるから…。早く元気で帰って来てよ。待ってる…。』

君の声を聞くだけで、僕は頑張れたから。

でも、決心できなかった。君はまだ幼くて、岩手に連れて行く事なんてできなかったし。この安定を失う勇気が無かった。

            一週間たった頃、やっと帰ろうと思った。その時の君の弾ける様な笑顔が、僕の中の後悔を溶かした。

でも、どこに、何をしに行ってたかを話したら君は、小さく頷いて重い口を開いた。

「…夢が叶えられそうなんだね。それ、凄いことだと思うよ。でも、洋さんはそれを自分から切り捨てようとしてる。自分のしたいことをするべき、って言ったの洋さんなのに、そんなのずるいよ…。」

君は何だか泣きそうだった。

「でも!僕は、君を置いて行くなんてできないよ…。」

「それは嬉しいけど。そんなの洋さんじゃ無いじゃん…。夢を追ってる洋さんが好きだったのに。」


泣きそうだ。いつからこんなに涙脆くなったのか、君の言葉はいつも真っ直ぐで、僕はその言葉に痛いくらい想いを洗われている。

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