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34th 「偉大なる男」

「ワン!」





 ……





「ツー!」




 ……




「スリー!」





 ……、ん、う、うぅ





「フォー!」




 ……、はっ! 




「ファイブ!」




 くっ! こなくそぉぉぉぉっ!





「シックス!」





 おおおおおおっ! どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどとどどどどどどどど!





 立ち上がってファイティングポーズを取る。奴もほぼ同時に起き上がってくると、再度クロスカウンター狙いで打ってきた! ヤバい。一瞬、落ちていた。今度は相撃ちなんて馬鹿はやらんぞ!


 カニばさみで奴の足元を捕えると、間髪入れず自ら解き放ち、背中にエルボードロップを放つ。させじと、奴は、ごろごろ転がりエルボーは床面に放たれる。くっ! 立ち上がりざま、奴が腕を振るって殴りにくる。ハンマー、いや、ラリアットか! その腕を掴むと奴の腕を支点に跳ぶ! 

 足が奴の首を挟むと、回転運動を始め、奴の首と腕を交互に挟み回転の速度を上げていく。人工衛星(サテライト)式ヘッドシザースだ! 十分な遠心力を確保して投げる(ホイップ)! 奴は遠心力に耐えられず簡単に吹っ飛ばされた。その、立ち上がりざま、今度はこっちの番だ!


 シャイニング ウィザード! 膝蹴りが直撃! 俺の膝にも強い衝撃が伝わる。


「ぐぅぉぉぉぉぉっ!」


 それでも、奴は踏ん張るが、もう一撃! シャイニング ウィザード! しかし、奴は読んでいた。

 ならば、スコーピオ ライジング! 俺は膝蹴りを伸ばし、かかと落としに変化させる。

 脳天直撃! 奴は流石にダウンした。


「ワン!」


 カウント1で立ち上がる奴は、ギラギラした目をしながらも、楽しそうに、にやり、と笑った。


白堡流(しらおきりゅう)で来ると思っていたが、プロレスとはな。なかなか引き出しは多そうだ」


「こんなのも、あるぜ!」


 キックの間合いでローキック。ばちーん、ばちーん! と、連続してヒット! ムエタイ流のキックの連続から、たまらず前にでて間合い潰しをしてきた所で、今度は総合系のロシアンフックだ!

 テンプルに、まともに喰らった奴の体が、流石に膝から崩れる。決まったか!?


「ふ、ふふふふふふははははははははははははっ! 楽しい! 楽しいなぁ! 当代 白堡 千糸!」


 笑いながら簡単に立ち上がってきやがった。くっそう!


「俺は、いい加減終わらせたいけどな」


 あの時の〝無言牛〟は、やはりこいつなのか? だが、あの時のヤツはもっと横幅がでかかった。


「じゃあ、こっちも一つ手札を切ろうか」


 そう言って奴は、トン、トンとジャンプしだした。あれは、


「アリ……、ダンス!」


 そう、モハメド アリのダンスに似ているが、あれは、白堡流のフットワークだ。

 ショートスタイルに構え直したゴーディシュは、ボクシングのそれよりも、一歩だけ近づいてジャブを放ってくる。平手で。


「掌打か。やはり白堡流を齧ってやがったな。誰から教わった!?」


 スゥェーバックしながら、奴に問い詰める。


「貴様の先代が、こちらに落ちていたのさ。言ってたぜ。不肖の弟子ってな。成程、さっきの引き出しの数からして、白堡流だけじゃ頭打ちだったんだな。純粋な白堡流の良さが半分もでてない。ま、おかげで目は楽しめてるからな」


 くっそう! 好き勝手言いやがって。

 だが、言い返せない。非は俺にある。奴の言う通り、ある日消えた先代の穴埋めとして、俺が白堡流の総帥、千糸を襲名したのは、10歳の時。以来、古文書を全て読み漁っても、白堡流の極意には辿り着かなかった。そこで、当時、ようやく使い捨てを止め、映像と文書でアーカイブを遺し始めたプロレス、格闘技に目をつけ、足りない所を補ったのが、俺流の白堡流だ。ホントに先代がいたなら、俺を見れば確かにダメダメだと思うだろうな。


