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32th 「決闘」

「はぁ~ん♡ らめぇ~♡ 旦那様♡ もっと優しくぅ~♡」


 手持ち無沙汰である。深夜までの待ち時間は、することが無くなってしまうと、案外困ってしまうものだ。エルノス達とは、合流できないし、アコは、ラトワンヌ様に挨拶にいってるし、アヤメも情報を取りに行って留守である。必然的に居残った俺とアナは仕方なく文字通りに、ちちくりあっているのだ。


「仕方なくって言う割には激しいよぉ~♡」


「じゃあ、止めようか?」


「いやぁ~♡ 止めないでぇ~♡」


 つまんで引っ張ったり、舌の上で転がしたり、結構激しくいじっていても、余裕で悶えているので、こちらとしても安心感があるのだ。こういう所でも獣人の方が頑丈なのだろうか?

 そんな益体も無い事を考えていると、


「主様、只今戻りましたぁ~! って、にゃにをやってるでゴじゃるかぁぁぁぁっ!」


 戻ってきたアヤメに怒られました。


「それで、何か判ったのか?」


「実は、ゴーディシュの余裕の訳が判明したでゴザルよ。あやつ、この会場にいる者限定で軍需物資の取引免状を発行して味方を増やそうとしているのでゴザル」


「軍需物資の取引免状?」


 確かに、そんなものを持っていれば、実際の戦争時にいくらでも金を稼げる。言ってしまえば無限の賄賂だな。


「実際、軍閥の家系の者などほどこの誘いにホイホイ喰いついて行ってしまっているでゴザル。そういう家の者はここ百年程は冷や飯を食っておる口でゴザルからな」


「ル=セッヅ猊下があのゴーディシュを推薦した背景は判ったか?」


「どうやら、同郷のよしみで推薦欄に名前を貸したという以上のことは無いようでゴザルが……」


「何か不審な点でも?」


「そも、セッヅ猊下は竜人であり、いかついとはいえ、普通の人間のゴーディシュと同郷というのが眉唾ものでゴザル。一部の者の間では、前世での因縁では? などと言う者までおる始末で」


 うーん、流石に前世の因縁とまで言われると何が本当か判らなくなってきてしまうな。


「ただ、あの演説には、セッヅ猊下もご立腹らしいのでゴザル。現時点では、拒否権のある教皇様方が奴を推薦する動機が無いのでゴザルが」


「さっきの免状は?」


「彼らの立場なら実際の戦争が起きたらそんな免状無くても勝手に好きなだけ商売出来るでゴザルよ」


「そりゃそうだな」


「あの~、旦那様? 教皇様方は、多分同僚の公爵閣下かラトワンヌ様を押してくるはずですよね。なのに、この局面でわざわざ教皇様方に嫌われる行為をする意味がわかりません。ゴーディシュ氏は本当の所当選する以外に何か別の目的を持っているのではないでしょうか?」


「確かに、その可能性はあるかもな。でも、その目的って、例えば?」


「例えば、ここまでの選挙で一番株を上げたのが誰かを考えると、どうしてもエルくんになってしまうのですよ。それに、この免状の件も、選挙後に不要な人材を洗い出す為と考えれば辻褄が合ってしまうのです。もしかすると、エルくん派の筆頭というのは彼ではないのでしょうか?」


 確かに、その発想は無かったな。

 全く、誰だよ! 巨乳は頭が悪いとか、いい加減な事言う奴は! うちのおっぱいはこんなに賢くてかわいいおっぱいだぞ! メートル超えのバストなのに乳首は小さくて乳輪も控えめないいおっぱいだ!

 何でこんなにおっぱい、おっぱい言ってんだ? 俺?


