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ご当地ヒーローになった俺が異世界で無双してウハウハな件  作者: 拝 印篭
アルカン編 約束手形と七人の花嫁
9/42

7th 「男女十一人秋物語」

「さて、みんなには、これから、神官 アコ=ナグリ の名において、「(セント)ゴーリガン」の従者になる為の叙勲の儀式をしてもらう」

 新たに加わった八人を前に、シスター服を被ったアコが突然そんなことを言い出したのは、出発二日目の昼休みだった。

 勲章の入ったビロード貼のトレーを掲げかしこまったヒロシから、一個ずつ勲章ってか、あれは、在庫過剰で困ってたゴーリガンバッチじゃないか。


「従者、スカーレット ディガー」

「ハイッ!」

 呼ばれたスーさんが、前に出ると、かしこまった表情でアコが胸にバッチをつけてあげる。

 恍惚とした表情で授与されたスーさんは、一礼して一歩下がる。

 以下、それが八人分続く中、奉られた俺だけが蚊帳の外で生暖かく見守っていたのだが、全員の授与式が終了するや、アコがとんでもない事言い出した。

「さて、これにて諸君らは、〝ゴーリガン ガールズ〟として新たに生まれ変わった。今後は、影に日向にフカ=コオリヤクを心身共に支え、パートナーとして、騎士として、妻として、一生添い遂げる覚悟を」

「ち・よ・つ・と・待てぇっ!!」

「あによ」

「なんだ? 今の宣誓はぁっ!? いつ、そんな話になった!? 俺いつの間に結婚してたの?」

「? 今更何いってんの? 私があんたの子供産むためだけに養子縁組した十六年前に決まってんじゃん」

 そうだったのか! 初めて知った。ってか、あの糞じじい共ぉぉぉっ! 

 俺は、アコとの縁組の真相を初めて知った。こんな処で。

 いや、それも大事な話だが、今はそれよりも、

「それと、彼女らを妻としてってどう繋がるの? 意味がわからんっ!!」

 と、言ったとたん、みんなが悲しそうな顔になる。

 え、え? 俺が悪いの?


「この二日間の間にずっとキャンパーの中で一緒に生活してたんだよ。この子たちの決意も本気も、ぜ~んぶ聞いています。確かに領主様に言われたこともあるかも知れないけど、この子たちの不可を大好きな気持ちに嘘偽りは全く無いよ!」

 し、しまったぁぁぁっ!

 この二日間、面倒を避けるため、レンジの中に閉じこもっていたことが、裏目にでたぁぁぁっ!


 確かに、俺とヒロシはこの二日間、運転もあるが、完全にこっちに籠りっきりだった。その間ローテーションで順番にみんなこっちにも来ていたが、なんか、微妙にぽわぽわしてたのは、こういうことか!

「ふっふっふ。外堀も内堀も埋められて尚気づかぬとは……お主、それでも 白堡 千糸 を継ぐものかぁぁぁぁっ!」(どーん)

 ピシっ、と指を突き付けられた。Orz。最早、何も言う資格なんてないよ。さめざめと泣くおれを見ながらヒロシは心底安心しきった顔つきで、

「いやぁ、結婚なんて人生の墓場行きは、ごめんだけど、こうして、僕の分まで引き受けてくれた君には感謝、感謝だねぇ」

「あ、アイナちんは、ヒロシと結婚だからね」

 がーん。となって、俺同様、Orzで固まった。男たちの人生、しゅうりょーう。


「しかし、お前はそれでいいのかよ」

 こんな、何人も妻が出来た男と子供つくるとか、

「神官としての私が神の名において宣誓したんだよ。いいにきまってんじゃん。これぞ、異世界クオリティー♡」

 そうなんだ。こんなんでも、正式な神官なんだよなぁ。

「ぶっちゃけ、領主様相手にするよりは、あの子ら相手の方がなんぼか楽なんだよね。チョロインだし」

 黒い顔で随分なことぶっちゃけたな。神官様。

「実際、あの領主様、わたしと戦闘力はほぼ互角。神殿での立場は向こうが上。やりづらいんだよね」

 それでやたらとガードしてたのか。


「あ、あのぉ」

 スーさんが遠慮がちに語りかけてくる。 

「わたしたちではダメでしょうか? やはり、神官様が一番大事なのでしょうか?」

 って言われても、結婚相手と知ったのもつい、今しがただしなぁ。

「むしろ、俺なんかのどこがいいわけ? 目つきも悪いし、口も悪い。多少自信があった知恵の部分も、最近領主様やアコに全く勝てる気がしない。こんな取り柄のない男、本当は嫌だろう?」

「「「「「「「そんなこと! ありません!!」」」」」」」

 え? 

