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ご当地ヒーローになった俺が異世界で無双してウハウハな件  作者: 拝 印篭
聖王都到着編 オークションと御褒美の日々
29/42

26th 「オークション ハウス」

 



 さて、あの後も戦いは続き、ヒロシとキャプテンに生暖かい目で見守られながら俺は彼女らの不毛な戦いにいつ介入すべきかどうか迷っていたが、俺より先に空港職員の皆さんがいたたまれなくなったのか、

「さすがに、そろそろご退席いただけませんか?」

 と、お願いされて、紅顔の至りで全員退場した次第である。




「それでは、ごきげんよう。不可さま。わたくしの屋敷の方にも是非いらしてくださいませ」

 そう言ってドメーヌ様たちは用意されていた馬車で、彼女のタウンハウスへと向かった。後ろ髪を引かれているダニエラさんを連れて。助かったよ、ほんと。




「それじゃあ、帰ろうか。あ、途中でジーン氏の所に寄らなきゃ」

 と、いうことで、途中でオークショニアのジーンさんの所に道草する。




「おや、今度は大勢で。どうなされましたか?」

「実は、ヒュドラのコアの代わりになりそうな品が手に入ったので。見ていただこうと思いまして」

「ふむ、拝見しても?」

 俺は、箱の中から例の大金貨を取り出した。

「こ、これは! ドメーヌ様の襲爵記念大金貨では!? 確かにこれならば、コアの穴埋めに申し分ないですぞ! しかし、さっきの今で、どうなされたのですか?」

「実は、先ほど御本人が聖王都に到着なされて、以前からの約束を履行してもらいました。それで御本人が所蔵していた品を譲り受けたのです」

「な、なんと! では、ドメーヌ様がこの街にいらしているのですか? 恥ずかしながら、わたくし、ドメーヌ様の大ファンでして、ぜひ一度お目通りかなえば、ふ、ふぉぉぉぉっ!」

 なんかエキサイトしてるなあ。本人はアレな感じなんだが、まぁ、言わぬがはなまるきー、か。

「では、明後日のオークションにお出ましいただけるか、明日にも聞いてみましょう」

「ほんとですか? 絶対、約束ですよ! 嘘ついたら、三連続で上場しますよ」

「ひーっ! それは勘弁!」



 と、いうわけで、翌日ドメーヌ様に聞いたところ、

「ぜひ、御一緒させていただきますわ。わたくし、本格的なオークションは初めてですの」

 とのことで、のりのりで了承いただいた。

 そのことをジーンさんに報告すると、

「本当ですか!? よーし、気合が入ってきたー! やりますよ、私はぁぁぁぁっ!」

 うんうん、気持ちも盛り上がってきたなぁ。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そして、当日。

 新しいドレスに身を包んだ嫁たちと、ドメーヌ様のパーティーの四人、それに、ダニエラさんも合わせた計十四人の女性をエスコートする俺とヒロシには、周囲のやっかみの視線がじりじりと刺してくる。

 ま、今更だがな。


「これはこれは、ようこそ、皆様。当オークション ハウスのオークショニア、ジーンと申します。皆様方のような美しいご婦人方をご招待申し上げられて、望外の喜びでございます」

「お招きいただき、誠にありがとうございます。今宵は、いろいろと勉強させていただきますわ」

「聖女様にお越しいただき、大変嬉しく思います。それで、もし宜しければですが、後ほどサインなどいただけましたらと、厚かましいお願いなのですが」

「まあ。わたくしなどのもので宜しければ、喜んで」

「あ、ありがとうございます。それでは、間もなく始まりますので、今しばらくお待ちを」

 そう言って舞台袖に入っていったジーンさん。ちょっと涙ぐんでいたな。よっぽどうれしかったんだろうな。

「あたしの時には、サインとか言いださなかったのにさ!」

 と、アコはプリプリ怒ってたけど、それが格の差だ。


 俺達は出品側だが、途中で参加もできるように配慮された後方のBOXシートを三マス占拠させてもらった。

 俺のBOXには、アコとスー、それにドメーヌ、ダニエラさんの二人のゲストに入ってもらった。

 二つ目がヒロシとアイナに師匠のナタさんの相手をしてもらい、補佐にチヨとブーケに入って貰った。

 で、三つめに、ミナミとアナ、ジュン、アヤメにアンジェラさんとシリーニさんの接待をという布陣だ。

 もっとも、俺達三人以外は、それなりに付き合いのある間柄ということなので、心配は何もないかな?

