28th 「Bloody Land」
「た・か・が・準男爵風情がっ!」
まるで、某巨人の○べツネオーナー真っ青な台詞だな。
そう、言い放って俺達の前から去って行った老害は、自分の言動に全く良識の不備を感じていないのだろう。
そして、それこそが、自分の敗因だとも知らずに人生の最期までいってしまうのだろうな。
「バカは死ななきゃ治らない」と、いうのは、この世にそんなに多くは無い真理の一つだろう。
あとは、「可愛いは正義!」とかな。
さて、一次投票の方だが、現在既に投票自体は終了して、結果発表を待つのみとなっている。
そして、当選見込みの無い連中の中には、今の老害のように、他の候補に自分への票の献上と敗北宣言を出すことを強要し、その負けた候補の票を全て自分の物にして逆転の目を得ようとする連中が少なからず存在する。
一応言っておくと、二次投票からは、それも戦術の内だが、一次の時は禁止されている手法である。
有効投票の1%、今回で言えば43票位、自力で取れないような政治力で教皇に俺はなる! とか、どんなワ○ピースでも、1話で打ち切りだろう。
従って、あのじじいは、後で選管にきっちり絞られてもらうことにした。
「これこれしかじかで、こんなじじいがいたよー。みっちり、こってり、おしおきしてねー、トイウワケデ、通報シマスタ」
ぴっ。ピッチの通話終了ボタンを押した。これで、あとはドメーヌが何とかしてくれるだろう。
無責任だ? いやいや、あ~ゆー輩は口で言っても通じないものだ。なにしろ、奴らの耳には自分に都合のいい情報以外は入ってこない仕様になっているのだから。
「ところで、良かったのかなぁ? エルくん、辞退するって意思表示してたのに」
アコが、気に病むのももっともだが、こーゆー場面でさっさとリタイヤした方がエルノスたちは危ないだろう。
むしろ、ある程度の注目が集まった方が、良しにつけ、悪しきにつけ、警戒して手出しがしづらいはずだ。ま、エルノス押しの連中がいい気になるかもだが、そちらの対処法は、別に用意してある。
「とにかく、今は、この伏魔殿でのエルノス達の安全が第一だからな。一次だけでも突破すれば、選管の保護の対象になる。それまでは、俺達が、遠くから警護するしかない」
そう、俺達が一次で投票したのはエルノスである。これでも、エルノスが一次も受からないなら、最初からエルノス押しの連中に目はなかったのだ。
そして、ここで俺としては、エルノス押しの奴らの規模を図ろうと思っているのだ。
大したことない連中なら、ほっとけばいいが、ある程度でかい集団であるなら、闘い方を考えなければならない。
「よお、久しぶりじゃのう。おんしらも選ばれとったか!?」
うわ、そのダミ声は、
「リッキーおじいちゃん♡」
いや、アコが言うほどかわいらしい存在じゃあない。十二教皇の一人、そして、俺とアコの身許引受人で、教皇きっての武闘派のいかついジジイ。
「ご無沙汰しております。リッキー=ドーゼン猊下」
「固いわっっ!」
ばっちーーーーん! と、すっごいチョップを頂いてしまった。いってえんだ。これ。
後ろにいたアヤメとアナが固まってるし。
「まったく、おんしときたら、他人行儀にするのが良い人間関係を築く近道とでも考えとんじゃろが、そげな態度を取ることで傷つく者だっておるんじゃぞ。どうせ、またぞろ面倒事を一ダース程も抱え込んで〝迷惑かけるから〟とか思とんじゃろが」
うっ! 脳筋のくせに、どうしてこんなとこばっか鋭いんだこのジジイ。
「そんで、何を抱えこんじょる?」
「実はね、おじいちゃん。今、出馬してるエルノスくんと一緒に来たんだけど、ちょっと色々あって」
アコめ、余計な事を。
「うん? エルノスというのは、ウィノクの小僧の倅のことか?」
ああ、もう、何で前のめりなんだよ、ジジイ!
「今回の選挙、彼を押す陣営がいて、当人の意思と無関係に出馬させられている。しかも、ここへ来るまでの間に何回も誘拐未遂に逢っているんだ。で、ロサで依頼として彼の護衛を頼まれて」
観念して事情説明する。すると、ジジイは、
「わかった。こちらでも少々調べてみよう。ただ、今回少々面倒な奴が出馬しちょるんで、そっちも警戒しとかんといかんでな。どこまで力になれるか判らんがの」
「誰だ、そいつは」
「フランケル=ゴーディシュ」
「「「「!」」」」
「ときに、後ろの二人は誰じゃ? ずいぶんとめんこいのぉ」
「ああ、あのね、あのね、二人とも不可の、ごにょごにょ」
「なんじゃとぉ! この朴念仁が? じゃあ、儂とこのアキナもいい加減貰ってくれんかの?」
アキナさんて、あの、御年29歳の、行かず後家? ヒー! 勘弁!
「「ヒー! 勘弁!」」
アコとハモってしまった。
「がっはっは、そう毛嫌いすんな。あれで、器量はいいし、料理もできる。少々残念なだけじゃろ?」
そこが、一番問題なんですよ、おじいちゃん。
「それでは、第一回投票の結果を発表いたします。出馬した方は、名前を呼ばれたら壇上へ上がって下さい」
どうやら開票が終わったようだ。
「儂は行かにゃならん。じゃあ、後でな。晩飯は、一緒に食おう。後ろの嬢ちゃん達もな!」
そう言ってジジイはやっと離れていった。やれやれ。
「なんというか、すっごい方ですな。ドーゼン猊下」
「ちょっと、怖かったの」
アナはちょい涙目だ。無理もないが。
「それでは、発表します」
壇上の司会が声を張り上げる。ヒロシのマイク持ち込めば良かったかな。一日金貨一枚で貸し出して。
「獲得票数第一位 アルテウス=マリス=ミェスク殿 獲得票数2131票」
ほう、公爵閣下が過半数か。もう、ここで決まりでいいんじゃね?