「その、先代様は、どこに居る?」


「さあな? 案外元の世界に帰れたのかもな!」


 間合いをとりながら、話を続けるゴーディシュ。


「俺が先代様に師事していたのは、セッヅ猊下に師事していた時期の後、18年位の間だ。つまり、キャリアはほぼ同格と言う訳だ」


「!? 勘定が合わないぞ? 先代が落ちてきたのは9年前じゃないのか?」


「この世界とあっちの世界じゃ時間軸が違うらしいな。現に俺が死んだ時、まだ生きてた筈のセッヅ猊下がこちらに転生したのは、俺より百年以上前なんだからな」


 なんだと! 俺は横にいるセッヅ猊下をチラ見する。つまり、猊下もゴーディシュも転生していたのか。 成程、神様がアコに言ってた話は正しいらしいな。しかし、時間軸がずれているだと?

 またしても、知りたくも無い余計な知識を仕入れてしまったようだ。


「さて、それじゃそろそろ第二ラウンドといこうか。こちらも、切り札を切るので、そちらも、変身したらどうだ?」


 そう言い放つと、奴の風貌が変化し出す。周囲の観客ドン引きである。


「完全に変化するとしゃべるのが億劫になるんでな。今のうちに言っておくよ。俺はライカンスローブだ」


 ライカンスローブ、獣化する病気だな。奴はキャリアだったのか。


「まあ、言ってみれば、ワーエイプって奴だ。ロサでは、プロテクターでごまかしていたからな。気がつかなかっただろう」


「つまりは、大猿か」


 厄介すぎる。人間の武術を使える巨大野生動物かよ。なるほど、無手で充分な訳だぜ。


「じゃあ、こっちも遠慮なくいくぜ! アポート!」


「All X-Y-Z Clear 変身」


 まばゆい光が俺を包み込み、青の雄姿が姿を現す。


「天衣無縫!」ガキーン「攻略不可!」バキューン「自由の守護神 ゴーリガン!」


「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」

「すげー! 初めて見た!」

「かぁこいいなぁー。欲しいなぁ、あのベルト」

「俺も、俺も!」


 外野の声を耳ざとく聞いていたヒロシがいたのだが、それは、別の物語である。

 とりあえず、今の俺は目の前の敵を倒す!


 奴の姿はほぼ大きな猿と化していた。イメージとしては、孫悟空が月を見て変身するアレだ。なるほど、ロサの時の体の幅はこれだったのか。これなら、あの時の突進力の謎も納得だぜ。



「じゃあ、始めようか」

 俺は一言声を掛けてから突進する。奴もこちらへ突進してくる。スタートの時の再現か?と、思いきや、いきなり顔面を掴まれた。アイアンクローだ、とそのまま、ぶん! と持ち上げられた。


 首がもげる! 俺は恐怖に、一瞬かられたが、奴にからだを預け、逆らわずに投げられた。


 どっしーん! ぐぉっ!

 体がくの字に折れ曲がっちまった。それでも、流石ゴーリガンスーツ。最小限のダメージで抑えられたのは僥倖だった。


 どす、どす、どす、どす、どす、どす、どす、どす

 奴め、ドラミングしてやがる。変身すると、体は本能に支配されるのか。ライカンスローブ特有の症状のままだな。その辺が、攻略のカギかな? 


 奴がジャンプして飛んできた! 俺を踏み潰すつもりだ! 

 させるかよ! 下から迎撃の体勢、トラースキックで奴の鼻先につま先を入れてやる。さすがに効いたらしく、鼻を押さえて飛び跳ねてまわっている。チャンス!


 ゴーリガン26の秘密の一つ、コーヒーミルは、使い道が無かったため、改造してペッパーミルに変更した。すなわち、

 ばふっ! 奴の顔面に胡椒をぶっかける! これには堪らず、ブシュン! ブシュン! とくしゃみが止まらなくなる。

 

 脚部から、サスペンションバーが飛び出してくる。これと、背面のラムジェットを利用して、ゴーリガンは高くジャンプすることができる。いくら天井が高いといっても、せいぜい10m程度の高さ。

 天井まで届くと、今度は天井を蹴って加速をつけ、奴に向かって飛ぶ!