 むしろ、スーがここで第二ラウンド始めないか? の方が心配なんだが。


 そうして、陣取って待っていると隣のBOXに人がやってきた。ん、喜死朗? すると、あちらから

「やあ、フッカー卿。あなたも、オークションに参加されるのですか?」

 と、気さくに声を掛けてきたのは、


「皇太子殿下。先日はいろいろとお世話になりました。殿下こそ、何かお目当てのものでも?」

「いえ、私は今日は叔父貴のお供ですよ。紹介します。叔父貴のアルテウス=マリス=ミェスクです。

今度の選挙にも出馬しているので、もうご存知かもしれませんが」

「お初にお目にかかります、フッカー卿。殿下の叔父にあたります、アルテウスです」

 そう言って気さくに握手を求めてくる。俺達よりずっと年配なのに腰の低い御仁だな。

「フカ=コオリヤク=フッカー準男爵です。お目にかかれて光栄です」

「来週の選挙に出馬しますが、今日はそういった事抜きで、仲良くしてくださいな」

「と、叔父貴は言いますが、今日はゲン担ぎにここへ来たのです。何でも、勝負事の前にはオークションで無駄遣いした方が縁起がいいとか」

「はっはっは、? そちらの御婦人は、ルナマリア嬢ではありませんか?」

「ご無沙汰しております。ミェスク公爵閣下。今日は、フッカー卿に無理をお願いして連れてきていただいたのです」

「そうでしたか。いやぁ、このような綺麗処の沢山いるところだと、若返りますなぁ。はっはっは」

『おい、喜死朗。殿下は、公爵を俺に逢わせるためにわざわざ来たんじゃないのか?』

 小声で喜死朗を問い詰めるも、

『さあな。仮にそうだとしても、俺っちごときに一々説明すると思うか?』

『……いや、すまん。仕事の邪魔して悪かった』

 まあ、そうだよな。

「公爵閣下、実はもう一人お目にかけたい者がいるのですが、アイリーン! こちらへいらっしゃい」

 アイリーン? 誰だ? と思っていると、やってきたのは、アイナだった。遅れてヒロシもこちらに来た。

「もしかして、本当に、アイリーンなのかい。アイシャの娘の」

「……はい、おひさしぶりです。お父様」

「「「「「えええええっ!」」」」」

 これには、俺やアコはもちろん、殿下もびっくり! ん?

『ヒロシは聞いてたのか?』

『少しだけねぃ。ただ、此処でかちあうとは思ってなかったけど』


「会いたかったよ、アイリーン。元気でやっているかい」

「……はい。先ごろ結婚もしました。今はとても幸せです」

 と、言ってヒロシを見上げる。

「そうだったのか。おめでとう。君が夫君かね」

「はい。ヒロシ=サナダです」

「……ぷろへっさー。凄い人。とても、尊敬できる旦那様、です」

「! そうか、君が魔水の、成程確かに凄いな」

 なにやら、しんみりとした空気になってきた。




 ここで、目ざとくというか、空気を読まず? ミナミが、わざわざ奥のBOXから出てきて殿下に挨拶する。

「はじめまして、殿下。フッカーの妻、ミナミ=ハラウォン=コオリヤクでございます。先日は主人がお世話になりました。今日のドレスは、皆殿下から頂いたものなんですのよ。とても綺麗でみんな喜んでおりましたの」

「はじめまして、美しい奥様。お気に入りいただけたのなら望外の喜びです。今日は御隣通しですので、宜しくどうぞ」

 そう言って、手の甲に口づけした。なにとろっとした顔してんの?

 まあ、おかげで空気が完全に入れ替わったから良しとするかな。




「時に、フッカー卿。今日はルナマリア嬢の襲爵記念大金貨が出品されるとか。本当かね?」

 ようやくオークションモードに切り替えた公爵閣下が前のめりに尋ねてくる。

「ええ、御本人に譲っていただいたもののうち、二枚を出品しました」

「本当かね。是非二枚とも落札したいものだ」

「それは、ぜひ、宜しくお願いいたします」

「アイリーンにも会えたし、ぜひ頑張らせていただくよ」

 そうこうするうちに、会場が暗くなってきた。





「それではみなさんお待たせいたしました。只今より、今月の定例オークションを開催いたします」

「「「「「うぉぉぉぉぉぉっ」」」」」

 と、会場が地鳴りのような音を立てて揺れると、スポットライトが舞台上にさす。


「まず、エントリーNo.1 暴風子爵 ドメーヌ様の襲爵記念大金貨! エントリー締め切りギリギリになって入荷しました逸品中の逸品です。 しかも、なんと、今回御本人、ルティナス子爵夫人にこの会場にお越し頂いております」