「も、もしかして、主様にいじられて脳が活性化したのでござろうか?」


「そうだといいな。体系化出来ないかな? 〝ちちくり教育ノススメ〟とか言って」


「ひゃ~ん♡ また触ってますよ~♡ もう堪忍してぇ~♡」


 ちゃんかちゃんかちゃんかちゃんか♪

 うん? アコからだな。ぴっ。


『もしもし、あたし、今からちょっとこっちに来てくんない? 全員で』


「何事だ? こっちって、どっちだよ」


『ラトワンヌ様のところ。色々話したいことがあるんだって。ドメーヌ様やシリーニ様も来てるんだけど』


「それを早く言いたまえ。すぐ行く」


 ぴっ。 


「アコが全員で来てくれとさ。悪いがつきあってくれ」


「「ハーイ」」


 と、言う訳でラトワンヌ様の控室に行くこととなった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ラトワンヌ=A=トロイエンヌ侯爵夫人は、今回の教皇選挙において、例の第三勢力が何らかの形で介入してくることを懸念して、急遽出馬したそうである。従妹同士と聞いていたが、彼女はきれいな金髪をしていて、ブルネットのドメーヌとは血の繋がりを感じさせないがとても美人である。どうやら、彼女の母方の祖母がエルフのF1だったそうで、その血が濃く出ているのだとか。


「その第三勢力の実戦部隊があのフランケル=ゴーディシュかと思っていたのだけど」


「違うのですか?」


「どうも、調べているうちに別の可能性が見えてきたのよ。彼は、一年前ドメーヌと共にロサの冒険者ギルドで指名依頼を受けてウィノクの軍勢と戦っているの。その際、最後にウィノクを討ち果たしたのが彼であるという証言を得ているわ」


「と、いうことは?」


「ええ、エルノスの仇ということね」


「ラトワンヌ様。わたくしは、彼をよく覚えていないのですが? 確かに名簿を見ると彼の名は入っていませんでしたが?」


「当時は、偽名で登録していると思います。この〝薙ぎ払うブラディ〟というのが、彼の異名であったと記憶していますが」


 名簿を見ながらドメーヌに指摘するラトワンヌ様。そう言われて記憶と一致したのか、ハッとした表情のドメーヌは、


「当時はあそこまで浮世離れした雰囲気ではなかったですわね」


「その後、どこかであの事件の顛末を知り、思う所があるのかも知れません。本来、気さくで陽気な男だったのが、この一年で随分印象が変わったと、かつての仲間からの証言も聞いています」


「それって、ゴンザレスとか言う男ですか?」


「いいえ、彼以外の、数名のメンバーから証言を得ています。むしろ、ゴンザレス卿は、こちらから話をしようとしても、捕まるような人物ではありませんわ」


「高レベルの元スカウトで〝薄謝のゴンザレス〟という異名を持つ程の男ですわ。本来お金に対しては清廉な人物ということでしたが、ゴーディシュに対してはそうではないようですわね」


 ドメーヌが補足する。


「彼も、確か投票権を持ち、この会場に居るはずですわ」


「そうなんですか?」


 と、なると、場合によってはゴーディシュも襲われる可能性があるのでは? まあ、普通に考えれば返り討ちに合いそうだけどな。


「そういえば、毒物混入事件の方は進展あったのか?」


「ごめんなさい。未だ実行犯は逮捕できていないの。例の老アシュフォードの部下かと思ったのだけど、どうやら関わりの無い人物に依頼したみたいで。ただ、皇帝陛下の遺体からも例の毒が検出されたの。あそこで暴れ出す直前にあの水を飲んだようね」


「そうか……」


「犯人は皇帝陛下を弑逆した犯人ということになるのだから、国の威信にかけても犯人を捜し出して処断しなければならなくなったわね。また選管の仕事が増えたわ」


 そう愚痴るドメーヌは、流石に疲労の色が濃く、見ていて気の毒なほどだ。俺も余計な仕事をさせているからなぁ。


「そろそろ、二次投票の時間となります。皆様、議場の方へ御足労いただきますようお願いします」


 ようやくそんな時間となったようだ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 議場に集まった者から順番に投票が始まっている。この二次投票からは、記名投票となる。俺とアコは、列の最後尾へと並び、順番待ちをしていると、前に並んでいる男にどうも既視感がある。が、初対面のはずだ。なのに、どこで? と思っていると、