「ゴーリガン反転キィィィィィィィィィィィック!」

 どっかーん! と、命中したスーパーキックに、さしもの奴も吹っ飛んだ! 


「ぐぐぅぁぉぉぉっ!」


「よし! 止めだ! アフ! 来い!」

「あいさー」


「ぐぐぉぉぉっ! だが、知って、るぞ! おまえ、たちの、合体、十五秒しか、もたない、そこを乗り切れば、俺の、勝ちだ!」


 苦し気に無理にしゃべるゴーディシュに、絶望的な事実を告げる。


「そいつは、古い情報だ! いくぞ! チャージ アップ!」


 ゴーリガンのライトアップがさらに輝きを増す。

 光に包まれたアフが、ドヤ顔で腕を組みゴーリガンの胸から俺の中に侵入してくる。すると、俺の体内にエネルギーの湧き上がる高揚感が生まれる。


 俺、TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!


 しかし、欠点も確かにある。


 ようするに、何が15秒しかもたないのかというと、エネルギー供給が過剰な為ヒューズが15秒しかもたないのだ。で、改善策であるが、ならエネルギーを無駄に使ってしまえばいい。そこで、合体と同時に余ったエネルギーを〝光と熱〟に変換したわけだ。そこで、こんな新必殺技ができた。


バーニング(強制排熱) フェイズ!」

 ゴーリガンスーツの各部よりカバーが解放され、体内にたまった「熱」が強制的に排出される。

 その温度は約1300度。それを正面方向に一気に放出するのだ。生身の生き物なら、確実にダメージを受ける。実際、ゴーディシュも、体毛が焼け、皮膚がただれてきている。全身火傷の状態だ。


ブリザード(強制冷却) フェイズ!」

 外部放出により熱を持った各部を強制的に冷却するため、液体窒素を放出するのだ。それと同時に液体窒素を敵に吹き付ける。生身なら、ひとたまりもないし、もし金属鎧を身に着けていても、急激な熱膨張と収縮で脆く崩れ去るようになる。そこで、強制冷凍されたゴーディシュに向かって、


「ゴーリガン ファイナルチャージブレイカー!!」

 背面のラムジェットエンジンの解放により、一気の超加速! と、同時に両の拳にナックルガードを装備し、瞬間時速約190キロメートルまで加速! 一気にダブルスレッジハマーでぶん殴る!

「っらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 どぐしゃああああああああああああああああああああああん!!


 さしもの怪物、ワーエイプもひとたまりも無かった。

「ぐふぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」


 力尽きた怪物に、もう闘う意志も、力も無い。崩れ落ちたゴーディシュにはカウントも不要だった。


「完全勝利! 御粗末!」


「22分27秒、勝者 聖ゴーリガン! よって、第二試合の勝者は、フカ=コオリヤク=フッカー!」


 リングアナ氏の宣言により、遂に俺の勝利が確定した。


 とは、言え、俺の方も投げられたダメージや、スーツ内に籠った熱の影響で満身創痍である。

 決して楽な勝利ではなかった。と、いうか、やはりこちらに来てから一番のダメージ


 ふらっ


 崩れ落ちる寸前の俺をセッヅ猊下が支えてくれた。


「見事な勝利だった。誰憚ることの無い、な」


 そう言って俺をアコに託す。アコに支えられようやくリングを降りることが出来た。


 一方、ゴーディシュの方であるが、俺は朦朧とする中、違和感のある光景をリング上に発見した。

 失神から立ち直ったゴーディシュ、奴の体は人のそれに戻っていた。

 しかし、奴の後ろから奇妙な「影」が近づいている。


 その正体は……「光学迷彩」か!? 俺が、その名称を思い出した瞬間。


 ようやく、ゴーディシュが立ち上がった処で「影」は、その正体を現した。


「ゴンザレス!」


 俺はその正体に気が付いた時、既に手遅れで、


 ゴンザレスは、ゴーディシュの腹に鈍色のナイフを突き刺していた。


「ひーっひっひっひ、遂に念願かなったぞ! 獣化から戻った瞬間を今まで待っていたのだぁーっ、はっはー!ようやく、ようやく父の仇を討てたぞ! 俺の人生の勝利だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 そう言いながら恍惚とした表情のゴンザレスは、ゴーディシュに刺したナイフで腹を抉ると、奴の血だまりの中で、


 今度は、自らの首を切り裂いた。


 さすがに慌てたセッヅ猊下がゴンザレスを止めようとしたが、時既に遅し。血しぶきを盛大に上げながら栄華を極めたかのような表情で、ゴンザレスは絶命した。


「アコ、ゴーディシュを助けてくれ!」

 首肯したアコは、リングに上がるとゴーディシュに最大神聖魔法を唱えた。が、


「ダメ! この人、前に一回死んでる!」

 アコの神聖魔法が効かない!?