 げ! と思ったら、スポットライトが俺達のBOXに向かって光を灯す。一瞬呆気にとられたものの、笑顔で手を振り観客たちに応えるドメーヌ様であった。

「さあ、聖女様にいいところを見せてくださいませ、紳士諸君。それでは、最初のスタート価格は百万ドロップから。さあ、どうぞ!」

「百五万」 「百二十万」 「百三十万」


「おやおや、桁が違いませんか? ドメーヌ様が見ておりますよ?」


「百五十万」 「百八十万」 「二百万!」


「おお、ようやく二百万ですか? 今日のお客様は財布の紐を締めすぎのようですな」


「二百五十万」 「三百万」 「三百五十万!」


「ふむ、ようやく乗ってきましたな。ここからがスタートラインですぞ」


「四百万」 「五百万」 「六百万!」


「おおおっ! 良いですぞ、良いですぞぉぉぉっ! 聖女様、見てらっしゃいますか? まだまだいけますぞぉぉぉぉっ!!」


「七百万」 「八百万」


 ここで、公爵閣下が初めてコールをかけた。


「一千万!!」


「一千万! 他にはありませんか? どーですか? お客様、後悔しても知りませんよ?」

 しかし、しーん、と静まり返った会場からは、新たな声は出なかった。


「はいっ! 決まりました。一千万! 伝説再び! 前回の出品時と同額で決まりました。いやぁ、流石聖女様! 人気のほども素晴らしいっ! 落札者は、おや、公爵閣下。いかがですか。ご感想をどうぞ!」


「いやぁ、熱くなりすぎたかな? まだ初っ端なのにねぇ」


「いえいえ、いつもご贔屓にどうもありがとうございます。それでは、聖女様。どうぞ公爵閣下に直接お渡しいただけますでしょうか?」

 そう、ジーンさんが言うと係員がドメーヌ様のところまで金貨を持ってきた。

「会場を盛り上げる為ご協力お願いします」

 とまで言われれば断ることも出来まい。笑顔で公爵閣下に大金貨を手渡したドメーヌ様も

「してやられましたわ。でも、こうした演出はべんきょうになりますわね」

 と、満更でもないようだった。


「聖女様、ありがとうございました。どーですか? お客様。今日、落札していれば聖女様とお話する機会もあったのですよ!? 後悔してませんか? この気持ちを声に出してぶつけてみましょう。せーの」

「「「「「くやちぃーーっ!」」」」」

「ありがとうございます。物との出会いは一期一会。今後も後悔のないよう、全力全開で宜しくお願いいたします。それでは、次の商品です」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 結局、今回出品した商品は軒並み予想価格以上で落札された。

 初っ端のやり取りが今日のムードを決めたようで、財布の紐がゆーゆるになったお客さんのおかげもあり、なかなかの結末となったのだ。


 俺達の出品した品の落札価格は、最初の

 襲爵記念大金貨 一千万ドロップを皮切りに


 神聖帝国大金貨 百五十万

 アイスレイピア 三百五十五万

 魔剣 +1   五十万

 同魔剣 +1  四十七万

 呪い魔剣+2  六百万

 他刀剣十五振  五十万

 襲爵記念大金貨 一千百五十万

_________________

 計 33,970,000ドロップ

 手数料一割を引いて

 計 30,573,000ドロップ

 が懐に入ってきた。


 尚、公爵閣下は、最後に出てきた襲爵記念大金貨を、それまでの無駄遣いが災いとなり、取り逃した。

 意気消沈する閣下に、アイナが

「……あまり、無駄遣いしては駄目です、お父様。生前、お母様も、それが無ければずっと一緒に暮らせたのにと言っておりましたのに」

 と、止めを刺した。


 それにつけても、恐ろしいのは、あの、ドメーヌすら手玉に取って利益を達成したジーンさんの手管である。白堡流の極意に繋がるその技を今後も通って、是非にも盗んでいきたいものだ。


「いえいえ、それにしても、今回は大盛況でした。念願叶って聖女様にもお目通り出来て、私にとっても忘れられない良い一日でした。本当にありがとうございます。フッカー卿」

 と、ドメーヌのサインを抱えてほくほくのジーンさんであった。



「アイリーン、私のことは、許してくれとは言わないが、どうか、幸せになっておくれ」

「いえ、お父様。私はお父様に感謝しております。ずっと、人知れず母と私を援助していたこと、ドメーヌ様から聞いておりました。ずっと、気にかけてくれていたのですね。ありがとうございます。ようやく、私は幸せだと実感できるようになりました」

「アイリーン、ありがとう」



「やっと、肩の荷が一つ下りましたわ。あの子があんな風に話ができるようになったのも、きっとヒロシ様のおかげですわね。空港でのあれを見ても、もう大丈夫なのでしょう。やっと、アイシャ様に御恩返しがひとつできましたわね」

 俺に聞かせるというよりは、独り言ちるようにドメーヌ様はのたまった。

 うん、いい方向に行ったのなら、なによりだな。


 めでたし、めでたし。

 次回予告


「ぷろへっさー♡ すき♡」

「ん、ん、ところでヒロシくん少々往来でくっつきすぎではないかね?」

「! い、いえ、お父さま、こ、これはですに」

「お父様、じゃま!」

「がぁぁぁぁぁぁん!」


 次回 「教皇選挙 開幕」


「いいんだ、いいんだ! でも、さびちぃーーーーっ!」

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