「次の方、どうぞ」


「はいはーい」


 ん? 今、俺のダメ絶対音感が警報を鳴らした。あの声は……


「てめ! あの時の〝軽薄〟! こんな所で何してやがる!」


「やば! 投票はまたあとで!」


 と、言って脱兎の如く逃げ出した。


「あああっ! スリム=ブラウン卿! どこへ行くのですかあぁぁぁぁっ!」


 と、係員が呼ぶのも無視しての逃亡劇である。よし、名前覚えたぞ!

 俺とアコは共同して奴を挟み撃ちにせんと、猛スピードで追いかける。させじと、人の間を潜り抜け逃亡せんとするブラウン。しかし、己にかけられた呪いを甘く見ていたようで。

 ぴょーん、とハードル飛びしようとした椅子の影から人がいきなり立ち上がった結果、

 ちーん

 股間を打ち付け悶絶して転倒した。

「ナイスジジイ!」


「ん? なんじゃ?」

 何かがぶつかったものの特にダメージの無いドーゼンのジジイは、俺と転倒した男を見比べ、? 状態であったが、何かを察してくれたようで、スリムとか言う男を捕縛するのに協力してくれた。


「さて、色々聞かせてもらおうか? ここで何をしている?」


「え、え、えーと、ど、どちらさまで?」


「しらばっくれると、フェイスロックという恐ろしい拷問技をかけるがいいな!?」


「今なら、漏れなく皇帝陛下弑逆の犯人の汚名付きでお得だよー♡」


「ひー! タンマ! まだ何もしてないよー! おーたーすーけー!」


 ぎゃーぎゃーうるせー奴だ。とりあえず、ドメーヌの所にこいつを連れていくか? それとも、ここでドーゼンのジジイに預けるか? 


「わしゃ、まだ把握しとらんのだが、こいつは何をしたんじゃ?」


「ロサでエルノスはこいつの配下に襲われた。俺たちも、こいつと一戦交えている。もしかすると、いろいろここでも暗躍してたんじゃないのか? なぁ、スリム=ブラウン卿」


「ん? スリム=ブラウン卿というのは、90過ぎの老人で今は寝たきりの生活じゃぞ? たしか、家族もおらん筈じゃが」


「ふふん、決まりだな。ちっとばかし痛い目にあってもらうからな」


「協力するなら、あの呪い、解いてあげてもいいよ。司法取引に応じますか? イエスorはい?」


「なんでも聞いてちょーだい♡」


「よし、ドメーヌの所へ連れていくぞ!」


 こうして、ロサの仇を聖王都で討った俺たちは、面倒な奴をドメーヌに預け、再度列に並び直した。

 列はかなり伸びていて、一時間は待ちの状態だろう。この列には従者は近寄れないので、不便はあるがいたしかたない。あの野郎、この恨みも上乗せしてやるからな!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 こうして、投票も終わり、結果発表が出たが、そこで波乱があった。


一位  エルノス=サバランJr

1211票


同   フランケル=ゴーディッシュ 

1211票


三位  アルテウス=マリス=ミェスク 

925票


四位  ラトワンヌ=トロイエンヌ 

442票


 またしても、ゴーディシュと同数。いや、それよりも、一位だと!


「埒が開きませんな。どうでしょうか、ここは、各人代表を出して決闘で決着をつけるというのは」


 またぞろ、ゴーディシュが爆弾を投下してきた!?

 次回予告


 決闘による票の総取り合戦を提案してきたゴーディシュ。

 俺達日本人からすると抵抗のある提案だが、

 過去に何例かある決着方法らしい。

 しかし、奴はエルノスの代理として俺を指名してきた。

 どうする、どうなる、勝てるのか!? 俺!


 次回 「スマック ドッグ」


 どうやら本気をみせねばならん!

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