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一つ目小僧

作者: 三角 仁

次元の狭間って、信じるかい。

その場所を通ると異世界に行くことができる。

ある噂があってね、僕は行ってきたのさ。その次元の狭間ってのにね。

軽い肝試しみたいな気持ちでね。

オカルトとかそういうのが好きで、よく行ってたんだ。

そのときも一人である山の中に入っていったんだ。夜中だったよ。

なんでも、次元の狭間ができるのは満月の日の午前三時頃って時間の指定があったからさ。

どこの情報かって?

そりゃあ、ネットだよ。だからこそ、僕だってたわいもない噂話なんだからと、軽い気持ちで行ったわけ。

僕のは冒険がしたいとか、そんな大それた気持じゃなくて、さっきも言ったように軽い肝試しみたいにちょっとしたスリルが味わいたいだけなんだから。

噂通りのことが起こらなくてもいいのさ。その日もいつものようにワクワクしながら目的の場所に向かったよ。

でもね、やっぱりネットの情報って言っても、たまにはあるものなんだよね。玉石混交の「玉」の方がさ。

次元の狭間があるっていうポイントに着くとね、何か感じたんだ。

こう、ぐにゃっとね。何か壁に当たったみたいなんだ。

何も見えないんだけど、ゼリーの壁みたいなのがあってね。僕はやっぱり、いつもと違うから怖くはなっていたんだけど、好奇心に負けてね。

行ったんだ。ゼリーの向こう側に。

行った先もさっきまでの景色とは変わらないんだけど、なにか雰囲気が違ってね。

異世界に来てしまったと、不思議と信じてしまったよ。

僕は恐ろしくなりながら、ネットの情報を思い出だそうとしたよ。なんて書いてあったっけ。

次元の狭間を越えるなんて思ってもなかったから先のことなんて考えてもなかったよ。

で、思い出した。

そう、狭間の先には一つ目小僧がいるって書いてあったはずだ。

狭間が「玉」だったんだから、一つ目小僧の真贋もそれは、ね。

びくびくしながら、それでも進もうとすると向こうから明かりが見えたんだ。

懐中電灯の明かりさ。誰かがいたんだ。

急にほっとした気分になったよ。さっきのゼリーみたいな感触もきっと強い湿気のせいだろうなんて思ってさ。

思わず声をかけたんだ。

「おーい、誰かいるんですか」

って、軽くね。そうすると向こうからも、

「はい、どうかなさったんですか」

ってね。僕はちょっと焦ったね。こんな深夜の山道を歩いている理由をなんて言おうと思ってね。ほら、こんな状況じゃ僕は不審者みたいじゃないか。

なんて応えようか迷っているうちに足音が近づいてきてね。相手の姿が見えてきたよ。

すごくラフな格好だったね。ジーパンにポロシャツ。

でもね、僕は動けなくなった。

だって、だってだよ。

彼の目玉は一つしかなかったんだ。

頭の中で、噂は本当だったんだと思うのと同時に、どうやって逃げようかと焦ったよ。

逃げようと頭では考えているのに、足は動かない。

しかしだ、不思議なことに向こうも僕を見つめたまま動かないんだ。

何を考えているのか、僕を襲う算段でも考えているのかと思うと恐怖が増したね。

恐怖は僕の足をさらに固めてしまった。蛇ににらまれた蛙さ。

ふっ、と先に動いたのは相手だった。

僕が「もうだめだ」と、思っていたら、相手は踵を返して走り出した。


「二つ目小僧がでたー!」


って、叫びながらね。

呆然としながらも動くようになった足を動かして、僕ももと来た道へ走った。

途中でまたゼリーに包まれる感触があって、元の世界に戻ったのだと感じたよ。

これで、僕の話は終わりさ。

え、そのあとはどうしたって?

どうもしないさ。僕はあの場所には二度と行っていない。あの場所だけじゃない。ネットの情報を頼りに肝試しに行くこともなくなったよ。

でもね、思うんだ。

この世界とは違う世界が、僕らの世界とは本来混じることのない世界があって、そこに住む人たちも僕らと同じようなことを考えて暮らしているんじゃないかってね。

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