「続いて、第二位 ラトワンヌ=トロイエンヌ殿 獲得票数894票」
アコたちが押してたな、この人。美人だし、若いな。えーと、21歳か。
「続いて、第三位 フランケル=ゴーディシュ殿 獲得票数256票」
うん? 出てこない? ん、このまま続けて発表か?
「続いて同第三位 エルノス=サバランJr 殿 獲得票数256票」
え? 何だと!
そして、二人揃って舞台に登場する。エルノスと並ぶことで、ゴーディシュという男の異様な風体がより一層際立つ。身長は二メートル近くあるだろう。鍛えられた筋肉の鎧が、神官服の上からでもよくわかる。そして、何よりも異様なのは、我々が「イエス=キリスト」を想像した時に思い描くあの顔、あの髪型なのだ。神に一番近い男が神官服の上から毛皮のファーとブーツを纏っているという俗っぽいアンバランスさ。そして、あの鋭い眼光。あれが、ただの金貸しだと? 信じられるか! 敬虔な神の使徒だと?
どうやって、それを信じろと? あいつは、あいつの顔は、あいつの目は、人の命を何とも思ってない人間の顔だ!
隣のアコの顔も顔面蒼白だ。
「あたし、アレには勝てない!」
アコの自己評価は、かなり正確だと思う。そして、そのアコが、魔人や迷宮のボス以上の評価をしていること、つまり、この世界へ転移後最大の脅威だということだ。
「続いて 第五位 ヴァナ=サンマルチノ 殿 獲得票数62票」
「続いて 第六位 ダニー=フォッグ 殿 獲得票数55票」
警戒はしていたが、予想以上の化け物が出てきたようだ。どうやら、戦術の立て直しが必要なようだな。後ろの二人は、受かったことに驚いてるくらいだから、気にすることもなかろう。実質四人での争いか。まともならだが。
「以上を以って、今回の第一次教皇選挙の結果発表とする。尚、不服申し立ては受け付けていな」
「不服だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ええっ!
「朕は、今生皇帝であるぞ! 何故朕が呼ばれぬのか!? 皇帝が出馬したら、臣下はすべからく皇帝に票を献上するのが臣下の礼というものであろう!! 朕がこの世で一番偉いのじゃぁぁぁぁっ!! 誰も誰も朕に逆らうなぁぁぁっ!! 朕は、朕は、朕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっごぼぼっ!げっげげぇぅおえっぶぅ……ぐふっ」
倒れた皇帝を見て、しーん、と一瞬静まる場内。だが、次の瞬間、驚愕が爆発した。
「げげぇっ!へ、陛下ぁぁぁぁっ!!」
「医者を呼べぇぇぇぇっ!」
「担架だ!」「いや、動かすな!」「衛生兵! 衛生兵!」「ああ、そんな」「陛下、陛下ぁぁぁっ!」
蜂の巣を突いたような大騒ぎになってしまった。
やがて、やってきた医師によって蘇生魔法が繰り返し使われるが、懸命の努力の甲斐なく、
「皇帝陛下は崩御されました」
と、診断された。
「そんな、陛下、父上ぇぇぇっ!」
やがて、亡骸に辿り着いたアルベルト皇太子殿下は、一旦は正体を無くし取り乱した様子であったが、すぐに、気丈にもすっくと立ち上がり、
「たった今、今生皇帝ウィリアム=フィエラ=ミェスク二世は、身罷った。この後は朕が皇帝アルベルトとして、諸卿らに命令する。このまま、教皇選挙を続けて滞りなく新教皇を選出せよ。それが、亡きウィリアム帝のご意思である」
と、宣言した。続けて、皇帝の大葬は、この、教皇選挙が終了するまで保留されることが宣言された。冷凍魔法の使えるものが先帝ウィリアムの亡骸に冷凍魔法をかけ、別室に安置すると、
「本日はこの後所信表明演説の予定であったが、諸卿の動揺も甚だしい為、予定を変更し、明日まで自室にて休息日を宣言する。明日まで諸兄は自室待機をするように。では、解散!」
そう、選管より宣言され、一旦自室に戻る。ドーゼン猊下よりの使者が来て、約束の食事が出来なくなった旨知らせてきたため、
「猊下には、お気遣い無きよう、お勤めを優先されるようにお伝え下さい」
と、伝言お願いした。その後、自室に食事が配られたが、アナが、水差しの水に異物が混入しているのを発見。ドメーヌにPHSで報告すると、同様の苦情が多数あり、大混乱の真っ最中であった。流石に上位の神殿関係者には事前に発見され実害は皆無であったようだが、劇物が混入され、従者一人が亡くなったとか。結局、皇帝崩御とこの劇物混入事件が、このいかれた、教皇選挙のスタートを飾ったのである。
そして翌日、全ての部屋のドアの下より、モーニングメッセージ宜しく一枚のカードが差し込まれていた。そこには、
「Welcome to the Bloody Land」
と、英語で書かれたメッセージが記されていた。
次回予告
大波乱の幕開けとなった教皇選挙。
しかし、その魔の手はエルノスにも及んでいた。
余りに幼い少年の快進撃に、落選者たちの嫉妬が迫る。
どうする、どうなる、少年、少女。
次回 「嫉妬と羨望」
勝利の鍵は、テリー、お前だ!
小説家になろう、勝手にランキング
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現在、97~101位あたりを行ったり来たり。
本家ランキング? ええ、諦めてますとも。
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