 いくら神の奇跡でも、人が行使する以上制約がある。一度復活した人は二度生き返ることはできない。

 俺は、這いずりながら再度リングへ上る。


「ゴーディシュ!!」


「ぐ、勝者がそんな顔をするな。俺は、満足して、いる。心残りを託せる友を得られた。最期の最期にだ。だから、何も心配していない。だから、お前も気にすんな。エルノスのこと、たの、ん、だ……」


 そう、言い残しフランケル=ゴーディシュは、天に召された。




 この混乱のさ中、もう一つの事件が起きていた。


「ラトワンヌ=トロイエンヌ! 覚悟ぉぉぉぉっ!」


 リングサイドに陣取っていた彼女に襲い掛かった者がいた。ドメーヌは、居ない!?


 リング上のアコが金網上からスワンダイブで刺客を迎撃、辛うじて救出に成功した。ほっ。

 しかし、悪いことは重なるもので、

「あ、ヤバ、神様ぁ」

 このタイミングで神降臨かよ!


 体勢を立て直した刺客が再度ラトワンヌ様を襲おうとしたが、突如、体がねじれて引き千切られた!


「やれやれ、僕は今、とても忙しい身の上なんだけどなぁ」

 そう、のたまったのは、アコ!? いや、神様か?


 すると、刺客の失敗を見ていた別の男たちが数名、再度ラトワンヌ様を襲おうとした。


「神の御前で不敬というものだよ。人間!」


 そういうと、触れてもいない男たちは、それぞれ同じようにねじ切られて絶命した。


「おい、そこの神の僕!」


 と、まだリング上に居たセッヅ猊下に命令した。


「僕は、もう帰る。神とはいえ、所詮は人の上位互換ってだけ。時間は同じように貴重なんだよ。あんまり下らない遊びの最中に呼び出すな。そんなもの、人間だけで片付けろ! まったく、新番組の準備で忙しい時期に」


 それだけ言うと、神気はあっという間に霧散した。


「あ、あれ? もう終わり?」


 後に残ったのは、ねじ切れた死体と、呆けたアコだけだった。






 そして、その頃、不在のドメーヌは、というと


「シリーニさん。井戸に投げ入れた毒を用意したのは、貴女でしたのね」


 ドメーヌは、子供の頃からの呼び方でシリーニ様に問いかけた。


「ええ、そうよ。ウィリアム帝は、最近、いろいろ壊れてきていたので、12教皇が廃嫡を決定したの。これに関しては、新皇帝も了承しているわ。と、いうより主犯の一人ね」


「そうですか……」


「それで、私たちの悪事を追及する?」


「まさか、それが神のご意志であれば、何も挟む口はありませんわ」


「ドメーヌ、神の意志で決まる政治なんてないわよ」


「承知しています。気にしないでちょうだい。只の皮肉なんだから」



 それだけ確認すると、二人は、通常の二人の関係に戻ったそうである。とは、かなり先になって聞いた話である。この二人も、深い関係性があるのだなぁ。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 こうして、ゴーディシュとの一戦は幕を閉じたが、まだ、何も決着がついていない。

 教皇を決めるためにはもう一戦、ドメーヌとの試合をしなければならないのだ。


 とは、言え、俺の方は満身創痍。ドメーヌは、ほぼ無傷。ついでに言えば、エルノスは教皇になる意志はない。死んだゴーディシュには悪いが、ここで棄権させてもらう。ついでに、ラトワンヌ様には損を被ってもらおう。こっちも無茶振りを色々とこれからされそうだし、先に復讐してやる。うひひ。


 そうして、リング上で相対した俺とドメーヌは、最後の試合をすることとなった。



 一時間の休憩の後、トーナメントは再開された。


「アコ、試合が始まったら、タオルを投入してくれ。但し、闘う者の礼儀として、俺は勝敗が決まるまでは勝つつもりで行く。そのつもりでいてくれよ」


「OK、わかった」


 一言だけ言ってくれた。こういう時、ホント、頼りになるんだよな。アコって。……なんか、ブラックなオーラを感じたけど、流石に気のせいだよね?