「確かに、始めはただの憧れでした。勇者様に嫁ぐ自分に酔っていたと思います。でも、今は優しく接してくださった勇者様、いいえ、不可様だから、大好きになったんです。だから、アコ様に今回のお話を頂いた時には迷うことなくお受けしようと決意したのです。でも、確かに重い女、ですよね。不可様が迷惑だと、思っておられるなら、つらいです。けど、諦めます」

 スーさん……


「わたくしも、同じ思いですわ」

 え? ミナミさんまで?

「確かに最初は、集団お見合いみたいな形でしたが、貴方様のお人柄に触れて、この方なら信頼して付いて行けると確信いたしました。知っていましてよ。この旅が始まってからずっとわたくし達を気にかけてくれていたこと。影に、日向に、人を思いやる精神、心から尊敬申し上げます」


「それは、拙者とて同じこと。本来護衛が任務の拙者に、寒いだろうからと、毛布を差し入れてくださったり、暖かい飲み物を作ってくださったり、本当に、主様から頂いた「豪快」のように真っ直ぐなすばらしい御仁でござる。末席でかまいませんので、どうかお側に侍るお許しを頂きとうございます」

 アヤメ……


「ワタシも、父が薦めるから、というのが最初のきっかけでしたが、今は、とても、良い縁談だと思います。きっと、貴方と歩む人生は、素敵なものになると、信じられます」

 ブーケさんも……


「今みたいに、悩む時もあるでしょうが、そんな時にあなたに頼られる人に私はなりたいのです。犬耳とおっぱいしか、取り柄の無い私ですけど、いつでも好きに甘えてくださいませ」

 アナスタシアさん、ぐすっ


「私の剣は、最早旦那様に託しました。多くは語りません。ただ、私はすでに旦那様のものです」

 ジュンさん。う、う


「主様の所にいれば、何も怖くないよ。おいしいスイーツも食べ放題だし、こんな、素敵な人だから、みんな一緒に居たいと思うのはとーぜんだよね」

 チヨちゃん。……


「ご覧の通りです。みんな、不可様が大好きで志願した子たちですもの。こうなることが、一番自然で、良い形なのだと思います」

「スーさん。みんな。抱きしめてもよかですか?」

 ぐずりながらも、言う俺。

「「「「「「「もちろんですわ」」」」」」」

「う、うわーん!」

 そうして、俺は生まれて初めて心の底から泣くことができた。





「「「おおおっ」」」

「「「ひゅー、ひゅー」」」

ちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱ





 後から知ったことだが、この場所は街道沿いの休憩所であり、辺鄙な所とはいえアルカンへ向かう人々が少なからず通る交通の要衝である。つまり、この光景を少なからぬ人々に見られていたのだ。

 さらに、この光景は、人々の語り草となり、後に吟遊詩人が歌にして、数多くの人々に愛されたり、戯曲の演目となり、大衆演劇の当たり役となり、と、この世界の芸能に多大の影響を与えることとなる。




 恥ずかちぃーっ!


























 なお、余談ではあるが、ヒロシも年貢の納め時だったそうな。

「……ぷろへっさー。好き♡」

「やれやれ、結局、キミの書いたシナリオ通りになってしまったねぇ。ところでアコ」

「なあに?」

「皆結婚してしまうと、ゴーリガン ガールズではなくて、ゴーリガン マダムズになってしまうんじゃないかねぇ」

「あ!」 




 次回予告


「ブーケですわ」「アナで~す」

「ようやく〝ゴーリガン ガールズ〟としての活動ができますわね」

「最初の三話くらいでやるはずの話がようやく十話目だもんね」

「休憩後最初の話としては、なかなかいい出来だとは思いますわ」

「でも、私達ちゃんと、聖王都にむかってるの?」

「! だ、大丈夫なはずですわ」

「でも、なんか邪魔しにくる人たちがでてくるらしいよ」

「「どうする、どうなる、新婚生活」」


 次回 「三悪襲来(ホントに)

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