「レフェリー、エル(偉大な)=ソント=デル=サント」


 紹介を受けた嵩天王国の聖者様は、俺たちに向かって


「二人とも、先の闘いは見事だった。今回の闘いも、尋常のものであるように。それでは、レディ ゴー!」


 カーン!


 澄んだ音色のゴングが鳴り響くや否や、俺はドメーヌに向かって両足タックルに行った。


 東京ドームでの藤田VSコールマンの試合の再現を考えていた。あの日、前試合のマーク ケアーとの闘いで勝利した藤田は、そのダメージで棄権することが決まっていた。しかし、棄権するまでの僅か2秒の間に、藤田は勝つことを意識したファイトをしていたのだ。俺の好きな試合の一つだ。


 そして、目論見通り、ドメーヌをテイクダウンさせた俺は、アコがタオル投入するまでの間に勝つつもりで挑んだのだ。

 しかし、ここで誤算が生じた。


 何を思ったのか、ドメーヌが、頬を赤らめて、俺の首に手を回し


 うちゅ~~~~う♡


 いきなりキスしてきやがったのだぁぁぁぁぁぁっ!


 場内は怒号と悲鳴とに彩られ、タオル投入によるTKOが認められた後、観衆たちがリングに雪崩こもうとして、警備員たちと各所で衝突! その暴動は、もはや血でも見なければ収まりがつかなかった。


「てめぇー! 何てことしやがる!」「殺せ! 殺せ!!」

「この、チカン!」「奴の血の色は何色だぁぁぁぁっ!」

「強姦魔!」「変質者!」「いやらしい!」「汚らわしい!」

「女の敵!」「男の夢!」「俺にもうちゅ~!」「てめぇも死ね!」

「うらやましぃぃぃぃぃぃっ!」

「ねたましぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「捕まえて神の御許に送ってやれ!」

「それは生ぬるい。送るなら地獄だ!」


『物を投げないでくださーい!』

『場内、大変危険です。物を投げないでくださーい!』

「物を投げないでくださーい!」


「こ、これは予想していなかった。これが、若さか」


 呆然とするサント猊下を後目に、セコンドのアコがドメーヌにサムズアップしてる!? セコンドのシリーニさんも、にこにこしてるし。

 げ! ドメーヌがアコに返礼してるよ。


 あいつら、嵌めやがったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 



 こうして、暴動とともに、俺には、「ドメーヌの純潔を奪った極悪人」という異名がついてしまった。


 そして、この件の結果、それまでの騒乱ぶりからすると奇跡的に少なかった負傷者が、最後の最後にドドーンと増えてしまった。俺のせいじゃないよね?


 ドメーヌは、

「わたくしの初めてを奪ったのですから、責任取ってくださいね♡」

 などと、いけしゃあしゃあと言いやがった。


 何とか、教皇猊下の手助けで、リングから下りた俺を追って観衆が詰め寄ってくる。おーたーすーけー!

 半泣きになった俺は、この理不尽さを儚みあの、「昭和ギャグ」で締めた。




「どうしてこう、なるのっ!」


 ぴょーん、と飛び跳ねた。



 次回予告


 さて、どうしたものか。(逃亡中)

 ようやくいかれた教皇選挙は終わりを告げたのだが、

 懸案が入る時より増えてるよ。嫁候補も。

 そして、俺についてしまった汚名。


「ヒッジョーに、きびしーっ!」

 で、始まったこのいかれたコンクラーベの最後を締めるのも、また、昭和ギャグになるとは。


 それにつけても、スーたちに、どう報告したらよいやら。


 次回 エクストラステージ 「パーティー ナイト」


「あ♡ な♡ た♡」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 ヒッジョーに、きびしーっ!

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